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フロランタンは大切な思い出の味? ~前編~

「……うぅ……う……」


 ガゼボから聞こえてくる殿下の小さな泣き声に胸が痛くなる。


「……殿下」


 わたしの声に気づいた殿下が慌てて涙を拭くと気まずそうにしている。


「……カサブランカ……来たのか……」


「……うん。おじいちゃんと来たの。ママがお菓子を持たせてくれたんだよ。一緒に食べよう?」


「……食欲が……ない……」


「……かなり痩せたね。食べないと倒れちゃうよ……」


「……何も食べたくない」


「……殿下」


「あ……いや……少しなら食べている。ただ……どうしても心が元気になれなくて……」


「おじいさんが……亡くなったから……だよね」


「……王太子になった日から……色々と変わって……」


「何かあったの?」


「王太子妃を……おじい様が決めていたらしくて……」


「え? それって殿下の結婚相手?」


「数回……宴で挨拶した事があるくらいで……」


「……嫌なの?」


「……婚姻は国同士を繋ぐものだ。覚悟はしていた」


「嫌な子なの?」


「……美しい王女だ。アルストロメリア王国の王女で……祖母はリコリス王国から先代のアルストロメリア王に嫁いだらしい」


「……え?」


 それってママの友達のスウィートちゃんの事だよね?

 先代のアルストロメリア王が一目惚れしてスウィートちゃんの家族の反対を乗り越えて結婚したって聞いているけど……


「優しい王女だ。明日、これからの話をする為に我が国を訪ねてくる。だが……」


 殿下が悲しそうにわたしを見つめている?


「殿下?」


「……カサブランカは……あの……」


「……? 殿下?」


 話しにくい事なのかな?


「婚約者は……いるのか?」


「わたし? いないけど……」


「カサブランカは……」


「……殿下?」


 どうしたのかな?


「いや……婚姻は国同士を繋ぐものだ……」


「……? 殿下?」


「忘れてくれ。(鈍感でよかった……)」


「……? 殿下がそれでいいなら……」


 なんだったんだろう?

 小声でよく聞こえなかった。


「……バスケットから甘い香りがするな」 


 フロランタンに気づいたんだね。

 殿下は甘い物は好きかな?


「あの……フロランタンなの」


「フロランタン? ……内緒だと言って時々おじい様から……懐かしいな。……だが料理長でさえあのフロランタンの味は出せなかった」


「へぇ……そうなんだね」


 海賊がこっそり渡していたなんて言えないよね……


「ひとつ……いいか?」


「もちろん! ママのフロランタンは最高なんだよ。大切な人間の父親から作り方を教えてもらったんだって」


 殿下が恋しがっているおじいさんの育ての父から教わったフロランタン……

 おじいさんの大好物だったんだよね。

 あぁ……

 そうか。

 だからママはフロランタンを持たせてくれたんだ。

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