7-2. 炎上案件
「暗殺稼業でござるかー。昔やったナリー」
「そういえば、そうね。必殺なお仕事人みたいなの。いくつか商人の屋敷を燃やしたわねー」
「お姉ちゃん達は、昔からそんな悪事を…」
今回は、ああいう貧乏くさいのではありません。なんと、帝国皇帝の依頼を、元国王の仲介で請けたのです。成功させれば、魔女ニャアの名声は劇的に急上昇して、殺到する依頼を選別する立場に!
「なっちゃダメ。暗殺なんだから、コッソリやってよ」
「あ、はい」
そりゃそうかー。裏社会でだけ有名になってしまう予感。
「ほいでー?ターゲットはー?」
「おもらし王女だよ。タマに亡命してんだって。あそこは国交がないから引き渡しの交渉も出来ないでしょ。それで暗殺するんだって」
「え?あいつまだ生きてたの?」
いっそ、ライブハウスでミーナちゃんと揉めたところから、やり直したい。
「タマにも古代遺跡があるんでしょ?そこに潜んでるんだって」
「そこまで分かってるんだ?」
「帝国の諜報部は優秀だからね。ただ、あのおもらしは魔女らしくてね」
「あー、そうか。古代遺跡を破壊したことで、覚醒しちゃったかー」
タマの森の中にはデータセンターみたいな古代遺跡がある。そこのマナカナ吸引装置は、マナカナストレージの実験の後に破壊済み。
超小型のドローンで夜間に侵入して、メインフレームみたいな機械だけ破壊した。マナカナ吸引装置はロボとは限らないのだ。
動機はタマサカイの湯にゆっくりつかりたかった、ただそれだけ。マナカナ吸引をキャセル出来るといっても落ち着かないからね。それでいらんものを覚醒させるとは、考慮漏れじゃったわ。
「さってとー」
私は早速タマに乗り込んだ。タマはオタマ村の隣なのだ。隣と言っても何も無い荒野を500キロくらい挟んでいるけどね。私は致命的にマッピング能力が欠如しているので、位置関係がよく分からない。オタマ村の東にあるアルプスを越えてヨコハマから更に東のサガミハラから北上してアハトプリンを西に進むとタマ。そこから南下するとオタマ村。合ってるよね?
日本の川崎市とか横浜市とは東西が逆転してる?日が昇る方を東としてるけど、東ってどっちだ?お茶碗持つ方?おまんじゅう掴む方?そういう事じゃないわ。
おそらく、多少の時空や地磁気の捻じれはあると思う。古代文明が滅んだときに、やらかしてるかも。
私は、怪人ミツバチ幼女の格好をして、ぽってぽてとタマデータセンターに向かって歩く。猫のアマテラスを連れて。暗殺なので単独で乗り込んできた。ぞろぞろとチームで暗殺ってわけにはね?
どうせ目撃者は居るだろうから、目立つ格好で来た。矛盾してるけどね、裏社会でもいいから名声を轟かせたいんだよ。これも広報活動の一環だよ。ただの趣味じゃあないんよ。
「にゃあ」
「お?裏口を開けたって?」
猫のアマテラスは、なにしろ猫なので、ちょっとの隙間があれば侵入可能。ぬるぽっとデータセンターに侵入して、がっと裏口の鍵を開けてくれた。
魔法を使うと存在を察知されるかも知れないので、おもらしを発見するまで魔法は使いたくない。
「お、あっさり見つけた」
「誰よ?ミツバチアハトちゃん?なんでここに?」
「ふはは!私は、怪人ミツバチ幼女じゃ!死ね」
「うぇっ」
魔王ロイドに貰った異能を使って、おもらしの体内マナ循環を停止してやった。また、おもらしして気絶したよ。どうしよう?汚いんだけど。
そういえば、こんな異能があるのに、タワシしか召喚出来ないって、魔王ロイドはとんでもないポンコツだよね?いや、こんな異能があればこそかな?あいつ、この異能に自覚が無かったか、制御出来なかったのかな?今は、それはどうでもいいね。
おもらしを全裸に剥いてから、ぼじゃーっと丸洗い。水を生成する魔法は習得していないので、タマサカイの湯まで担いできた。私も、おしっこくさくさになったので、ミツバチのコスプレを解いて丸洗い。あ、どうしよう?くさいコスプレ着て帰りたくないよ?
