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自分らしい王? (4)

「優しくて……心が温かくなる味……」


 殿下の父親の声が穏やかになった。


「それが『心』だ。誰かを大切に想う気持ちだ」


 第三地区のおじいちゃんの声も嬉しそうだ。


「誰かを大切に想う気持ち……」


「どんな王になるか迷ってるなら、そのフロランタンみてぇな王になってみたらどうだ?」


「……え?」


「民に『王はどんな奴だ』って尋ねたら……『優しくて心が温かい王だ』って言われるような……そんな王を目指したらどうだ?」


「優しくて心が温かい王……?」


「王って立場は大変だ。誰かにとっては良い王でも、誰かにとっては悪い王……全ての奴に好かれるなんて無理だ」


「……はい」


「でも……自分に恥じねぇ王になれば……それでいいんじゃねぇか?」


「自分に恥じない王?」


「温かい王になれ。自分の心を大切にしながら……」


「ヨシダ殿……」


「王には支えてくれる家族がいる……」


「……家族」


「そうです! 父上!」


 殿下が突然大声を出した?

 やっぱり寝た振りをしていたんだね。


「ベリアル……」


 そうだった。

 殿下は『ベリアル』っていう名前だった。

 ヒヨコのベリアルと重なって変な感じがする。


「父上……わたしはずっと父上と共にいます!」


 殿下は父親が大好きなんだね。

 その気持ちが伝わってくる。


「わたくしもです……」


 王妃が優しく微笑みながら王に話しかけている。

 三人が抱きしめ合うと……

 あ……

 三人の周りがキラキラ輝いている?

 そうか……

 水晶で見ているママの気持ちが溢れ出したんだね。

 もしかして世界中がキラキラしているの?

 温かい光……

 心が穏やかになる……


 わたしとおじいちゃんは三人の邪魔をしないようにこっそり第三地区に帰ってきた。

 殿下はもう一人で泣く事はないんだね。

 アルストロメリア王国の王女と結婚して……

 あの父親と母親みたいに素敵な夫婦になるんだ。


 殿下にわたしは必要ない……


 少し寂しい……

 なんて……変かな。


 


 翌日の夜___


 わたしはママからフロランタンのレシピを渡された。

 赤ちゃんから粘土で作られた身体に魂を入れると……

 第三地区のおじいちゃんと一緒にリコリス王国に空間移動する。


 確か今日、アルストロメリア王女が来たんだっけ?

 結婚の宴とか、これから先の話し合いとかをするって言っていたよね……


「王太子はガゼボにいるみてぇだなぁ」


 おじいちゃんの言う通り、ガゼボから殿下の気配がする。

 あれ?

 でも、もう一人誰かいる……

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