ママとリコリス王~前編~
おじいちゃんとヘリオスと第三地区に帰ってくると……
翼が隠してあるママの背中から、パパが闇に近い力を抜いている。
あれ?
どうしたのかな?
そういえばママが人間だった時のお兄さん……
リコリス王の最期……とか言っていたよね。
「じゃあ……行ってくる……ね」
ママが悲しそうに話している。
「……後悔しないようにするのだぞ」
パパがママを優しく抱きしめた……
今からリコリス王とお別れに行くのかな?
魚族長は第三地区のおばあちゃんと先に行ったみたいだ。
「……カサブランカ、ヘリオス……ママは帰りが遅くなるかもしれないから夕飯を食べたら先に冥界に帰ってね」
「ママ……」
なんて言ったらいいんだろう。
「ママ……オレも行ったらダメ?」
ヘリオス……
今は行かない方が……
「ヘリオスも行きたいの?」
「うん! ママと一緒にいる!」
楽しい所に行くと思っているのかな?
「……そう。……じゃあ……一緒に行こうか」
「うん! ママが悲しくないようにずっと近くにいるからね!」
……ちゃんと分かっているみたいだ。
ママを支えてあげたいんだね。
死……
わたしは誰かが死ぬのを見た事がない。
正直怖い。
死がどんなものか分からないから。
でも……
「わたしも行く……」
ママが悲しいならわたしが近くで支えたい。
「カサブランカ……ありがとう。一緒に来てくれるんだね」
「ママが悲しいなら……わたしは……ママの近くにいないとダメなの」
「カサブランカ?」
「ママ……ずっとずっと一緒だよ?」
「ありがとう……」
ママが優しく抱きしめてくれた。
温かくて……
小さく震えている。
「じゃあ……行こうか」
わたしとヘリオスと手を繋いだママが空間移動する。
「お兄様……」
空間移動の眩しさに目を閉じるとママの呟く声が聞こえてきた。
声が震えている……
さっきより大きく震える手……
こんな弱々しいママを見るのは久しぶりだ。
あれは……
アルス……ト……
なんだっけ?
人間の国の王妃? が亡くなった時だよね。
確かママが人間のアカデミーに通っていた時の友達だっけ?
「あぁ……ぺるみ様……」
魚族長がベットに横たわる人間の手を握りながらママを呼んだ。
隣には水の中に真っ白いイルカみたいな魔族がいる。
おばあちゃんが海水を切り抜いて陸に上がれるようにしたのかな?
確か魚族長のお母さんでリコリス王を育てた海賊の魔族……だっけ?
他にも海賊の魚人族がいる。
「カサブランカとヘリオスも来たんか」
おばあちゃんが悲しそうに話しかけてきた。
「……うん。おばあちゃん……」
わたしがおばあちゃんに抱きつくと、ヘリオスも抱きついた。
「お兄様……わたしだよ? 分かる?」
ママがリコリス王に話しかけた……
「……あぁ……分かるよ……ペルセポネ……わたしの……大切な妹……本当に……天使だったんだね……綺麗だ……」
「お兄様……」
ママがリコリス王の手を握ると……
リコリス王の瞳から涙がこぼれ落ちる。
ママはリコリス王には本当の名前を教えていたんだね。




