人間と魔族(1)
「もう! またそれ?」
一日五十歩しか歩けないって言ったからママに呆れられちゃった……
でも絶対に一日百歩なんて歩きたくないの!
「えへへ。ママより大きくなるまではずっとずっと赤ちゃんなの!」
「カサブランカはそんなに歩きたくないの?」
「だって創造の力で創ったベットちゃんが過去最高のできなんだもん! フカフカで、でも腰の辺りは適度に硬くてずっとゴロゴロしていたいの」
「まぁ、約束通り毎日種族王に会いに行っているし一日五十歩頑張って歩いているからそれ以外の時間は何をしてもいいけど……毎日楽しいの?」
「ん? 楽しいよ。あ、そうだ。今日はドラゴン王と遊びに行く約束をしているんだった」
「ドラゴン王と?」
「うん! ドラゴン王が背中に乗せて飛んでくれるんだって」
「ふふ。ドラゴン王はカサブランカとヘリオスをかわいがっているよね」
「ドラゴン王が母親のお腹にいる時にパパが闇に近い力を注いであげていたから、わたしとヘリオスを妹と弟みたいにかわいがってくれるみたいだよ?」
「そんな事もあったね。懐かしいなぁ。イナンナがドラゴン王を辞めた時に、まだ孵りたての赤ちゃんだった今のドラゴン王が強制的に王にされたんだよ」
「強制的に?」
「他のドラゴンは面倒だからってやりたがらなくてね。あれはかわいそうだったよ。まだ話せないくらい幼かったのに……でも今は立派……? なドラゴン王になったよね」
「立派? うーん……ドラゴン族はわたしみたいにダラダラするのが好きだから、立派って言われると……どうかな?」
「ふふ。ドラゴン族は自由だからね」
「自由……か。確かに。でも……最後まで人間を食べていたドラゴン族だったけど……今はもう肉食じゃなくなったね」
「そうだね。魔族は百年前から人間を食べなくなったから」
「ドラゴン族には今、辛い物が流行っているらしいよ」
「へぇ。他の魔族は甘い物を好むみたいだけど……お酒が進むのかな?」
「あはは! ドラゴン族は皆お酒が大好きだからね」
「今日はドラゴン王と一緒に人間のお祭りに行くの?」
「うん! ベリアルも行くの。大声大会で優勝して巨大プリンをもらいたいんだって」
「ふふ。大声大会か……まだ続いているなんて……」
「ママ?」
「この世界を見守る者になって嬉しいのは、こういう瞬間だよね」
「……え?」
ママが嬉しそうに笑っている?




