人間と魔族(2)
「大声大会はママのアカデミー時代の人間の友達が始めたの」
ママが懐かしそうに話しているけど……
「へぇ。四百年前からずっと続いているなんてすごいね」
「あの頃は人間と魔族が一緒に暮らすようになるなんて難しいと思ったけど……今はそれぞれ尊重し合って暮らしている。この世界をお兄様にも見せてあげたかった……」
「殿下のおじいさんに?」
「お兄様は海賊として暮らしていた頃魔族の家族がいたの。でも魔族は当時人間を食べていたから『魔族に育てられた』なんて口には出せなかったんだよ。ママが魔族に育てられた事を人間達は知っていたけど、それはママが人間達に知らせたの」
「そうなの?」
「うん……聖女のママに後ろ楯がなければ人間にいいように使われるのは目に見えていたからね。魔族と暮らしているってわざと人間に知らせたの」
「……今は人間も魔族も種族関係なく暮らしているから不思議に感じちゃうよ」
「魔王のおかげだよ……」
「今の魔王?」
「うん。ママと一緒に人間のアカデミーに通っていたベリス王子が……ふふ。まさか魔王になるなんてね」
「魔王は二代続けてベリス族だよね。これからもずっとそうなるのかな?」
「どうかな……その時、魔王になるべき魔族がなるんじゃないかな? 前魔王の代で魔族の暮らしを豊かにして、今の魔王が人間との壁をなくしてくれたの。これはすごく難しい事だったはずだよ」
「ベリス王女がベリス王になった時には驚いたよ。前みたいに遊べなくなってつまらないな……でも種族王になったベリス王女はすごくかっこいいの!」
「ふふ。そうだね」
「今日の大声大会はドラゴン王がずっと背中に乗せてくれる約束だから柔らかいクッションを持っていかないと。えへへ。お気に入りのクッションのどれを持っていこうかな」
「カサブランカは楽しそうだね。歩かなくていいからかな?」
「うん! ドラゴン王の背中は硬いけどひんやりして気持ちいいの」
「あはは! あ、そうだ。いつもの事だけど……」
「大丈夫。人間と魔族の男の子には気をつけるんだよね?」
「絶対に忘れないでね。この前みたいな事になったら大変だから」
「うん……人間の男の子がわたしに話しかけてきたからパパが人間の男を全滅させるって大騒ぎしたんだよね」
ママが止めなかったら本当に大変な事になっていたはずだよ……




