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ずっと同じ環境にいると外の世界に出るのが怖くなるよね

 幸せの島の波打ち際___


 ベットちゃんから降りて貝殻を拾いながら、ずっと考えている。


 一分一秒を真剣に生きる……か。

 永遠に生きるから、今まではそんな風に考えた事がなかった。

 わたしはベットちゃんでゴロゴロするのが好きだから、このままずっとそうやって生きていくのが当たり前だと思っていたけど……

 皆、いつかはわたしがベットちゃんから出て違う事に興味を持つようになるって言うよね? 

 本当にそうなるのかな?

 

「カ……ブラ……カ? カサブランカ!」


 ん?

 誰かがわたしを呼んでいる?


「カサブランカ……? 大丈夫?」


 ……あ。

 アマリリスか。

 近くの島に住んでいる天族の女の子なんだけど……

 今日も大好きな魚族長を覗き見しに来たのかな?

 幸せの島からだと魚族長が魚族達と話している姿がよく見えるんだよね。


「うん。大丈夫……ねぇ……アマリリス? アマリリスは……やりたい事とかってある?」


「やりたい事? ふふ。もちろん魚族長のつがいになる事よ」


「魚族長のつがい……か。そうだよね。アマリリスは五十年間ずっと魚族長にプロポーズしているんだよね」


「わたしが大きくなっても魚族長の事を好きでいたらパートナーになってくれる約束だから。でも、いつかはパートナーを経てつがいになりたいの」


「そっか……アマリリスも天族だから永遠の時を生きるでしょう? あのね……わたし……ずっとこのままでいいのかなって思って……」


「考えた事もなかったわ……わたしはずっと魚族長だけを想い続けているから……この気持ちが変わるとも思えないし」


「そうだよね……わたしも同じだよ。このままずっとベットちゃんで過ごすだろうって……他の事に興味を持つなんて考えられないし」


「何かやりたい事が見つかりそうなの?」


「……ううん。でも……さっきベリス王のお店で望遠鏡を覗いたの」


「望遠鏡? 遠くを見るあの望遠鏡? 実際見た事はないけど……」


「うん……わたしも初めて見たの。そしたらね、遠くの物がすごく近くに見えて……驚いたんだ」


「……まだまだわたし達は知らない事ばかりなのね」


「……うん。そうみたい」


「外の世界……か。わたしは怖いわ。ずっとこの辺りから出た事がないから」


「……わたしもだよ。今日ベリス王に言われたの。人間の国を見て回ったらどうかって」


「人間の国を? ……わたしは怖いわ」


「……うん。わたしも怖いよ。でも、ママが話してくれる人間の話はいつも楽しいの」


「カサブランカは人間の国を見に行くの?」


「……たぶん……行かないと思う。やっぱり……怖いから。わたしはママみたいな勇気がないの。知らない場所とか、知らない誰かに会いに行くのが怖いの……」


「……わたしもよ。新しい環境とか……怖いわ」


「……わたし達は似ているね」


「うん。お父様とお母様に守られて暮らしているところもそっくりね」


 確かにそうだね。

 わたしもパパとママに守られている。

 危なくないように……

 心も身体も傷つけられないように先回りして守られているんだ。


「……あ、そうだ。望遠鏡を覗いてみない? すごく遠くまで見えるの」


「望遠鏡……さっき話していた? これが望遠鏡? 素敵ね。綺麗な刺繍……」


「ベリス王女がくれたの。……王女はすごいよ。わたし達と年が変わらないのに人間相手に商売をしているんだもん」


「そうね……第三地区で時々会うけどすごく素敵よね」


「覗いてみて? あ、もしかしたら冥界が見えるかな?」


「え? 冥界が? カサブランカの家が見えるかしら」


「あはは! 見えたりして!」


「ふふ。見えたら素敵ね。どれどれ? うわあぁ! すごい! 魔王の島がこんなに近くに見えるわ! あ、ベリス族が見える!」


「え? どれどれ? うわあぁ! すごい! あ! あっちも見て?」


「あっち? うわあぁ! 魚族長が見えるわ!」


「うんっ! 今日も筋肉ムキムキだね!」


「ふふ。素敵……」


 アマリリスが望遠鏡を覗きながら真っ赤になっている。

 五十年気持ちが変わらないなんてすごいなぁ……


「アマリリスは心から魚族長の事が大好きなんだね」


「……ええ。一目惚れ……っていうか……音が合うっていうか……」


 音が合う?

 ……?

 音?

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