ウェアウルフちゃんとカサブランカとベリアル~後編~
「えへへっ。うわあぁ! ウェアウルフちゃんはフワフワで気持ちいいな。ずっと抱っこして欲しいくらいだ!」
ベリアルが嬉しそうにパンみたいな翼をパタパタさせている。
ツインテールもフリフリ動いているね。
うわ……
広場のキッチンの柱の陰からママがハァハァしながらベリアルを見つめている……
あれが神様の娘で、天族から恐れられる冥界の女王……
ん?
柱の反対側でヘリオスがハァハァしながらベリアルを見つめている……
この二人……
本当にそっくりだね。
これがわたしの母親とお兄ちゃん……
本物の、ど変態だよ。
「ははは! 毎日狼の兄ちゃんがブラッシングしてくれるからな。そういえばベリアルの子供達は? ずいぶん静かだな」
ウェアウルフちゃんがキョロキョロ周りを見ながらベリアルに尋ねている。
「ドワーフの髭を引っ張ったり貝殻で殴ろうとしたからヨシダのじいちゃんが怪我人を出さないように遊んでくれてるんだ。お面を作るとか言ってたぞ? 子供達はじいちゃんに遊んでもらうのが好きなんだ」
「ベリアルの子供達は晴太郎に懐いてるからな」
「元気過ぎて皆に迷惑かけちゃうけど、かわいくて仕方ないんだ」
「迷惑なんかじゃねぇさ。子供は元気なくらいがいいんだ」
「そう言ってもらえると助かるけど……」
「あるべき姿……いるべき場所……か」
「ん? ウェアウルフちゃん?」
「あぁ……いや……皆、それぞれの場所で幸せになったんだな」
「それぞれの場所で? ……確かに……そうだな」
「この五十年……色々あった。皆が傷ついて皆が苦しんだ。でも……」
「うん。その苦しみがあったから今の幸せがあるんだよな」
「ずっとタルタロスにいた奴らも第三地区に遊びに来るようになったし、カサブランカはまた小さくなったけどこれからは成長するらしいからな」
「ぺるみもリコリスの兄ちゃんの死に向き合えてるみたいだし……安心したよ」
「そうだな。ん? カサブランカ? 眠くなったか?」
ウェアウルフちゃんがウトウトするわたしを覗き込んでいる。
「うん……ウェアウルフちゃんのフワフワが気持ちいい……ふわぁぁ……」
「ははは。そうか。じゃあ離乳食ができるまで少し眠れ。ずっと抱っこしてやるからな」
「……うん……おやすみ……」
「おやすみ……カサブランカ。良い夢を見るんだぞ」
ウェアウルフちゃんの優しい声が心地いい……
ママがモフモフ好きな気持ちがよく分かるよ。
でも変態にはなりたくないかな……
「目が覚めたら絵本を読んでやるからな。いい夢を見ろよ」
ベリアルがパンみたいな翼で髪を撫でてくれている。
あぁ……
フワフワで甘い匂い……
目が覚めたらモフモフ好きの変態になっていたりして……




