6-12. フォーマット
「ガガピー!やあ、僕の妹がこんなに管理者なワケがな…」
「こいつかあ」
アハトプリンでも古代ロボを発見した。
なんと茶番のために借りた雑居ビルの地下倉庫に転がってた。3体だけ。
1体だけ試しに起動してみたけど、ロクでもない魂が入っていたので、即強制シャットダウンした。
「このノーパンのロボは廃棄するでござるか?」
「お姉様と国王に相談してから決める」
「残り2体は、黒のパンツと白のパンツを履いているわね?」
「黄色のシマシマではないでござる」
「あー、それなあ?それは無条件廃棄でいいんじゃないかなー」
この雑居ビルを丸ごと買い取って、地下倉庫は時間停止の魔法をかけておいた。どうするかを決める前に、他の古代ロボを探そう。
「ニャア殿は意外とダメっ子動物に冷酷でござるな」
「そうね、もっとちょろいのかと思ってた」
「ダメっ子を切るのは正しいでござるよ」
「それは私も同意」
「10歳の私にも、それは分かる」
私は魔王を更生させようとはせず即切り捨てた。
腐ったミカンはスグに捨てないと、箱丸ごと腐るのだ。悲しい事かも知れないけど、それが事実。私は、きんぱっつぁんでは無いので、規格外品を育てる事など出来ないのだ。私の能力で支えられる範囲は、とても狭いのだ。
システムエンジニア時代に、私は2度も失敗した。ダメなメンバーを育てようとしてプロジェクトに穴をあけ、チームは崩壊寸前になった。ダメなのはスグ切らないと、他のメンバーに負担をかけてしまうのだ。守りたいものがあるからこそ、切り捨てなければならない。3度目の失敗は出来ないと悟り、それ以降私は合理的な判断を優先し、情緒的には冷酷に徹する事にした。当然、恨みは買っていると思う。一番ダメっ子動物なのは私なのだ。
それはともかく。他の古代ロボ探しだ。
「マナカナ濃度が低い地域があれば、そこに古代ロボがあると推定できるのだけど」
「残念ながら、僕にも妹にも、マナカナは観測が出来ません」
「わらわには、マナカナの概念すら理解できぬわ」
うちのアンドロイド達は、マナもカナも物理的には存在しないと言う。どういう事ー?
「古代ロボも眠っていればマナカナ吸引回路は動作しないのでござろう?」
「それなー。マチダに居た連中は完全に停止しているっぽい。確証は無いけどね」
「でもカマクラの巨大観音像は停止していたのに、広大な範囲のマナカナを吸引していたのよね?」
「起動していて、ずっとじっとしていた可能性もあるけどね。ナニソレ、余計コワイわー」
マナカナが観測出来たとして、古代ロボ探索の決定打にはならぬ、ということ。
「視点を変えて、古代ロボの特徴をスキャンする手法であれば、あるかも知れぬな?」
「キナコの言う通り。僕もそれを探っているけど、古代遺跡と現代文明の決定的な差が見つからない」
「そうね兄さんの言う通り、人類は一度滅んだにもかかわらず、まったく同じ道程を辿っているように見えます」
「人類は再び滅びる宿命ナリ?」
「是非もなし。だって、あほしか居ないもの」
私はミーナちゃんほどには尖っていないけど、人類には革新の可能性は無いだろうな、と思っている。
例えば、日本というか地球では、エコだのSDGsだのDEIだのとほざいているけども。異世界では、そんなのは当たり前にやっている事だってある。どうあがいても、自分達にだけ都合のいい明日など来ないのに、人は入手不可能なものこそを欲しがるのだ。派閥争いに躍起になっている企業に限って「ワンナニガシ」とか「オールナニガシ」という一体感を訴求するスローガンを掲げるでしょ?
何の話だっけ?
「古代ロボは、もう放置。私の手には負えないね」
私に支えられる範囲は狭いのだ。国王を暗殺から守る事は出来たかも知れないけれど、国全体や惑星全体を守るのは、私には役者不足というもの。だって、私は正統派のニートなのだから。
「では、アハトプリンのこの拠点も放棄するでござるか?」
「いや、アハトプリンは落とす。黒と白の因縁があるから。あと、ここにはおもらし王女が亡命してるから」
アハトプリンは、村に移住したパンツの騎士達を亡命者として、抜け忍の如く追っているらしい。村のパンツ達が強いので秘かに対処しているようだけど。集団で来られたら対処しきれない。ここは先手必勝で潰しておく。村の住人も私の身内よ。この辺り一帯をカワサキ帝国の支配下に置いてしまえば、抜け忍問題だけでなく、ついでにマチダの飛び地問題も解決だ。
おもらし王女の事は、未来のニュースで観た。アハトプリンの貧民街に転がっていたそうだ。よく発見できたね?
