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遥か昔のタルタロスは今とはかなり違ったんだね

「音が合う?」


 魚族長とアマリリスの音が合う?

 わたしにはよく分からないよ。


「うーん……不思議なんだけど……わたしとお父様お母様、魚族長には音が聞こえるの」


 アマリリスが教えてくれたけど……


「音が聞こえる……?」


「うーん……上手く言えないんだけど……」


「そうなの? わたしには聞こえない音なのかな?」


「カサブランカには話した事がなかったわね。わたしのお父様とお母様はタルタロスで酷い事をされていたの」


「タルタロスで?」


「タルタロスは今でこそ平和らしいけど……遥か昔は酷かったの。わたしはお母様のお腹の中でそれをずっと聞いていたの。ガイア様が、お父様とお母様をこの世界に逃がしてくれてからも卵の中から周りの音を聞いていたわ」


 タルタロスが酷い場所だったなんて……

 今はすごく穏やかなのに……


「……わたし……何も知らなかった……」


「お父様とお母様は、天族に見つかるかもと思ってガイア様が用意してくれた洞窟にずっと隠れていたの。わたしも外の世界が恐ろしくて卵から数千年も孵れなかった。そんな時……ガイア様が幸せの島に連れ出してくれたの」


「第三地区のおばあちゃんが?」


「まだ外の世界が怖かったお父様とお母様に一番に話しかけてくれたのがペルセポネ様だったのよ」


「ママが?」


「まだ卵の中にいたわたしにもその声は聞こえていたわ。その日からよ。お父様とお母様が声を出して笑うようになったのは……」


「……え?」


「それまでは、天族に捕まりたくないと怯えて暮らしていたのに……ペルセポネ様なら何があろうと守ってくれる……そう思えて安心できたの。どこまでも真っ直ぐで絶対に裏切らない……上手く言えないけど……そう。大きな愛で包み込んでくれる母親……みたいな?」


「ママが……母親?」


「わたしにはお母様がいるのに変よね。でも、いつかタルタロスに連れ戻されるかもと怯えていたお父様とお母様がね……ペルセポネ様に出会ってから日に日に前向きになっていったの」


「……そうだったんだね」


 何も知らなかった……


「第三地区で卵の中にいた時にね……ある音が聞こえていたの。コツコツ……みたいな、コンコンみたいな? 上手く言えないけど……耳からではなく心に聞こえる優しい音……そんな感じかしら」


「それが、魚族長の音?」


「ふふ。おかしいでしょう? その音だけで姿を見た事がない魚族長を好きになったの」


「音だけで?」


「ペルセポネ様が言う『運命の赤い糸』? ふふ。わたしは魚族長に会いたくて、あれほど恐れていた外の世界に出る為に卵から孵ったの。孵ったその場でプロポーズしたのよ」


「ええ!? アマリリスってば積極的だね!」


「今でもあの頃の気持ちは変わらないわ。誰にも取られたくないの……わたしだけの魚族長でいて欲しいの」


「恋の力はすごいんだね」


「ふふ。カサブランカは好きな相手とかはいないの?」


「あはは! わたしはベットちゃんでゴロゴロしている時が一番幸せだから、恋とかよく分からないよ」


「いつか現れるわよ……どんなに遠く離れていても引き寄せられるように……ね」


「引き寄せられるように?」


「出会うはずがないわたしと魚族長もこうして引き寄せられたんだから……でも、カサブランカが恋をしたら……ふふ。ハデス様が大変な事になりそうね」


 確かに……

 パパなら暴れるかもしれないよ。

 いや、絶対に暴れるね。

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