7-9. 退職する時におかしなスクリプトを残してはいけません
私達は、諜報機関を退職した。
ヨコハマ湾岸地帯を破壊した罰として、退職金も年金もなし。これまでの報酬もなし。
王宮の自宅も引き払って、村に帰りました。ライブハウスの隣のマイホームに。
皇帝には引き留められたけど、退職するしか無かったのだ。
何故ならば、私達は、能力を封印されてしまったからです。お姉様に。
タオルくんは、クローン技術で作った予備の素体に魂をライブマイグレーションされました。
私とミーナちゃんは、マナカナを魔力に変換する能力を無効化されました。
暁の魔女の異能恐るべし。
ニートンは、もとからマヌケ騎士なので特にありません。
私達、普通の幼女に戻りました。
私達って、働けば働くほど、状況が悪化してませんか?
お金も残ってないし、ヨコハマでの魔女ニャアの悪名は揺るぎないものになったし。借金がないだけマシですかね?
自業自得なのは分かってるんですよ。やはり、マヌケは働くべからずなのでは?魔女教の教義である「無能に仕事させるな」は真理なのでは?
「働くな、ではないでしょ。権力を持たせるな、でしょ」
「そうじゃったっけ?」
「働かなくてもタダメシ食べ放題なんだし、いいんじゃないの?ニートでも」
「今度こそ、ガールズバンドをやろうぜ!」
やろうぜ?ニートンはニンニン忍者も退職したようです。長かったなー、ニートンのござーる期。
「でも、お金が無いと、チョコとか食べられないよ?」
「チョコが無ければ、おまんじゅうを食べればいいじゃない」
「いや、おまんじゅうもダメだって。今後はライブハウスの甘味は有料にするって」
「あら?それは致命的ね?」
「だからー、バンドやろうぜー」
バンドやるのはいいけどね?ドラムが居ないんよね。
ニートンはギター、タオルくんはベースで、ミーナちゃんはボーカルやりたがってるし、私はリズム感無いし。
「ドラムなら、ボーカルが叩けばいいぜ。コンピュータおばあちゃんみたいに」
「出てくる例えがソレ?ククッ、カッコイイ」
「あれも幼女バンドだぜ?後、俺の事はニートンじゃなくモモカンと呼んでくれ」
「お前は、モモカンじゃのうて腐ったミカンじゃ」
「そうね。今日からミカンよ、あんたは」
「別に、それでもいいんだぜ」
「ククッ、ロックじゃ」
ニートン改めミカンは完全にロックンローラーになってるし、ミーナちゃんはそんなミカンをカッコイイという。ふたりでミッションをやって新しい回路が芽生えたらしい。大変結構。
「ちんがちんちんっと叩こうか?」
「へ?皇帝。なしたの?」
「うん。帝国がクーデターで覆ってしもうたので亡命してきた」
ありゃ。そういえば軍にアヤシイ動きがあったね。
「もう帝国は無い。ヨコハマも独立した。ちんはもうただのちんちんじゃ」
「おーべいびー、座布団没収を恐れぬ下ネタ。ニャアに通じずるモノがあるぜ?ロックだぜぇ」
「あんたは、ちんちんないでしょ。なんで、この村に亡命してきたの?」
「うん。この村は独立自治でいけそうじゃろ?食料自給率も高いし、観光地として外貨も稼いでおる」
「あのババアが裏の自治会長じゃけね」
「ババア?確かに暁の魔女はババアじゃが。裏って何?自治会に裏とかあんの?」
皇帝は暁の魔女を知っている?もしかしてコイツも不思議動物?
