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ママとリコリス王のイヤリング

「おじい様と聖女様がお揃いでつけていたイヤリングによく似た物……だな」


 男の子がわたしの左耳を見ながら話しているけど……


「え?」


 よく似た物?


「聖女様が最後に人の前に現れたのは今から五十年前。人は聖女様とおじい様のイヤリングに似た物を真似して身につけるようになった……」


「そうなの?」


 じゃあ大勢の人間が、このイヤリングに似た物を持っているんだね。


「……だが……おじい様のイヤリングが見当たらなくて……」


「見当たらない?」


 それってわたしかヘリオスがつけているイヤリングのどっちかだよね?


「おじい様が、少し一人になりたいと……一時間ほどして部屋に戻ると『キラキラと輝く時を妹が与えてくれた。いつかそんな素敵な友が現れたら後悔しないように大切にするのだぞ』とわたしの頬を撫でながらそれは悲しそうに……だが部屋に誰もいなかったのにイヤリングが消えるなんて……」


「……そうだったんだね」


 そういえばあの時、人払いしてあるって言っていたよね。

 海賊の魔族とお別れする姿を『王』として誰にも見せるわけにはいかなかったのか。 

 国で一番偉くても我慢ばかりしてきたんだろうな……


「まだわたしが幼かった頃……おじい様はわたしを膝に乗せ『この片耳のイヤリングはいつか妹に渡すのだ』と……」


 最期に願いが叶ったんだね……


「聖女様に……イヤリングが届いていれば……よいのだが……」


『イヤリングはママに手渡されたよ』なんて言えないよね……


「そなたはカサブランカ……か」


 どうしてそれを?

 あぁ……

 さっきおじいちゃんがそう呼んだからか。


「……うん。あなたは?」


「わたしは……『殿下』……だ」


「殿下? それって名前なの?」


「……王族は家族以外に名を呼ばれる事がない」


「え? そうなの?」


 魔族みたいだね。

 他種族に名前を呼ばれると従魔になっちゃうんだ。

 人間の王族もそうなのかな?


「……わたしは……父上の唯一の子」


「え? そうなの?」


『唯一の子』って……

 深刻な顔だけど、重い話をされても困るよ。

 なんて言ったらいいか分からないし。


「わたしは王太子になる……それは分かっていた。母上は身体が弱く、子がなかなか授からなかったらしくて……だからわたしが産まれた時は国中が祝ってくれた……大国リコリスをいずれわたしが背負う事になる……その重圧に……耐えられそうにない」


 うぅ……

 返事に困るよ……


「怖い……怖いのだ……わたしはおじい様のように立派な王には……なれそうにない」


 まだ十四歳とか十五歳とかだろうからね。

 生まれたての赤ちゃんみたいな子が『国の未来を背負え』なんて言われても困るよね。


「……すまない。忘れてくれ。もう行かなくては……」


 あ……

 わたしが気まずそうにしている事に気づいたのかな?


「待って!」


 もうこの人間には二度と会う事はないだろうから、少し話しても大丈夫だよね。

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