7-1. 新規システム開発
まずやるべきは、魔女ニャアの名声を上げる事かな。
私は、ハードボイルドでヘビィデューティな探偵として生きていく事にした。
ハードボイルドな世界でニートがやる職業といえば、探偵と決まっている。浮気調査から潜入工作まで、依頼さえあれば、何でもやるよ。
問題は、私が女神として有名になってしまっている事だ。カワサキ帝国は魔女推しで、女神は邪教の神扱いだからね。そんなもんに仕事を頼むやつはおらん。
魔法幼女だって略せば魔女なんだし、私は魔王でもあるのになー。パンイチ教の奇跡が、あまりにも広まり過ぎてしまったね。一万二千年もかけた自作自演は伊達じゃない。
「魔女ニャアとしての名声を底上げする何かが欲しいところよね?」
「全帝国民が泣き叫ぶような事件を起こすでござる」
「事件を起こすのではなく、解決するのが探偵なのでは?」
アホ毛ぴろーんのタオルくんもニャア探偵事務所の所員だ。
サイボーグに改造された彼女は、前世で見つけた知識と、元来の知能に加えて、戦闘能力まで身に付けてしまった。
ニートンも所員で、こっちは異世界の姉と融合して、逃げ足だけじゃなく、攻撃力も備えた攻防一体の無敵の女騎士になった。
異世界姉とニートンの融合は、割と簡単だった。召喚魔法に、異世界転移魔法に、一体化座薬、どうとでもなったよ。生き別れの姉妹は喜んで一体化した。いいのかな?私なら嫌なんだけど。
ミーナちゃんは、魔法幼女として、秘密の特訓をしたそうだ。何をしたのかは謎。時を越えられるので特訓期間も謎。
所員全員が探偵じゃなくて兵器だよね?傭兵派遣事務所の方がいいのかも?
全員が6歳幼女の姿なので、どこの戦場も雇ってくれない気がするけど。6歳児しか魔界ロボに乗れないから、みんな6歳児のボディなのです。魔界ロボとは、魔界の地下にあった古代ロボの事だよ。
うん。探偵が魔界ロボに乗る前提なのが間違っているね?
「ジョン姉ちゃん、ちょっとサクラとして何か依頼してよ?世間が震撼するようなヤツ」
「えー?そりゃあ元国王だしぃ?やばい案件のひとつやふたつは本当に仲介できるけどー。最悪、捕まっちゃうカナ?」
「私達を捕縛出来るような組織は、この地上には居ないと思うけど」
「さらっとコワイこと言うね、ミーナちゃん。お姉ちゃんは心配カナ」
じゃって、マナカナ吸引装置を無効化する事が可能になったので。私は、魔王の妄想が産み出した存在、というゲーム内設定が現実に侵食した成果なのか、魔王ロイドの能力を身につけた。マナカナの循環をコントロール出来る機能だ。吸引力に優れるタマでも実験したけど平気だったよ。
ミーナちゃんも特訓により、超巨大な魔力袋を手に入れる事でマナカナ吸引装置に対抗した。それに、マナカナストレージもあるしね。ミーナちゃんの強い希望で、座薬型じゃなくて魔女っ子ステッキ型と変身ベルト型を開発したよ。
ベルトの方は腰に巻くとさすがにパクリ感が半端無かったので、腕時計型なんかを検討したけども、既に存在するようなので封印した。んー、システムエンジニアが常備している道具が理想なんだけどー?そんなものは無いなぁ。どうしても必要な時は、デーモン閣下のマネですと言い張って、腰にベルトを巻こう。じゃって私だって魔王だし?あの界隈に怒られるなら本望よ。
弱点を克服した魔法幼女姉妹を誰が捕まえられるというのか?