「でも、アウェイの地だと、いつ私達の魔法が無効化されるか分からないよ?お姉ちゃん」
「魔法がダメなら、魔法のような科学で勝負よ。私達にはフルリモートの巨大ロボがあるでしょ」
「あ、そうか。カマクラ戦の時に使ったアレか」
まずアハトプリンの拠点までマチダから地下鉄を延伸。光ファイバーも敷設して、アハトプリンの拠点を地上の通信基地局にした。
そして、買収しておいたマチダの家電量販店の地下に基地を作って巨大ロボをフルリモートで操縦するためのコクピットを設置した。ここでアハトプリンを攻略する。通信の遅延を考慮すると戦場に近い方がいい。ただし近過ぎても危険なので、ここが妥当な位置じゃないかな。
家電量販店を買収した事で、私達の資産は更に増殖した。これが資本主義の魔力だ。私達は、資本主義社会のヨコハマでも、遊んで暮らせるだけの資産を持った大富豪になった。幼女なのに。
「担当の確認からいくよ。まず、フルリモート巨大ロボのパイロットは、タオルくんとニートン」
「ククッ、我の右手が疼くんじゃけえ」
「拙者も、ポニーテールが疼くでござるよ。にんにん」
ポニーテールって器官だったの?まあ、いつのもの出任せよね?
「次はー、魔界の古代ロボ。こいつには家電量販店ロボを搭乗させて、搭乗したパイロットをフルリモートで操作するよ。パイロットのパイロットは、キナコと魔界市長だよ」
「任せるがいい。お嬢様。アハトプリンを地獄と化してやろう」
「あ、セリフとられましたー」
なんか、ややこしい多段構成だけどね、これは実験も兼ねている。キナコはアールシリーズと違って戦闘も得意なはずなので、キナコの性能試験も兼ねているよ。
「アールくんとミクルちゃんは、魔界の古代ロボに架装して、現地のサポートね。ガーゴイル型で上空からの支援と、制空権の確保ね。データはリアルタイムで同期しているから、破壊されても大丈夫だよ」
「僕はロボットの格好になってもロボットじゃないよ。アンドロイドだよ」
「お兄様は墜落します」
いや墜落すんな。ほいでー、私とミーナちゃんはというとー。
「私は全体の総指揮、カプコンよ。ミーナちゃんは、私の補助と、いざって時の緊急脱出装置の起動をお願い」
「いいけどさ?この黄色と黒のシマシマで囲まれた赤いボタン押すと何が起こるの?姉ちゃん」
「自爆はロマンよ」
「あ、そう。ここじゃないよね?自爆するの」
「ここは、大気圏外まで飛んで行くよ。自爆するのは戦場のロボ達」
「それヨミランドの絶叫マシンにしたら?」
「あ、それいいね。普通のニンゲンは漏れなく死ぬけど」
さあ、作戦開始だよ!
「これより、オペレーションおもっちを開始せる!はっじまっるよー!」
「おもっちって何?」
「おそらくは今食べたいのでござろう」
「じゃあ、この戦争が終わったらお餅食べようね。姉ちゃん」
「あ、フラグたてんな」
ちょーっとばかり?布陣が最強過ぎたね?
アハトプリンの貧民街は焼け野原、これではおもらし王女もひとたまりもあるまい。
王宮はクレーターになった、予想通り王宮地下には古代の巨大ロボがあったらしく、ぞろぞろうじゃうじゃと出て来たので、対地攻撃人工衛星で、じゅぼっと焼き払った。乗り込んでいったうちのロボ軍団も全て消滅したけどね。機密は守られた。
「僕、死を仮想体験したよ」
「私も、サン・マイクロシステムズの川の幻を見たわ。向こう岸で私達を作ったマッドサイエンティストがおいでおいでしてた」
アンドロイドも電気羊の夢を見るんだね?アールくんとミクルちゃんは物理的には一度死んだ。でも、同期していたバックアップから復帰したので、ミリセカンド単位の誤差しかなく生き続けていた事になる。論理的には。ミリセカンドでも、高速駆動する超高度集積回路にとっては夢を見る暇が十分にあっただろうね。
そういえば、ミクルちゃんはアールくんと再開してから、一人称が僕から私に変わっているね。キャラ付けも勝手にするなんて高度なAIだわー。
「くえー」
「にゃあ」
フェニックスのボンジリと、ドラゴンのアマテラスは、今回は出番なし。万が一の時は、またもしゃあっと食べようかとも思ったけど。頭の一部どころか全身を捧げるボンジリさんの心根に、また甘えるのはね?自己犠牲の精神が、アンパンのヒーローどころじゃないわー。ボンジリとアマテラスは癒やしのために居てくれれば、それで良し。いや、多分居るだけで多大な加護があるんだよね。見えないけど。
さあ、事後処理は国王兄に丸投げて、タマサカイの温泉にでも行こうか?




