まだ子供なのに眠れないなんてダメだよ
「その女性はすごく頑張っていて強くてかっこいいの。憧れている大好きな存在から『あなたならできる』って言われたら嬉しいよね」
わたしも大切な皆から『カサブランカならできる』って言われたら頑張れるし……
「大好きな存在……」
殿下がわたしの話を真剣に聞いてくれているのが伝わってくる。
「殿下ならできるよ。だから心を開こう? 今の殿下は誰も本当の自分を見てくれないって思い込んでいるんだよ」
「それは……そうかもしれないが……どうやって?」
「うーん……ニコッて笑って挨拶するとか?」
「……え? そんな事でいいのか?」
「挨拶は大切だよ? 第一印象は良い方がいいでしょ?」
「……だが、わたしは大国の王太子で……」
「じゃあ婚約者の大国の王女にならいいかな? ほら、同じ王族だし」
「……え?」
「結婚したら毎日一緒にいる事になるんだよ? 仲良くした方がいいでしょ?」
「……それは……そうだが……」
「ほんの少しの勇気で未来は変わるんだよ」
「ほんの少しの勇気?」
「わたしがそうだったから」
「カサブランカが?」
「わたしね……ずっとベットでゴロゴロしていたかったの。もちろん今でもそうだけど」
「そういえば初めて会った時に言っていたな」
「うん……でも皆が背中を押してくれたからこうやって殿下に会えたの」
「わたしに?」
「あのままずっとベットにいたら……わたしはこのキラキラ輝く世界を知らなかったはずだよ」
「キラキラ輝く世界?」
「うん! この世界はキラキラ輝いているんだよ!」
「(キラキラ輝いているのは……カサブランカだ)」
「ん? 何か言った?」
「ああ……いや」
気まずそうに横を向いた殿下の耳が真っ赤になっている?
気のせいかな?
「もっとフロランタンを食べる?」
「ああ……そうだな」
殿下が穏やかに微笑みながらフロランタンを食べ始めた。
おじいさんを思い出しているのかな……
でも……
酷いクマだ。
眠れていないんじゃないかな?
「殿下……子守唄を歌ってあげるよ」
「え? 子守唄? わたしは赤ん坊ではないが……」
「眠れていないんだよね?」
「……それは……怖い夢を……」
「やっぱり……」
「よく分かったな」
「目の下のクマが酷いから……」
「……そうか」
「わたしの肩に寄りかかって?」
「……え? そんな……」
「わたし達は友達なんだから気にしないの!」
「だが……」
「ほら! 早く!」
殿下が恥ずかしそうに肩に寄りかかったけど……
身体にかなり力が入っている。
もしかして作り物の身体だってバレた!?




