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五十年でママも人間も大きく変わったんだね

「おや? カサブランカ様?」


 ベリス王が話しかけてきた?

 あ……

 ここは、パパと時々来るベリス王のお店の奥の部屋だ。

 ちゃんと人間がいない場所に空間移動できたね。 


「ベリス王……」


 毎日種族王に会いに行って五十歩も歩かないといけなくなった事を話さないと……


「ほぉ……何があったか当ててみましょう」


「え?」


「うーん……そうですねぇ……ぺるみ様に怒られたのでは?」


「ええ!? どうして分かったの!?」


「それから……毎日五十歩も歩く事になった……とか?」


「すごい! 正解だよ!」


「ははは。わたしは商売をしていますからね。これくらいは分かります」


「ベリス王はすごいんだね」


「ははは。今、ぺるみ様も店舗に来ていますよ?」


「え? ママが?」


 じゃあママから聞いて知っていたんだね……


「ヘリオス様が魚族を滅ぼしそうになったお詫びの品を選びに来たのです」


「なるほど……」


 ヘリオスがやらかした時は、いつもベリス王のお店のお菓子を持って謝りに行くんだよね。


「カサブランカ様は魚族に喜ばれる物は何だと思いますか?」


「うーん。魔族は甘いお菓子が好きだから……クッキーだと海水でダメになっちゃうよね? キャンディも溶けちゃいそうだし。あ! チョコかな?」


「ははは。大正解です。さすがカサブランカ様ですね。ちなみに魔族が甘いお菓子を好むようになったきっかけはぺるみ様なのですよ」


「え? そうなの?」


「はい。ぺるみ様が聖女様だった頃……ハデス様はヴォジャノーイ族でした。互いに惹かれ合うお二方のつがいの宴に出されたプリンに魔族は心奪われたのです」


「へぇ……それまでは魔族はお菓子を食べなかったの?」


「はい。ちなみにチョコもぺるみ様の異世界での好物だったと知った魔族達が協力して作るようになったのです」


「そうだったんだね」


「カサブランカ様ももう五十歳ですか……月日が経つのは早いものです。あ……そういえば」


 ベリス王が箱の中から本を出してきた?


「……本? 綺麗な絵だね」


「これはドワーフが作ったのですよ。主役は聖女様です」


「聖女……? ママの事?」


「はい。懐かしいです……ぺるみ様がずっと魔族と暮らしたくて人間の平民に無料で配ったのです」


「人間に無料で?」


「文字のない絵本……まだあの頃の平民は識字率が低くて。絵を見ただけで全てが分かるようにと……今ではほぼ全ての人間が文字を読めるようになりました」


「そうだったんだね」


「あの時の四大国の王で協力して無料で文字の本を配ったのです」


「四大国の王……確か、ママが人間だった時のお兄さんがリコリス王なんだよね?」


「はい。ぺるみ様は、お兄様をそれは大切に想われているのです」


「うん。その話はわたしも聞いているよ。でも、三十年くらい前から会いに行かなくなったって……」


「……はい。ぺるみ様は年をとらず若いままですから……その現実にお兄様もぺるみ様も心を痛められて……話し合い、距離を置く事にしたようです。生きる長さが違うという現実……これは変えられませんから」


「……うん」


「ですが、お兄様の誕生日には神力の花火を打ち上げているのですよ。リコリス王は毎年その花火を見ては涙を流しているそうです」


「……悲しいね。お互い大切に想い合っているのに会うのを我慢しているなんて……」


「その神力の花火の力で世界中にあるベリアルのぬいぐるみが浄化されているのですよ」


「……そうなの?」


「もうすぐ……」


「……? もうすぐ?」


「あぁ……いえ。人間の寿命は短い。ぺるみ様も覚悟はしているようですが……」


「え?」


「人間のおばあ様の時も、おばあさんの時も……先々代のマグノリア王とアルストロメリア公爵の時もかなりお辛かったようです」


「……うん」


「カサブランカ様にこの絵本を贈ります」


「……わたしにくれるの? 買わせるんじゃなくて?」


「ははは。カサブランカ様は、ぺるみ様にそっくりですね」


「そっくり?」


「それから、このナッツのタルトをぺるみ様に渡してください」


「ナッツのタルトをママに? ベリス王からは渡さないの?」


「……なんとなく渡しにくいのですよ。ぺるみ様の悲しむ顔は見たくないのです」


 ベリス王が辛そうな顔をしている?

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