6-13. リプレイス
タマサカイの温泉に浸かっていると、ミーナちゃんが倒れた。
年齢詐称魔法で17歳になっていたのが、本来の10歳児に戻り、湯船に浮かんでビクンビクンッしてる。これはまた、強力なマナカナ吸引装置が近くにあるみたいだね。ここは、アハトプリンとタマの境なので、タマに何かあるんだろうねえ。
「あんたは、なんで平気なの?」
「うん?私は魔力袋が女神級に大きいからね。魔王級と言うべきかな?最近、無茶なことしたんで拡大したみたい」
「魔力袋は拡張出来るでござるかー」
「たぶん。ご飯いっぱい食べ続けると異袋が大きくなるようにね」
さてと。ミーナちゃんのおしりをむんずと掴むと、私はアレをおしりのあなにぶじゅっとインストールした。座薬型のマナカナストレージだ。当然、こんな事もあるだろうと備えておいた。
「ふぎゃああああ」
「幼女同士なので絵面的にはじゃれ合っているようにしか見えぬでござるがー」
「そこはかとなく、背徳的よね。こんな事されるのなら、私は魔法少女にはならないわよ」
「拙者も騎士なので、魔法は要らぬナリ。タオル殿はサイボーグ戦士など如何でござろう?」
「んー。さすがにアホ毛を生やすノリでは出来ないわねー」
サイボーグ戦士になるかどうかはともかく。この世界では多様性が重要だ。魔法少女も絶対無敵ではないのだから。タオルくんの頭頂部に生えたアホ毛がプルンっと頷くように震えた。ソレ生きてるの?
「お、お姉ちゃん?妹にやっていいこと悪いことがあるよ!?」
「ありゃ。これはダメじゃった?」
「ギリギリよ!」
んー、私は日本時代におしりのあなを患っていたので、座薬なぞスナック感覚なんだけどー。
「スナック感覚の座薬って何よ」
「おいなりさんトークは程々にして撤収しましょ?ここは危険よ」
「のじゃー!いでよー!ガーゴイルーー!!」
「こんな所に呼ばないの。地下鉄の駅まで歩くわよ」
「へーい」
私達は、湯船から上がると牛乳も飲まずに、そそくさとジャージを着て、ぽってぽてと地下鉄の駅まで歩いた。待機していた超伝導リニアモーターカーに乗車して、タマサカイを後にするよ。
「お嬢様?行き先はどちらで?」
「そじゃーのー。国王のところまで行こうかのー」
「あー、退位するんだっけ?式典に出るの?出て大丈夫なの?あんたが」
「じゃって妹じゃし」
「私は、アレを兄とは思ってないけどね」
「そうかい?ほいじゃーアールくん、帝国の王宮までおにゃしゃす」
「がってんしょうちのすけー」
超伝導リニアモーターをタクシー代わりとは、贅沢なもんよ。
せっかく、カワサキ帝国の王宮地下まで地下鉄を延伸したと言うのに、兄ちゃんは国王を退位するという。その退位式が、明日あたりあるはずなので顔は出しておこうかと。魔女教の国の式典に女神が出席するのはダメなんだろうけどね。
「あのイカサマサイコラーは、なんで退位するのかしらね?」
「妹に粛清されるのは嫌でござろう?」
「領土を拡大し過ぎたから、国王の独裁政権では維持出来ないからでしょ?分割して連邦にするんだって」
「ミーナちゃん詳しいでござるな?」
「お姉ちゃん達が、新聞も読まないし、ニュースも見ないからでしょ。あほなの?」
「否定はせぬでござる」
「あほではないわ。私は常にニュートラルなの」
「だったら、余計に情報は重要でしょ?」
「ぐっ、最近言いくるめるのが難しくなってきたわね」
「最初からでござるよ?」
何にせよ。タマ地方にどんな古代遺跡があろうとも、向こうが侵攻して来ない限りは、もう手を出さない。これは国王の最後の命令でもあるよ。領土を拡大し過ぎても、支配が及ばなければ身内に敵を飼うことになるもんね。ヨコハマなんか既にアヤシイもの。
「タマサカイの湯は、結構良かったナリが。もう行けぬでござるな」
「魔界の悪魔の湯があれば十分でしょ。しばらく魔界に暮らしてもいいくらい」
「そじゃあのー。これから何処に住むのかは重要じゃのー」
地政学的には、東にアルプス、西に渓谷という過酷な僻地であるオタマ村は有利。観光地ではあるけど、軍事拠点ではないし、落とす価値が無い。ここを狙った敵は尽く撃退されているので、今更狙うやつも居ない。もし、居るとしたら、相当に強力な敵だね。
ならば、私さえ居なければ注目する価値も無い、ということなのでは?
