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うさちゃんとカサブランカ~前編~

 ん……?

 今何時?

 ママ達の気配がしない。

 まだ冥界には帰ってきていないみたいだ。


 ベットちゃんを創造して第三地区に行かないと……

 悲しんでいるママを支えないと……


 ……あれ?

 ダメだ。

 神力が上手く使えない。

 身体が疲れているからかな?


 空間移動ならできるかな?

 でも失敗したら身体がふたつに裂けちゃうし……

 歩いて門まで行ってケルベロスに第三地区に送ってもらおう。


 ゆっくり部屋から出るとフラフラ歩き始める。

 こんなに歩いたのは初めてだよ。

 でも、門まで行けばケルベロスがいるから頑張らないと。


 はぁ……

 ベットちゃんのありがたみがよく分かるよ。

 疲れた……


 あ……

 門が見えてきた。

 もう少し……

 あそこまで行けばケルベロスが……


 門から顔を出すと……

 あれ?

 ケルベロスがいない。

 いつもは門にいるのに。

 もしかしてわたしの為に薬を作っているのかも……

 

 でも薬草園に行くのは体力的に無理だ。

 とりあえず座って休もう。

 疲れたなぁ……

 今日は歩き過ぎたよ。

 いつもは困っているとパパと天界のおじいちゃんが助けに来てくれるけど……

 ママの所に行っているんだろうな。

 

 ママは大丈夫かな?

 かなり辛そうだったよね。


 少し休んだら体力が回復したかな……

 よし。

 薬草園に行ってケルベロスに……


 あ……

 足がふらついて倒れ……

 うわ!?

 待って!?

 このまま倒れたら『人間と魔族の世界』に繋がる穴に落ちる……

 ダメダメ!

 冥界はかなり高い場所にあるから今の体調のわたしが落ちたら……

 死ぬっ!


「ケルベロス! 助けて!」


 ダメだ……

 ケルベロスは耳がいいから聞こえてはいるだろうけど、薬草園からここまでは時間がかかるはず…… 

 もうダメ……

 落ちる……


 うわあぁ!

 すごい速さで落ちていく!

 怖い!

 わたし死んじゃうの?

 ママをこれ以上悲しませるわけには……

 どうしたら……


『人間と魔族の世界』の海が近づいてきた。

 もうダメだ……

 いくらママとパパの娘でも助からないよ……


 あまりの怖さに目を閉じる。

 ごめんなさい。

 わたし……

 もう……


「カサブランカ!」


 ……!?

 誰かがわたしを抱き寄せた!?

 すごい速さで落ちているのに!?


 目を開けると……

 え……?

 タルタロスのおじいちゃん?

 どうして……


「カサブランカ……おじいちゃんの顔を見たらダメだよ。魅了されるから目を閉じて……」


 おじいちゃんが普通に話している?

 

「おじいちゃん?」


 本当におじいちゃんなの?


「うわ! ダメだよ。顔を見たら! うわあぁ!」


「え!?」 


 バランスを崩して二人で海に落ちた!?

 もう海は目の前だったから全然痛くないけど……

 もしかしておじいちゃんって泳げない!?

 おじいちゃんの翼が海水で重くなっていく!?

 どんどん沈んでいるよ!?

 

 ……?

 あれ?

 この感覚……

 懐かしい。

 ゆっくり海に沈んでいく……

 海水が冷たくなって……

 薄暗くなって……


 ああ……

 そうだ……

 これはわたしがうさちゃんだった時の記憶……

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