7-3. 廃棄案件
「私が忠誠を誓ったのは国王様だ。皇帝などと言う紛い物では無い!」
「軍人なら、忠誠心に殉じて死ぬでござるよ」
次に来た依頼は、空軍大将の暗殺でした。ニートンが始末しました。
クーデターを企てておるというので、政府から依頼があったのです。おかしいな?うちは探偵事務所なのに、暗殺屋さんに、なってしもうた。ニャア探偵事務所って看板に書いてあるでしょ!読めないのカナ!
「なんじゃ、朕の紹介した客に不満でもあるのかや?」
「いや、3件目と4件目の依頼がどうかしてるんで、皇帝に相談に来たんよ」
カワサキ帝国の皇帝は、細い目の女だった。弥勒菩薩みたいなオソロシイ顔してるよ。笑顔で人類滅ぼしそう。国王が退位した後で、カワサキ帝国の元首になったのは皇帝でした。どういう出自なのか、私は知らない。
「えーっとね?海軍大将が陸軍大将の暗殺依頼してきてね?」
「まさか、陸軍大将は海軍大将の暗殺を依頼してきたかや?」
「そのまさかなんよ。どうする?」
「どらも受けておしまい。軍部は再編成が必要じゃのう。朕のちんちんが痛いわ」
「ちんちんないでしょ?」
神話級のダジャレを頂戴してしもうたわ。仕方ない、座布団はあげないけど、言われた通りするかー。もう暗殺事務所でもいいよ。駅の伝言板にXYZとでも書けばいいじゃん。そんなもんは相手にしないけどね。皇帝を通した話なら暗殺でも請けて大丈夫じゃないかな。皇帝が騙されるくらいなら、もうどうにもならんのだし。NTTのIXが事故を起こしたら、どんだけ回線を冗長化していたところで、インターネット接続が壊滅するのと同じね。皇帝を騙すような手合は、私みたいな植民地の村人には対処できません。
タマサカイで撮影された動画が大炎上したせいで、他のルートからの依頼も来ないしね。
迂闊じゃったなー。多少のリスクを背負ってでも飛行魔法で帰るべきだったわー。じゃって、マッハで飛行中にマナカナがどうかなったら、自分の起こした衝撃波で死ぬし、墜落しても死ぬから、それが嫌でねー。おもらし王女を浮かせて運ぶくらいならいいんだけどねー。どうせ魂が砕けない限り、私は死なないのだし、死んでも異世界転生して、いつかは帰って来られるのだし。今後はもうちょっとリスク計算を大局的な視点でやりましょう。社会的な死の方が遥かにダメージが大きかったわー。
「お前には大局が見えておらん!目を覚ませ魔法幼女よ!」
「やかましいわ」
事実を言われてムカついたわ。思わず陸軍大将の魂まで焼いてしまった。ま、いいよね?
ちなみにー。魔法覚えたての頃に、公園の変質者を焼いたのだけど。あれの何が罪に問われたのかと言うと、魂をちゃんと焼かなかったこと。魔法の火力が、まだ足りなかったんよね。魂の焼き方も知らなかったし。変質者を即射殺するのは合法な行為で、ジャスティスなのじゃけども、ちゃんと魂も焼いて輪廻を断ち切る事が必須だったのだ。
この事は、村に入り込んだ変質者を駆除したじいちゃんに教えてもらった。じいちゃんは村の自警団のエースなので、熊以外にもいろいろ駆除しているのだ。
「よし、分かった。ヨコスカ海軍の大佐の地位をやろう、それで手を打とうじゃないか」
「は?メジャーデビューの話なら聞いてやらなくもないわよ」
海軍大将は、分かりやすい俗物だった。俗物嫌いのミーナちゃんが始末しました。
こうして、国の依頼で4件の暗殺をこなした私達は、お姉様に背負わされた借金を完済した。
「ふぃー、次こそは探偵の仕事をくれー!」
「もう無理じゃないの?あんた裏の世界で怪人ミツバチ幼女として有名になってるわよ」
「うちは皇室御用達なのになー」
ほいでー、次の依頼は暗殺では無かったのですジャガー。
「え?ブラックブックを盗んでくれ?」
「はい。神社の総本社の教皇室にあるはずです」
ブラックブックといえば禁断の聖書。この世の理の全てを記してあるとかないとか。前にシスターが言ってたやつじゃん。当代の教皇以外は閲覧禁止の門外不出の秘伝のレシピじゃって。気にはなるけどね?盗難こそ探偵の業務ではないんよ。盗難はカワサキ帝国では大罪なのです。即射殺。
「謝礼は、もちろん弾みますよ?」
「ほいでー?あんた誰?」
「それは聞かないで下さい」
「あ、そう。ちょっと考えるから、明日また来てもらっていい?」
「良いお返事を期待していますよ」
この依頼者は、皇室経由ではない。いきなり予約もなしに、村の探偵事務所にふらっとやって来た。
「どうする?あれこそ暗殺すべき対象なんじゃない?」
「うん。皇帝に聞いてみるけど、身元不明じゃあねえ」
「今、極小ドローンで追跡中だよ」
ミクルちゃんの放ったドローンで追跡した結果、依頼者は教皇であることが判明しました。何がしたいんじゃ?保険金詐欺とか?ともかく、この国は組織のトップが尽く腐敗してますよ。早速、皇帝ちゃんに相談だ。
「どうするー?ちんちん」
「教皇も暗殺しておじゃれ」
「あー、うん。わかっぱー」
結局、この案件も暗殺ですよ。
教皇の暗殺は、タオルくんにやって貰いました。魔力的な攻撃は相性悪そうだったので。
見事に魂まで粉々に粉砕されて、教皇は消滅しました。タオルくんにどんな改造が施されたのか知らないのだけど、一体何をしたのかなー。
教皇を引き継いだのは、村のシスターでした。なんだこいつ実力者だったのか。そりゃそうかー、国の戦略秘密兵器である魔法少女が居る村に配備されたくらいだもんね。村の神社も、新しい総本社になりました。立派なのが、うちの隣に建ちましたよ。
「ニャアちゃん。これ預かってよー」
「え?これブラックブックじゃん?もう読んだの?」
「ううん。古代文字で書かれてて読めないのよー」
「へ?ああ、そういうこと」
この世の全ての理が記載してある、って。要するにコレは古代文明の首都防衛システムか何かの運用マニュアルみたい。私にも読めないけど、なんとなく雰囲気で分かる。システムエンジニアだからね、私。
「ついでに出来れば解析してもらえない?」
「いいよ。読みたかったし。うちで預かるのが、世界でもっとも安全だろうしね」
ミーナちゃんが古代語の研究してたし、ちょうどいい。アールくんのROMに焼き付けてあるプログラムの解析をするのに「古代語の聖書でもあればなー」って言ってたよ。大量の文章が無いと未知の言語の解析は難しいからね。同じ言い回しが何度も出てくる聖書やマニュアルの類は都合がいいのだ。
ほいでー。6件目の依頼なのですじゃがー。
これも暗殺依頼でした。しかも身内からの。
「お兄様を暗殺して下さい」
「えー、とりあえず事情を聞こうか」
依頼者はミクルちゃんです。兄であるアールくんをゲーム世界に閉じ込めただけでは足らず、暗殺してくれと。んー、どんな事情があるのー?