「魔女っ子ステッキを持った魔法幼女が何でジャージなの。ピンクでかわいいけど」
「ロックンローラーだから」
「あ、そう。ステッキじゃなくてギターでも背負ったら?」
「それもアリかしら?」
ミーナちゃんも中身が14歳に近づいて来たので、チュウニ回路が芽生えつつある。
タオルくんは宇宙海賊の格好をしているけど、多分すぐに飽きてジャージに戻ると思う。着るのめんどくさそうだし。
ニートンはメイド服だ。これが王国近衛騎士の正装なんだそうだ。それは異世界の王国でしょ?魂は異世界転移しても不変?確かに。
私は、ガッチャピンのぬいぐるみを着てみたけど、熱いのですぐに脱いでTシャツとパンツになった。黄色と黒のシマシマパンツなので、ミツバチみたいだよ。
「お嬢様。首都カワサキ支店にお客様ですよ」
「お、ほいじゃあ。首都に行こうか。40秒で行くって伝えちょいて」
「転移魔法は危険だから、あんたとミーナちゃんだけで行ってね」
「のじゃー」
村から首都カワサキまでは時速666キロの超伝導リニア車両の地下鉄でも、3時間以上かかる。さすがにそんなには客を待たせるわけにはいかないね。やっぱり予約制にしようか。
探偵事務所は村のすっとんとんビルのテナントに本店を開業したのだけど、他に帝国の首都カワサキ、魔界、ヨコハマ、マチダ、アハトプリンにある各拠点にも支店を作ったのだ。受付には家電ロボを配備している。家電ロボはクラウドのAIを通じて、本店で受付をしているキナコに同期しているんだよ。このシステムは私が開発した。うっひ。まともに動く保証など無い。
なお家電ロボは冷蔵庫や洗濯機ではなくて、マチダの家電量販店の地下で眠ってた古代ロボの事だよ。
「んー、やっぱり転移魔法は危険じゃからして、明日また来てもらって」
「分かった。急ぎではないそうだ。一度帰らせよう」
「あ、ちょっと待って。いっそ、ここに来て貰えないのその客」
「うむ?明後日なら構わぬそうじゃ」
「ほいじゃー、それで」
うん。やっぱ、あちこち行くのは面倒だわ。本店以外は開業初日に閉店!受付はWebか専用アプリで!
「あんた何してんの?無計画にも程があるわよ?」
「アジャイル的手法じゃからして」
「それ言えば、何でもいい加減にして良いわけじゃないでしょ?お姉ちゃん」
「ぶひぃ」
こんなのが姉なのだ。ミーナちゃんがへんてこりんになるのは当然の帰結。是非もなし。
「ほいじゃー、今日明日暇じゃからしてー?ゲームでもやる?」
「待ちなさい。そういう事なら僕が仕事を依頼するよ。姉さんから、サボらせるなって言われてるんだ」
「げっ。コイツばばあの手先かー」
「なんとでも言いなさい。仕事の話を聞いてもらうよ」
「のじゃー」
依頼人第一号は、ジョン姉ちゃんになりました。身内なので、サクラ感が拭えない。
「ほいじゃあ、サクラ姉さん。こちらポイントカードになります」
「は?また僕の名前変えたのー?いいけどさ。ポイントが溜まると何がどうなるのカナ?」
「ヨコハマの統治権と交換出来ます」
「要らないし!あと、領地の統治権を好き勝手にしないで」
そもそもが、ポイントカードっていう文化がカワサキ帝国には無いんだよね。
実質0円だとか、極小の文字で書かれた条件付きのサブスク契約だとか、そんなもんも無い。どっかの国と違って、国民がアホじゃないのだ。じゃって、生活に必要なものは全部、実質じゃなくて、完全に無条件でタダなので。国民を小賢しく騙す必要が無いし、騙されもしないんよ。
客単価を稼ぐための上げ底弁当も売られてないし、スパム判定されるようなダイレクトメールも来ないし、街路樹を枯らすクズも居ない。会社の悪行がバレて、てめえだけ逃げるトップも居ない。しにゃあええれんちゅうはいない。
「また、そんな尖った事を言って。内容の否定はしないけど、外で言わないでよ」
「そじゃーね」
魔王ロイドから貰った能力には、本音がダダ漏れになるという弊害があるのだ。うーん?謎の仮面でもつけようか?まさしくニャア大佐。パクリは良くないね。本音を垂れ流すのはリモート会議の時だけにしようね?その場合もマイクのミュートには要注意。対面の時は、ちゃんと本音を隠さないと。うん、昔とったキネナニガシだわ。どうにかなろうもん。
ってゆうかー?魔王ってここまで本音ダダ漏れじゃったっけ?
「あんたは元からそんなよ」
「ありゃ?」
まあいいや。私は不老不死の魔女。いつか成長してみせる。1億年もあれば、ね?
「ほいでー?サクラ姉ちゃん、何をせればええのー?」
「暗殺だよ」
探偵業務に暗殺は含まれませんが?




