パパとママの過去……?
「そう。ベリス王女の所に……気をつけて行ってきてね……」
ママが疲れ果てた顔をしている。
毎日冥界で天界からの使者の相手をしながら、わたしとヘリオスの世話をしてケルベロスを吸って……
『人間と魔族の世界』に来たら人間を見守りながらベリアルを吸って……
ん?
ずっと誰かを吸っているような……?
うーん……
ママは毎日働いているけどパパは何をしているのかな?
今まで考えた事がなかったよ。
「ねぇ、ママ?」
「カサブランカ? どうかしたの?」
「パパは毎日何をしているの?」
「……え?」
ママが真顔になった?
「ママ?」
「あ……えっと……ハデスは……冥王……そう! 冥王だよ!」
「……でも、冥界の仕事はママとケルベロスがしているよね?」
「……! あぁ……えっと……そう! タルタロスを! タルタロスを守っているの!」
「……? タルタロスはすごく平和だけど何から守っているの?」
「……!? えっと……何から? 何から……」
ママが黙っちゃったね。
何か話しにくい事があるのかな?
「はぁ……ぺるみ。いつまでも隠し通せると思うなよ?」
ん?
ベリアルが呆れながら話し始めた?
「ベリアルは何か知っているの?」
確か、パパが天界で暮らしていた時の側付きだったんだよね。
「ハデスは一応冥王だけど何もしてないんだ。五十年前にぺるみが冥界を、ハデスがタルタロスを守る事になったんだけど……タルタロスの事はコットス達がしてるだろ? だから何も仕事がないんだ」
「……? じゃあ、パパは何をしているの?」
「ん? うーん。自宅待機の暗殺者……か?」
「もう! 子供達の前で変な事を言わないでよ!」
ママが怒っているけど……
自宅待機の暗殺者って?
「だって事実だろ? ハデスは毎日カサブランカとヘリオスを冥界から水晶で見てるんだ」
「……え? 水晶で?」
「そうだ。カサブランカとヘリオスが小さい頃はぴったりくっついて離れなかったんだ。近づく奴を威嚇して、これじゃあ友達も作れないってぺるみに怒られてからは水晶で見張るようになったんだ」
「それで何かあるたびにすぐに来てくれるんだね。でも、ヘリオスが何かやらかす時はどうして止めないの?」
「ヘリオスがやる事なんてハデスから見たらかわいいもんだからな。身の危険が迫った時には助けてるみたいだぞ? でも、この『人間と魔族の世界』に昔からいる魔族はハデスが『前ヴォジャノーイ王』だって知ってるから誰も悪さはしないけどな」
「そうなの?」
「カサブランカは知らないだろうけど、ハデスは魔族から恐れられてるんだ。魔族だった頃のハデスは怖くて誰も逆らえなかったんだぞ。まぁ、今も怖いけどな」
「そうだったんだね」
「ぺるみはあんなど変態だけど、聖女として魔族から大切に想われてたんだ」
「だから皆わたしとヘリオスを大切にしてくれるんだね」
「ハデスはあんなに怖いけど本当は優しいんだ。遥か昔も困ってる魔族を助けたりしてたし。でも不器用だから勘違いされやすいんだ。いや……怖いのは事実だよな? うーん……?」
「そっか……」
確かにパパは不器用なくらい真っ直ぐだよね。
でもわたしは知っているよ。
パパはすごく優しくて、すごく家族想いだって。
こうして……
ママは遠くの魚族に謝りに、わたしはベリス王女に会う為にベリス王国に行く事になった。