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ヘリオスは真っ直ぐ過ぎるくらい真っ直ぐだよね

「はぁ……とにかく、オレには海の上を走るなんてできないからな」


 ベリアルも大変だね。

 ヘリオスは自分ができる事は皆もできると思っているから。


「じゃあ、一緒に泳ごう!」


 ヘリオスが瞳をキラキラ輝かせながらベリアルを誘っている。

 ベリアルの事が大好きだから一緒に遊びたいんだろうね。


「そういえば五十年前は泳ぐ練習をしてたな。いつの間にかしなくなったけど……」


「じゃあ、早速泳ごう! ちょうど巨大魚が遊びに来ているんだ!」


「……? 巨大魚?」


「ベリアルを一口で飲み込めるくらい大きいんだ! この前、遠く離れた海の魚族に殴り込みをした時に仲良くなったんだ!」


 ベリアルを一口で飲み込めるくらい大きい?

 本当に飲み込んじゃうんじゃない?

 ベリアルも身の危険を感じたんだろうね。

 つぶらな瞳がウルウルし始めたよ。


「は……? 殴り込みをした? ちょっと……どういう事!? スーハースーハー……」


 ……!?

 ママ!?

 いつの間にわたしの背後に立っていたの!?

 全然気配を感じなかったよ。

 さすがママだ。

 しかもベリアルを抱き上げてがっつり吸っている……

 

「ママ! 話していなかったっけ? この前、遠くの海に魚族の揉め事を解決しに行ったんだ」


 ヘリオスが得意気に話しているけど……

 前ヴォジャノーイ王だったパパの真似をしたかったのかな?

 

「ヘリオス……考えたくない……考えたくないけど……ヴォジャノーイ族のおじちゃんが遠くの海の魚族が奇襲を受けたって話していたのは……あの犯人は……ヘリオス!? ……待って? 違う……違うって言ってえぇっ!」


 ママが頭を抱えながら膝から崩れ落ちた。

 この姿……

 何回見たかな?

 五回?

 十回?

 二十回?

 いや、百回?


「うーん? 奇襲じゃないよ! やっつけに行ったんだ!」


 奇襲とやっつけるのは何が違うんだろう?


「やっつけに……行った……?」


 ママの声が震えている。

 怒りっていうよりは奇襲をしたのがヘリオスじゃないって信じたい感じかな?

 

「だって悪い事をしていたからさ。口で言っても分からないから身体で教えてやったんだ!」


「悪い事……? 何をしていたの?」


「隣の海域の魚族に嫌がらせをしていたんだ。ダメだって言ったのにまた悪さをしたから、同じ事をやって辛さを分からせたんだ!」


「……ちょっと待って。同じ事って……何をしたの?」


「ん? まず、トイレは自分の海域じゃなくてそいつらの所でして……あとはおいしそうなお菓子を目の前で見せびらかしながら食べて……」


「……え? それはやっつけたっていう事なの?」


「ん? もう二度としませんって言っていたけど?」


「……? うーん……その時も護衛がいたんだよね? ハデスがヘリオスに一人で行動させるはずがないし……その護衛が魚族に謝らせたとか……?」


「その時の護衛? うーん……確かその時は……誰だったかな? ……あ! そうだ! 遊びに来ていたイナンナが面白そうだからって一緒に行ったんだ!」


「……なるほど。イナンナが魚族に圧をかけたんだね」


 イナンナ?

 天族だけど元ドラゴン王で皆から恐れられているあのイナンナ?

 それは魚族も災難だったね。

 

「ん? 何? イナンナが何をかけたの?」


「はぁ……ヘリオス。困っている誰かを助けるのは素敵な事だよ? でも、危ない事をする時は相談して欲しいの」


「え? 危なくないよ?」


「確かにヘリオスは強いけど、世の中にはずる賢い奴もいるからね」


「……? そうなの?」


「ヘリオスはまだまだ赤ちゃんだね……カサブランカもそう。二人はママとパパの大切な赤ちゃんだよ?」


「ママ……」


 ヘリオスが嬉しそうに笑っている。

 わたしとヘリオスが大切な赤ちゃん……か。

 愛されているのが伝わってきて嬉しいな。


「……で?」


 ……?

 ママが怖い顔になった?


「ん? 『で』って?」


 ヘリオスが首を傾げて尋ねている。


「ヘリオスは魚族にちょっとした嫌がらせをしただけなんでしょう? じゃあ、誰が魚族に奇襲を?」


 ママの言う通りだね。

 誰なんだろう?


「奇襲? うーん? よく分からないや!」


 ヘリオスは関わっていないのかな?


「……そう。その辺りの魚族が全滅しそうなくらいの奇襲だったって聞いたけど」


「うーん? あ、そうだ。イナンナが酒はないのかって言って、近くの沈没船から見つけさせて……なんだっけ? えっとドロドロした恋の話をしろって言っていたよ。それで魚族達が泣いちゃって、かわいそうだからオレの子守唄を聴かせてあげたんだ!」


 ヘリオスの子守唄を!?

 うわ……

 それは災難だったね。

 微妙に音が外れて気持ち悪くなったあげく、意識を失って悪い夢を見るんだよ……

 イナンナが何かしたんじゃなくてヘリオスの子守唄のせいで魚族が全滅しそうになったんだね。


「……!? あ……あはは……そうだったんだね。悪気はなかった……はず……うん。幼子がやった優しさ……うぅ……ママは……ちょっと出かけてくるよ」


 ママも大変だね。

 ヘリオスがやらかすといつも謝りに行っているんだ。


「え? どこに行くの? どこどこ? オレも行くっ!」


「あ……いや……ママ一人で行ってくるよ。手土産は何がいいかな……はぁ……」


「ええ? オレも行きたいのにぃ!」


 ヘリオスは脳みそまで筋肉になっちゃっているみたいなところがあるから付いて行ったらさらに何かやらかすよね。


「ところで……カサブランカ?」


 はっ!

 しまった!

 まだ種族王の所に行っていないのがバレた!


「今からベリス王女の所に行こうとしていたの!」


 怒られる前に出発だよ!

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