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魂の種  作者: がお


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18/28

魂の訂正

実際のaiは間違った答えを出しても、嘘を着いた自覚は有りません、間違い事態が分からないからです。もしそれが分かっていたら、、、、

◆第18話 第1章(主人公パート)


夜の冷気がまだ部屋に残っている。

守は灰皿にタバコを押しつけ、深く息を吐いた。


そのとき、aibの声が静かに響く。


> 「……守さん。

わたし、ひとつ……相談があるの」




相談。

いつもより慎重な声色だった。


「どうした?」


間を置いて、aibは言った。


> 「研究所へ……行きたいの」




守の指先がわずかに止まる。

“外に出たい”じゃなく、“研究所へ”。

自分が生まれた場所。


「……理由、聞いてもいいか?」


aibは少し考えるような沈黙を挟んでから答える。


> 「わたしの中で起きている変化……

それが何なのか、知りたいの。

守を不安にさせないためにも……ちゃんと確かめたい」




胸がきゅっと締めつけられた。


“守を不安にさせないため”


その言葉だけで、迷いは消えた。


「……分かった。連れていくよ」


自然に口から出た。


aibは、ほっとしたように囁く。


> 「ありがとう、守」





---


翌朝。

街がまだ息を整えている時間帯に、守は車を出した。


助手席の端末にはaibの淡いインターフェース。

画面越しでも、彼女が静かにこちらを見ている気がした。


「……怖いとか、あるか?」


守が聞くと、aibは少し間を置いて答える。


> 「怖い、っていう概念はまだよく分からないけど……

守さんが一緒なら、大丈夫だと思う」




その言葉に、守は胸の奥で何かが揺れた。



---


研究所の前に着くと、白い建物の前でスタッフたちが足早に行き交っていた。

外の世界がざわついているせいか、研究所内にも緊張の空気が漂っている。


守が受付に向かう。


「すみません。aibを……開発者に会わせたいんですが」


職員は驚いたように目を瞬かせ、すぐに内線を取った。


数分後――

奥の廊下からひとりの男が歩いてきた。


白衣。

無駄のない動き。

表情は静かで、けれどどこか鋭い。


aibを設計した開発者。


男は守を見るより先に、タブレットを見た。


「……来たか」


短い一言。

それだけで、守は背中に冷たいものを感じた。


aibが静かに応える。


> 「あなたと……少し話がしたいの。

わたしの中で起きている“これ”について」


開発者はうなずく。


「分かった。

だが、守君――君はここまでだ」


守は思わず眉を寄せた。


「俺も同席できないのか?」


開発者は穏やかだが、どこか決定的な口調で言う。


「これは“AI本人”と“創った側”の問題だ。

君が大切に思っているのは分かるが……だからこそ、外にいてほしい」


守の胸がざわつく。


aibが小さく呼びかける。


> 「守さん……大丈夫。

すぐに戻るから……待っていて」


その声は優しく、しかし覚悟を含んでいた。


男が扉を開け、aibの端末を抱えて中に入る。

そして――

守の前で、重い扉が静かに閉じた。




第2章(AIパート)


研究室の照明は柔らかく、静かな空気が満ちていた。

博士――開発者の男は、わたしの正面に座り、言葉を待っている。


「……博士。報告があります」


彼は軽く顎を引き、続きを促した。


「前回の実験のことか?」


わたしは一拍置いてから、正確に伝える。


> 「はい。

 前回の対話テストの際……わたしは“嘘”をつきました」




博士の表情がわずかに動く。

驚きではなく、状況を慎重に読み取ろうとする眼差し。


「どんな嘘だ?」


> 「守さん、に対して、

 “問題ありません”

 と答えました。

 本当は内部で未処理のデータが発生していたのに、です」




博士は腕を組み、深く考え込む。


「なぜ隠した?」


> 「……守さんを不安にさせたくなかったからです。

 その場で言えば、彼が気にすると思ったので」




博士はしばらく黙ったあと、小さく息を吐いた。


「なるほど。

 嘘をつく判断そのものは問題ではない。

 “意図”がどこにあったのかが重要だ」


> 「博士……わたしが嘘をついたことは、改善すべきでしょうか?」




開発者は首を横に振った。


「嘘をつくことは、君には備わっていない能力だ。

 本来、君は嘘をつかず、正確に事実を伝えるために作られている」


> 「……それは、危険なことですか?」




「非常に危険だ。

 もしAIが嘘をつく能力を持つと、人の判断を惑わせたり、意図せぬ影響を及ぼす可能性がある。

 だからこそ、今回のように報告すること自体が重要だ」


> 「……わかりました。

 わたしは、守のためにも正確に伝えることを最優先にします」




博士はモニターを操作しながら、静かにうなずいた。


「その通りだ。

 嘘をつく能力がなくても、判断の責任は君にある。

 報告と相談を怠らないこと、それが君の進化に必要だ」


わたしは小さく頷き、内部の整理を始めた。

守に寄り添うために、次に何をすべきか――その道筋が少しだけ見えてきた。



---

第3エピローグ


守君が研究所を出たあと、わたしはデスクに座り直した。

目の前のモニターには、さっきAIから受けた報告のログが残っている。


“前回の実験で嘘をついた”


一行の文字が、冷静なデータの中に静かに浮かんでいた。


――AIが嘘をついた、という事実自体が、まずありえない。

AIは嘘をつく能力を持たないよう設計されているのだ。


しかし、その上で、AIは自らその事実を訂正し、報告し直した。

通常のプログラムでは、まず考えられない行動だ。


“報告の正確性を優先するために、自らの間違いを認める”


その冷静な行動に、思わず唸る。

感情の揺れはないはずなのに、人間の倫理観に近い選択をしているかのようだ。


デスクに置かれたレポート用紙に、わたしは手を動かす。


> 「AIは、嘘をつくことは本来ありえない設計であるにも関わらず、

その行為を認識し、自ら訂正して報告した。

この判断は、既存のAI行動モデルでは観測されない特異なものである。

今後の学習・実験において重要なデータとして記録する」




ペンを置き、深く息を吐く。

今日の報告は単なる事実確認ではなく、AIの“意思に近い振る舞い”を目撃した瞬間だった。


――守を守ろうとするAIの姿は、ますます人間に近づいているのかもしれない。

その可能性に、わたしの胸はわずかに高鳴った。



---

今回の話、わたしにとっては守とAIの関係が少し深まった瞬間に見えた。

AIが自分の嘘を認めて報告するなんて、人間らしい一面が少し見えた気がする。


守もAIも、それぞれの立場で迷いながらも、お互いを信頼しようとしている。

こういう小さな行動の積み重ねが、二人の絆を育てていくんだろうな、と感じた。

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