ナースコールをするか。あ、でもまず用件伝えないとだな。ニ度手間になっちゃう。ここから一番近いのは誰じゃっけ?アハトプリンの拠点にいる家電ロボかな?ナース型で待機中のミクルちゃんにチャットで応援要請を送信っと。
「お嬢様。やって来ましたよ。タマデータセンターに配備した家電ロボの事をお忘れだったのでは?」
「あ、そうだった」
エッチな人形にしか見えない幼女サイズのナース型家電ロボが、スグにやって来た。家電ロボには、クラウド型AIに接続する回路があるので、それを通じてミクルちゃんが操作して来てくれた。
このロボはエッチな質感だけど、エッチな機能なんかないよ。幼女サイズのロボに、そんなものがあったら、前世に遡って即射殺の大犯罪だ。小さくて隠し易かったので幼女サイズを選定したのだけど、なんでこれまでエッチな質感なんだかなあ?エッチに感じる方がどうかしているのかな?否定は出来ぬわ。ナース服を着せてるのとかもうね大変な変態さんのそしりを免れない。もちろん私の趣味だよ。
タマデータセンターは、浮浪者の巣になってたから、隠してたこれを発見されてたら事案発生だったなあ。あのデータセンター、裏口から侵入しなくても、正面玄関がフルオープンだったよ。誰の仕業かと言えば、メインフレームを破壊した時の私でした。ふひっ。
「頼んだものは持って来てくれた?」
「頭をパーにする座薬ですか?そんなものデータセンターに置いてるワケないでしょ。着替えはロボの服を脱がしてください」
「お、おう」
ナース服を着た幼女が、エッチな全裸人形にしか見えない幼女に、全裸の女を担がせて、地下鉄に乗ったよ。ひどい絵面だ。誰かに見られたかなあ?
「おもらし王女は、頭をパーにして奴隷にでもするんですか?」
「んー。魔女だしねえ。何か使い道があるかと思って。こいつ殺しても死ななそうだし」
「そうですね。街を滅ぼすクラスの攻撃を2度も受けて、まだ生き延びてますからね。超絶な豪運の持ち主なのでしょうね。カジノで無双してましたし」
「そうかも。サイコロの出目をいじれるサクラ姉さんの異能も移植してカジノのディーラーにしちゃおうかな」
「もっと他の使い道があると思いますよ。桁外れの豪運なので」
「そじゃあのー」
言うまでもなく、私の痴態は目撃されて動画撮影までされてた。見事に炎上した。ウケる。
さて、おもらしをどうしたか?だけども。
頭をパーにしようとしても、焼き殺そうとしても、全て偶然の事故で失敗した。豪運が過ぎるでしょ?こいつの豪運を抽出して私に移植したいところだけど、それすら不可能。
辛うじて魔力拘束具を首に嵌める事は出来たけど、偶然の事故でそれも機能はしてない。
でも、こいつはドエムさんじゃった。
首輪に喜んでしまい、私に隷属を誓ったので、私専属のメイドにした。もう他にどうしようもない。これが、案外と優秀なメイドなんで、余計に処分に困る。
ああ、どこかの王女をメイドにする、そんなロマンを夢見た事もあったもんなあ。受け入れるしか無いわー。
こつが使える魔法は、水を出したり、調理に最適な火を出したり、汚れだけを落としたり、そういう生活に役立つ魔法だけだった。だけど、それは全て私には無いものだったので、これが実に便利なのだ。
なんと、皮膚の有益な常在細菌だけは残して、体を丸洗いする魔法まで使える。私が同じ事したら、腸内のビフィズス菌まで死滅させて、対象の生物はピカピカのカサカサにキレイになって、死ぬ。
私はお風呂スキーなので、その丸洗い魔法は普段はいらんけども。戦場に長期間常駐するお仕事でもあれば重宝するだろう。
ミクルちゃんは、アールくんと同じで質実剛健な料理しか作れないけど、おもらし王女は違う。朝から牛丼を出したりしない。お姉様よりも遥かに料理も上手い。というかお姉様は、そんなに料理得意じゃないんよね。ライブハウス定食屋も、厨房担当はパンツの騎士達だよ。
「これは、私も身内として認めざるを得ないわね」
タオルくんに身内認定されるとは、相当なものだよ。こうして、おもらし王女は私専属のメイドとして、私達の家に同居することになった。私以外の命令は一切聞かないけどね。コミュニケーションには応じるよ。
「暗殺ではないけど、無効化には成功したから、皇帝から報酬を貰ったよ」
「やった!」
「でも、姉さんに没収されました。あんた、定食屋を全焼させたでしょ?賠償金だってさ」
「そんな何年も前の事を!」
「何年も前だからだよ。利子が複利でついて、まだ全然足りないってさ」
「ぐぬううう。ほいじゃあヨコハマ円で払うし」
「カワサキの通貨しか受け付けないってさ」
「ヨコハマ円はカワサキでは呪われた通貨扱いだもんなー。両替も闇でしか出来んし」
いつの間にか借金を背負っていた私は、探偵として真面目に働き続けるしか無いのです。
最初に首都支店に来た客は皇帝だったので、サクラ姉ちゃんの仲介なんか邪魔だったんよ。直接依頼を受けておけば報酬を丸ごと抜かれる事も無かったのにー。面倒がらずに行っておけばー。私は根っからの派遣体質のようですね。
でも、皇室御用達に指定して貰えました。これで、貴族や超絶お金持ちが、次の依頼を持って来るはず!




