ママとリコリス王~後編~
「ずっと会いたかった……でも……叶わなかった……わたし達は……生きる長さが違い過ぎる……から……」
リコリス王が苦しそうにママに話している。
「……うん」
ママが辛そうに返事をしている。
「ずっと……ずっと……見守ってくれて……ありがとう……でも……」
「……お兄様……もう話さないで……」
「いや……ペルセポネ……これだけは……伝えたい……」
「お兄様?」
「これからは……もう……人間を見守らないで……」
「……え?」
「ペルセポネ……これ以上……人に関わって……苦しまないで欲しいんだ……」
「……お兄様」
「ペルセポネは充分過ぎるくらい……人を助けてくれた……もういいんだよ……」
「……わたしは……確かにずっとずっと苦しんできた。大切な人間を何人も何人も見送ってきた。でも……やめないよ。わたしはこれからも人間を見守る……お兄様とココちゃんの子孫達を……レオンハルトとアンジェリカちゃんの子孫達を……スウィートちゃんの子孫達を……この世界の人間達を……愛しているから……」
「ペルセポネ……」
「お兄様……お兄様のリコリスの民が……幸せに暮らす姿をずっとずっと見守るからね……この世界が……身分制度のない平和な世界になるまで……ずっとずっと見守るから……」
「……辛く険しい道だ。耐え難い苦しみを目の当たりにするかもしれない……そんな思いはさせたくない……」
「……大丈夫だよ。お兄様……わたしは傷ついても傷ついても前に進むって決めたから」
「……ペルセポネ。気持ちは……変わらないんだね」
「うん……」
「ペルセポネは言い出したら聞かないから……」
「お兄様……」
「……これを持っていて」
リコリス王がママに何かを手渡した?
「これは……」
「母上がわたしとペルセポネに遺したイヤリング……ペルセポネが持っていて……」
「お兄様……」
「あぁ……そこにいる子供達は……ペルセポネと前王様の……」
「……うん。ヘリオスとカサブランカだよ?」
「……かわいいね。五十年前に……一度だけ会ったけど……赤ん坊だったから……覚えていないか……」
「五十年……あれからいつの間にかそんなに経っていたんだね」
「双子の兄妹……まるでわたしとペルセポネのようだ……」
「……そうだね」
「わたしとペルセポネは……離れ離れに育ち……やっと出逢えたのに……またすぐに離れ離れになった……この子達は……ずっとずっと……一緒にいられるんだね……」
「……うん」
「よかった……よかった……わたし達も……こんな風に……あの時……母上が連れ去られなければ……ずっと一緒に育って……でも……」
「……でも?」
「これでよかったんだ……ペルセポネが……ルゥが人の中で過ごしていたら……きっと悪い奴らに利用されていた……はずだから……」
「お兄様……」
「もう……行って……人払いはしたけど……誰かが入ってくるかも……」
「……お兄様」
「愛しているよ。わたしが……いなくなっても……苦しまないで……ずっと笑っていて……かわいい妹……かわいいペルセポネ……」
「……わたしも愛しているよ……お兄様……わたしの世界一素敵な……お兄様……」
ママが涙を流しながらリコリス王を抱きしめた……
見ているだけでわたしまで苦しくなるよ。




