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人間とママの絆……か

 「カサブランカ……身体が辛いの? もう幸せの島に帰ろうよ」


 ヘリオスが心配してくれている?

 本当はもっと人間の国を見て回りたいはずなのに。


「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。でも一時間は人間の国を見て回ろう? 魚族長達のデートの邪魔をしたくないから」


「カサブランカ……」


 ヘリオスは優しいね。

 いつも困っている誰かの役に立ちたいって頑張っているんだ。


「ヘリオス、行こう。ほら、あっちの方からいい匂いがしてくるよ」


「いい匂い? あ……確かに! 何の匂いかな?」


「うーん……バターが使ってあるお菓子かな?」


「うわあぁ! おじいちゃん! 行こう! カサブランカはオレが抱っこで連れていくよ!」


 え?

 確かにヘリオスは力持ちだけど、さすがに無理だよ。


「ははは! カサブランカはじいちゃんが抱っこするから、ヘリオスはじいちゃんのふんどしをしっかり握ってるんだぞ?」


「うんっ! 絶対離さないよ!」


 ……ヘリオスが、ふんどしをしっかり握ったけど取れたりしないよね?

 全裸のおじいちゃんに抱っこされるのはさすがに嫌なんだけど……


「うわあぁ! クッキーにパン、スープ屋さんもあるっ!」


 ヘリオスは大興奮だね。


「これはこれは救世主様……」


 人間の男性が話しかけてきた?

 おじいちゃんの知り合いなのかな?


「ははは。ジャック。二週間ぶりか?」


「もうそんなになりますか……おや? そちらは? まさか……」


 わたしとヘリオスの事かな?


「ははは。かわいいだろ?」


「……姉ちゃんにそっくりです。そうですか……姉ちゃんは幸せに暮らしていますか?」


「ああ。毎日幸せに過ごしてる。人間を見守りながらなぁ」


 姉ちゃん?

 もしかしてママの事?

 ママの知り合いなのかな?


「そうですか。安心しました」


「ぺるぺるにクッキーを買って行こうかと思ってなぁ。ヒヨコちゃんのクッキーはまだあるか?」


「はい。大人気なので毎日大量に作りますから」


「そうか、そうか」


 ヒヨコちゃんのクッキー?

 あ!

 おじいちゃんが時々おやつに出してくれるあのクッキーだ!


「うわあぁ! 超絶かわいいっ!」


 ヘリオスが大興奮している。

 本当にベリアルの事が大好きなんだね。


「……! 本当に姉ちゃんにそっくりですね。あぁ……最後に姉ちゃんに会ったのは五十年前……毎日必死で、あっという間でした……」


「そうだなぁ。ぺるぺるは毎日人間達を見守ってるぞ?」


「……辛いでしょうね。生きる長さが違うというのは……大切な存在を何度も見送らなければいけませんから」


「そうだなぁ……ぺるぺるはその辛さに耐えながら皆の幸せを願ってるんだ」


「……その気持ちを思うと辛くて」


「そうか、そうか」


「でも姉ちゃんならこう言うはずです。『皆が笑顔で暮らしている姿を見るのがわたしの幸せだから一緒に笑おう』……と」


「確かに。ぺるぺるならそう言うだろうなぁ」

 

「これからも姉ちゃんが安心して笑顔で暮らせるように市場の相談役として頑張ります」


「そうか、そうか。ジャックならできるぞ」


「……はい!」


 これが人間……

 この人間はママを大切に想っているんだね。

 五十年も会っていないのにお互いをこんなに想い合えるなんて……

 強い絆で結ばれているのが伝わってくる。

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