こんなに愛されている事に気づかなかったなんてわたしは大バカだ
「かわいい姪の為だもの。ふふ。他の皆は喜んでもウリエルはガッカリしそうね」
ヘスティアが面白そうに笑っている?
「……ウリエルが幼女好きだから?」
「でもギリギリいけるかしらね……まだあどけなさも残っているし」
「ギリギリいけるって……」
「ふふ。少し待っていてね。ドレスを持って戻ってくるから」
「うん……」
ヘスティアが天界に戻るとケルベロスが話し始める。
「カサブランカ様……」
「我々にとってカサブランカ様は大切な大切な冥界の宝です」
「二度と他の誰かがカサブランカ様になればよかったなんて言わないでくれ」
「……ケルベロス」
わたしはこんなに愛されていたんだね。
「お待たせ」
……!?
早っ!
ヘスティアはもう帰ってきたの?
「早くない? まだ二分くらいしか……」
「ふふ。わたしはせっかちなの。さあ、身体にオイルを塗ったら着替えて……髪もかなり長いわね。とりあえず今は編み込んでアップにして、後で第三地区の床屋のあん姉に切ってもらいましょう」
「編み込んでアップ? ヘスティアはできるの?」
「ふふ。幼い頃はよく妹達の髪を結わえたのよ。時々ハデスやポセイドンの髪も花で飾ったりして……懐かしいわね」
「パパの髪に花を?」
「ふふ。今もかわいいけど、昔はもっともっとかわいかったの。……今よりもずっと臆病で傷つきやすくて……誰かが支えてあげないと消えてしまうんじゃないかと心配になるくらいだったわ」
「パパが……」
「ハデスは闇に近い力を持っていたから……それを良く思わない奴らがいてね」
「そんな……」
「でも、すっかり強くなったわ。この冥界を守る為……タルタロスのお父様を守る為。それから愛するペルセポネを守る為にね」
「誰かを守る為に強くなるの?」
「カサブランカもペルセポネを支えたくて頑張って歩いたんでしょう?」
「……あ……うん……」
「カサブランカはパパにそっくりよ」
「わたしがパパに?」
「容姿はペルセポネによく似ているけど、心はハデスにそっくり。だから愛さずにはいられないの」
「愛さずには……いられない?」
「愛しい弟のハデスによく似ているカサブランカを愛さずにはいられないでしょう?」
「ヘスティア……」
「わたし達は家族よ」
「……! うん!」
優しく微笑むヘスティアに心が穏やかになるのを感じる。
わたし達は家族……
そうだよ。
わたし達は家族なんだ。
早くこの温かい気持ちをヘリオスにも教えてあげないと。
ヘリオスもオケアノスの感情を心の奥深くにしまい込んでいるから成長が止まっていたんだ。




