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フロランタンは大切な思い出の味? ~後編~

「……これは!」


 フロランタンを一口食べた殿下の表情が明るくなった。


「殿下……おいしい?」


「ああ! すごい! おじい様のフロランタンだ!」


「ママが心を込めて作ってくれたの。あのね? 変な話かもしれないけど聞いてくれる?」


「……? なんだ?」


「パパはわたしに離乳食を作ってくれる……くれたの」


 普段赤ちゃんだから言い方を間違えちゃった。


「確か父親は子育て担当だったな」 


「うん。その離乳食はね、パパが作らないとパパの味にならないの」


「……え?」


「ママの作るクッキーもね……おばあちゃんが作ると違う味になるの」


「……? そうなのか?」


「もちろんおばあちゃんのクッキーもすごくおいしいんだよ? でも……少し違うの。上手く言えないけど……優しくて温かい味がするの」


「優しくて温かい味?」


「たぶんだけど……わたしの事を大好きっていう気持ちがいっぱい込められているからなんだと思うの」

 

 おじいさんを愛している育ての父が作った愛情たっぷりのお菓子……

 だからおじいさんが殿下にくれたフロランタンは特別な味がしたんだろうね。


「そうなのか?」


「ママが言っていたらしいんだけどね……大好きっていう気持ちが溢れると愛になるんだって」


「……愛?」


「たぶん……殿下のおじいさんがくれたフロランタンを作った人間は、おじいさんの事をすごくすごく大好きだったんだろうね」


「……愛が込められたフロランタンだったから?」


「こんな立派な王国の料理長が作ってくれるお菓子なら絶対おいしいはずだよ? もしおじいさんがくれたフロランタンと味が違うなら込められた心の違いなんじゃないかな?」


「……おじい様はどこからあのフロランタンを」


「きっと……すごくすごくおじいさんを愛している誰かからの贈り物だったんだろうね」


「……わたしにも……そんな誰かがいてくれたら……」


「きっと現れるよ。でも……それには殿下自身が心を開かないと」


「……わたし自身が?」


「殿下は優しくて穏やかだからきっと……絶対素敵な友達ができるよ!」


「……え?」


「ママがいつも言ってくれるの。『カサブランカなら絶対できるよ』って」


「絶対できる?」


「ママが憧れているウェア……えっと……女性がよく言ってくれるんだって。ママが迷っていると『ママならできる』って」


「そうなのか……」


 殿下はずっと真剣にわたしの話を聞いてくれている。

 

 

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