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やっぱりうさちゃんだった時の事は思い出せないよ

 おじいちゃんに抱っこされてベリス王のお店に戻ると……

 アマリリスと魚族長がいなくなっている?


「あ、おじい様。魚族長は身体が乾いてしまいそうなので幸せの島に戻りました。先程おばあ様が迎えに」


 ベリス王が小さな箱を四つ持ちながら教えてくれたけど……


「そうか、そうか。魚族長は時々海水に入らねぇと身体がガサガサになっちまうからなぁ。じゃあ、じいちゃん達も帰るか」


「おじい様、イナンナの子とドラゴン王とウェアウルフちゃんの望遠鏡です」


「ん? おお。すまねぇなぁ」


「それから、前に頼まれていたベリアルの子供達の帽子と愛らしい服が出来上がりました」


「お? もうできたんか? ベリス王は仕事が早いなぁ」


「ベリアルの子供達は小さいですからね。すぐに出来上がります」


「あの子達は元気だからなぁ。望遠鏡を贈ったら振り回して危ねぇから、もう少し大きくなったらにするつもりなんだ」


「ははは。確かに。ベリアルの子供達に硬い物を持たせると何でも凶器になってしまいますからね」


「この前も第三地区に遊びに来て波打ち際で貝殻を拾ってなぁ。かわいいおててに握ったまま走り回ったからベリアルがとめたら間違えて貝殻で殴っちまって……」


「それはベリアルも大変でしたね」


「だからしばらくは硬い物を持たせねぇ事にしたんだ」


「ははは。それが良さそうですね」


「まぁ、ベリアルは大好きなリリーにヨシヨシされながら抱っこされてニヤニヤしてたけどなぁ」


「ベリアルは子供達よりも赤ん坊ですからねぇ。ははは」


「その姿を見たぺるぺるとヘリオスがニヤニヤグフグフしてなぁ……その姿を見た天ちゃんがニヤニヤグフグフしてなぁ……」


「……ほぼ皆さんニヤニヤグフグフしていますね」


「……皆変態なんだ」


「……それに関してはわたしの口からは何とも……」


「……さて、じゃあ帰るか」


「あ……おじい様……」


「ん?」


「リコリス王が……」


「……ああ。そうみてぇだなぁ」


「おばあ様が魚族長を迎えに来たのは最期のお別れを……」


「……魚族長も魚族長の母ちゃんも海賊の島の魔族も辛いだろうなぁ」


「魚族長の母親はリコリス王の母親代わりだったからなぁ」


「生きる長さが違うというのは……虚しさしかありません。仲良くなればなるほど別れは辛くなるものです」


「……そうだなぁ。今回は……ぺるぺるも乗り越えられるか……」


「大丈夫ですよ。ぺるみ様は永遠にリコリス王を忘れないでしょう。そして素敵な思い出と共に前に進むはずです。永遠の時を生きる我々は立ち止まる事はできないのですから」


「立ち止まる事はできねぇ……か。そうだなぁ……前に進むしかねぇ……か」


「わたしにも……何よりも大切な存在がいました。ですがわたしにはその大切な存在の辛さを取り除く事ができずに……そんな時ぺるみ様に出会い、前に進む事ができました」


「……そうだったなぁ」


「ぺるみ様とカサブランカ様とヘリオス様には返しきれない程の恩を受けました。わたしは永遠にこの恩を忘れません」


 ……?

 ママだけじゃなくてわたしとヘリオスも?

 うーん?

 何かしたっけ?

 まだわたしがうさちゃんだった時の事かな?

 だったら五十年以上前だよね。

 何も思い出せないよ。

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