キラキラ輝く世界……か
パパに翼を隠してもらってベリス王のお店に空間移動する。
今日は、これで三回目だ……
でも、パパとママとヘリオスと来たのは初めてだね。
家族でお出かけなんてなかなかできないから楽しいかも。
それに……
全然疲れない。
身体が成長したからかな?
とりあえずわたしとヘリオスは服と靴を選んで着替えた。
わたし達は人間だと十四、五歳くらいの大きさに成長したらしい。
姿見に映るわたしとヘリオスは更にママにそっくりになった。
でもヘリオスは少しだけ男の子らしい顔になったかな?
「ハデス様! こちらのイヤリングは世界にひとつだけの貴重な……」
ベリス王は張り切っているね。
一番高い物を買わせたいんだろうな……
「そうか。そこにある物を全てもらおう」
「ハデス! ひとつあればいいの! いつも言っているでしょ!?」
「ペルセポネは全ての宝石が似合ってしまうのだ。ひとつだけ選ぶ事は難しいだろう? だがどの宝石よりもペルセポネの方が美しい……」
「もう! そうやっていつもベリス王に騙されて……」
やれやれ。
パパとママのこれが始まると長いんだ。
パパはママの事が好き過ぎていつもこうなっちゃうんだよね。
「(カサブランカ……ヘリオス……)」
ん?
第三地区のおじいちゃん?
いつの間に……
あれ?
珍しいね。
服を着ているよ。
「(暇だろ? 広場に行ってもう一回ぺるぺるとベリアルの像を見てくるか?)」
どうして小声なんだろうね?
「行く行く!」
ヘリオスは全然小声じゃないし。
パパもママもベリス王も完全に気づいているんだから小声の必要なんてないのに。
「(ほれ。カサブランカ、ヘリオス。じいちゃんとお出かけだ!)」
外に出ると……
昼間とは違って薄暗いね。
あと三十分もすれば真っ暗かな?
「おじいちゃん! 見て見て! オレこんなに大きくなったんだよ?」
ヘリオスは嬉しそうだね。
オケアノスとヘリオスの心が混じり合ったはずだけど、今まで通りだ。
「そうか、そうか」
おじいちゃんも嬉しそうにニコニコしている。
それにしても、かなり歩いたけど全然疲れない。
歩くってこんなに楽なんだね。
このまま、すごく遠くまで行けそうだ……
「カサブランカは疲れない?」
ヘリオスは相変わらず優しいね。
「うん。成長してから全然疲れないの」
「よかったね。カサブランカが嬉しいとオレも嬉しいよ。えへへ」
さっきは、わたしに騙されたって怒っていたのに……
もう忘れちゃったみたいに優しくしてくれるんだね。
ヘリオスの優しいところはママにそっくりだ。
「ありがとう。ヘリオスが嬉しいとわたしも嬉しいよ。えへへ」
手を繋いで真ん中を歩くおじいちゃんが、嬉しそうに話を聞いている。
「広場に着いたぞ? 昼間とは違って誰もいねぇなぁ」
おじいちゃんの言う通りだ。
広場にはわたし達三人だけか……
落ち着いてゆっくり像を見られそうだよ。
「うわあぁ! ベリアルはちゃんと寝癖がふたつあるね。ほら、カサブランカも見てよ。超絶かわいいっ! ママの像もすごく綺麗だよ! あ、そうだ。世界中にママとベリアルの像があるんだよね?」
ヘリオスのベリアル愛は相変わらずだね。
「んん? そうだなぁ。ヘンテコなやつもあるし、すごくかわいいのもあるし……そうだ。すぐ近くにヘンテコな像があるぞ? 見に行くか?」
「「うん!」」
わたしとヘリオスの声が重なる。
ヘンテコな像ってどんな像なんだろう?
おじいちゃんとヘリオスとまた歩き始める。
新しい靴……
すごく素敵だ。
かわいいリボンが付いている。
新しいワンピースも水色の布地に真っ白いレースが使ってあって綺麗。
すごい……
世界がキラキラ輝いて見える。
これがワクワクするっていう事なんだね。




