ずっと変わらないものはない……か
「ママとベリアルの像? それは見たいかも……でも……」
人間の国に行くのは怖いかも……
「どうかしましたか?」
ベリス王が尋ねてきたけど……
「人間に会った記憶がなくて……」
「不安なのですか?」
「……わたし……知らない事ばかりなの。冥界と第三地区周辺と魔族の国にしか行った事がないから。ベリス王のお店は人間の国にあるけど外に出た事はないし……」
「ぺるみ様がよく言っていました」
「……? ママが?」
「はい。勇気を出して一歩踏み出したら、もっと早くそうしていればよかったと思うものだ……と」
「ママらしい考え方だね」
「カサブランカ様はまだ外の世界の楽しさを知らないだけです。一度知ってしまえばずっと外の世界にいたいと思うようになるかもしれませんよ?」
「……それはないよ。わたしはずっと適温の部屋でゴロゴロしていたいんだから」
「ははは。まぁ、幸せはそれぞれ違いますからね。おや? ベリアルと聖獣王は満腹になったようです」
「……え?」
うわ……
お菓子の空箱が更に山積みになっているよ。
「では……カサブランカ様。ハデス様にこちらの請求書を渡してください」
「請求書?」
もう金額が書き込んである……
ゼロがいっぱいだ。
いち……に……さん……
うーん。
ゼロが多いと金貨もいっぱい必要になるんだよね?
うわ……
数えたくないくらいゼロがあるよ……
「あれ? カサブランカ?」
ママがベリス王女と部屋に入って来た。
ちゃんとベリス王に会いに来たからもう怒られないよね。
「ママ。えへへ。ちゃんと約束を守ったよ?」
「カサブランカ……偉いね。お昼寝する島じゃなくても楽しいでしょう?」
「……え?」
「ふふ。カサブランカにはたくさん外の世界を知って欲しいの」
「ママ……?」
「色々な種族に友達ができたら毎日楽しくてベットにいる時間がなくなったりしてね」
「そんな事にはならないよ。わたしはベットでゴロゴロするのが好きなんだもん」
「ふふ。皆変わっていくの。いつまでもずっと同じじゃないんだよ」
「皆……変わる?」
「カサブランカが生まれてからのこの五十年……色々な事が変わったの。それは寂しくもあり嬉しくもあった」
「寂しくもあり嬉しくもあった……?」
「カサブランカも、気づかないだけでゆっくりゆっくり変わっていっているんだよ」
「わたしも……?」
「楽しみだね」
「……? 楽しみ?」
「どんな未来が待っているのか」
「未来……?」
「幸せは掴みとるものだよ!」
「掴みとる?」
「待っているだけじゃ幸せにはなれないの」
「わたしは幸せだよ?」
「ふふ。それとはまた違う幸せ……かな。家族と過ごすのとは違う幸せだよ」
「家族と過ごすのとは違う幸せ?」
「その出会いに心を痛める事もあるかもしれない……でも……」
「でも……?」
「きっとその出会いはカサブランカの心を大きく成長させてくれるはずだよ」
心を成長させる?
「うーん……よく分からないよ」
「ふふ。今はまだ分からなくてもいいの。じゃあ……ママは行くね。魚族に謝りに行ってくるよ。それから、リヴァイアサン王にも謝らないと。まさかヘリオスがリヴァイアサン王の傘下の魚族に子守唄を聴かせていたなんて……」
「あの子守唄は危険だよね……」
「……ん? カサブランカのベットにお菓子の空き箱が……って!? ベリアルと聖獣王!? その箱は新発売のチョコクッキーサンド!? 一箱金貨三枚だったはず……一体何箱食べたの!?」
「あ……それならベリス王から領収書をもらったよ。ほら、これ」
「領収書!? いち……じゅう……ひゃく……はあ!? 金貨百五十枚!? 金貨一枚が十万円だから……千五百万円!?」
「千五百万エン?」
って何?
「一戸建てが買える……このチョコだけで前に住んでいた群馬の集落に庭付き一戸建てが買える……」
ママがフラフラしているけど……
話している意味がよく分からないよ。