「縁のある地を人質にする作戦もあり得るでござるよ?」
「んー。パンツの騎士も強いしねえ?自衛出来るんじゃないの?」
「家電ロボも配備しておけば?パンツの騎士に預ければ乗っ取られる危険性も最小化出来るのでは?」
「炊飯器か冷蔵庫みたいな響きじゃな。家電量販店の地下倉庫から回収したロボね?」
「ふむんー。それがいいナリ」
「やり過ぎると注目浴びちゃって逆効果よ?」
「あー、まあ、最悪どうでもいいですしおすし。あの村」
「まあ、そうね。女将だけサルベージすればいいか」
情緒面でも別に固執する土地では無いんだよね。あそこで産まれ育ったわけでなし。7年くらい住んだけどね。引っ越すにはいい頃合いでしょ。かつては最長3年程度で異世界転移してたのだ、ずっと同じ場所にい居るのは落ち着かない。
引っ越し先第一候補は魔界でしょうね。何しろ魔法的な結界が強力だし。周辺1000キロは何も無い荒野だしね。少なくともニンゲンには到達することすら不可能。地下鉄のターミナル駅でもあるしね。それに私は当代の魔王でもあるし。住んでいる魔族も歓迎してくれるでしょ。
「やっぱり魔界に行こうか。どうせ式典には出席出できぬ」
「気まぐれねえ。さすがは女神だわ」
「女神にして魔王とは、不思議な存在でござる」
「肩書だけじゃん?実際には何の権能もないんじゃけ」
「あれ?そうなの?何かあるのかと思った」
「じゃって、任命されるだけだよ?輪廻転生の呪いも断ったしね」
それに、女神の方に関しては、私自身のマッチポンプである可能性が。元女神のお姉さんなんて実在しないんじゃあ?あれも私なんじゃないの?結論がコワイので、これ以上の推測もしないし、裏取りもしない。
「ほいじゃー、これから何して遊ぼう?」
「今、ゲームをしているでござる」
私達はラゾーナみたいな市庁舎の一角に家を用意して貰った。徒歩圏内、どころか同じ建物内に何でも揃う夢のヒキニートハウスだ!
ライブハウスにあった古代ゲーム機を持ち込んで、グランドセフトなゲームをオンラインプレイ中。といっても、私達以外のプレイヤーは存在しないけどね。クローズドなので。
「いや、もうちょっと中長期的な話」
「やはり惑星全土統一、ニャアちゃんの野望が拙者のイチオシでござる」
「そうねー、諸国漫遊の旅なんかいいんじゃないの?ドキドキのワクワクよ。きっと何回は死ぬわ」
「大人しく引き籠もってる方がマシな気もするけど。いっそのこと異世界漫遊は?」
「僕は、宇宙旅行です。人類が居住可能な惑星を探しましょう」
「くえー!」「にゃあ」
「ボンジリとアマテラスが、この惑星系の外までは行けないそうです」
「ミクルちゃん、いつの間にインコ語と猫語を?」
「私は非常に高度なアンドロイドなので。日本語も理解します」
「わらわには無い機能であるな」
こいつら何年経っても言う事に変化がないねー。
これまで生きた時間に比べれば7年なんて誤差みたいなものかー?成長しないのも当然かしら。
だって、私もまったく成長していないもの。ぶひぃ。