「うちは、ふつうの幼女やで」
「あ、こいつちんちんやめてインチキ関西弁枠とりやがった」
「もう皇帝ちゃうし。うちはただの村人なんや。ちんちんはあかんやろ」
「ちんちんでもぞうさんでも何でもいいけど」
「うちの大好物はチョコレートや。毎日食べやんと死ぬ」
「妙な設定まで持ちやがって」
「ほいで。こいつの名前はコンピュータおばあちゃん?」
「なんでやねん」
元皇帝はドラムを叩きたいと言うので、ジョンと呼ぶことになった。三代目ジョンだ。
「あのー、ご主人様?ワタクシの名はどうなるので?」
「ほいじゃあ、お前はポチじゃ」
「はっ、ポチ拝命いたしましたわー!おーほっほっほ」
「うるさいメイドやなー。てかコイツどこぞの王女ちゃうん?」
「今のワタクシはポチですわー。あんたの世話はしてやりませんことよ」
「あ、そう。そりゃ困ったな。うち幼女やのに」
「この家に住んでればいいわよ。ここはメイドだらけだから」
「ほじゃーの。ババアも面倒見てくれるしの」
ライブハウス定食屋に行って、ジョンをお姉様に会わせておきましょう。チョコがあるかも確認しておきましょうかね。何よりもお腹空いた。働かずとも腹は減る。
「なあに?またニャアちゃんのハーレム要員が増えたの?」
「かーちゃんはどういう目で私らを見てるの?」
「そいつが末っ子になるわね?たしか、まだ6歳だから」
「え?コイツまじの6歳幼女なの?」
「そうよ。産まれる前から知ってるわよ」
開いているのか閉じてるのか分からん目をした元皇帝のコイツは、見た目6歳幼女で、中身も6歳幼女だった。幼女に国家元首やらしていいの?カワサキ帝国は実力主義だからいいのか。それも過去の事だけど。
コイツの目がカッと開く時、人類が滅びそうな妙な迫力あるから、不思議動物かと思ってたのに。ただの幼女か。
「あんたなんでうちに来たの?元皇帝なら、他にも行くところあるでしょ?もしかして私を頼って来たの?」
村の食料自給率がどうとかさっき言ってたけど。お姉様の言う通り、他にも候補はあったのでは?お姉様を頼るのは分からんでもないよ。幼女に対しては慈悲深いからね。オニババアじゃけどな。
「おまえ如きを頼って来たんちゃうで?ニャアちゃんがおるから来たんや」
「へえ?あんた暁の魔女の伝説は教育されてるんでしょ?よくそんな生意気なこと言えるわね?」
「あ、はい。すみません。皿洗いでもなんでもするんで、見逃してください」
「いらないわよ。あんたも皿割るし。芋畑でバイトでもしたら?」
「デジャブかしら?こいつまるでニャアね?」
そんなバハマ。私達は、そんな事を話しながら今日のランチセットを食べた。
今日くらいは、食後のデザートを食べても良いのではないだろうか?仕事なら明日か明後日からがんばるので。
「チョコある?」
「うちにはないわね。じじいの喫茶店ならあるかも」
「チョコは輸入品じゃったっけ?」
「そうだよ。高くて買えないんじゃないカナ?」
「いや、金ならある。ひゃくまんえん」
「うちがお小遣いであげたやつやな?」
「そう。それが全財産」
「ん?そんな見たことない硬貨は、この村では使えないわよ?」
「なんじゃとー!?」
しまった。現地で使っておくべきじゃったー!
「いや、5万円くらいならあるよ。帰りの交通費を前払いでもらってたでしょ?」
「ソレだ!」
「おやつ代浮かせるために、あんな大惨事を起こしたのカナ?」
幼女のおやつ代のために、何万人が犠牲になったんじゃろ?自らの行為に恐怖するわー。
「かーちゃん、私達の封印解いてよ。ジョンを追って敵が来るかも知れんじゃろ?」
「ジョン?こいつの事?封印なんてしてないわよ?そう信じ込ませただけよ」
「なんじゃとー!?」
「あら、私のライトアームズも動作するわね?」
タオルくんの右腕がガシャコンっとサブマシンガンになってます。そういえば、グフの部屋がどうとかで、クローンの体に移るのは難しいのじゃった。
そうかー、お姉様に飼育された私達は、お姉様の言う事を無条件で信じ込む習性がー!?それとも、ソレが暁の魔女の異能なの?こわー。まさか、このババアに洗脳とかされてないよね?
「なるほど。ニャア姉ちゃんの言うことを信じ込んでただけかー」
ミーナちゃんも、そう言いながら、バチバチーっとエレクレリックサンダー的なものを指から発しています。ミクルちゃんが誤動作したら危険じゃから、ここではやめて?
ほいじゃー、最終兵器幼女部隊復活って事でー、皇帝を粛清に来る連中を撃退しましょうかねー。