6-7. リグレッションテスト
「コロッケって、そんなにオイシイかしら?」
「君達は、本当のコロッケを食べたことがないようだ」
「そういうからには、あるんでござろうな?」
「え?いや、ないわ。私は唐揚げが好きじゃもん」
「牛肉を、ほんのちょっとだけ混ぜるのがポイントでござろうかー?」
久々のガールズトークです。ガールズらしく料理の話をしているのではなく、コロ助の話ですよ。
私達がガールズトークをする状況と言えばですよ。拉致されて護送中ということですよ。
国王の暗殺を企てた組織はマチダに潜伏中らしいので、マチダをうろついてみたのです。ギリースーツと怪獣のぬいぐるみのコンビで。今回は、ギリースーツはタオルくんが着ました。そのせいで、生えかけのアホ毛が見えません。
ほいでー、見事にマヌケが釣れたので、捕まってみました。護送車はアハトプリンを走っています。
「お嬢様方の使用している言語は何であるか?わらわには理解できぬ」
情緒を育成中のキナコも一緒です。ガールズトークは日本語でしていたので、彼女には理解不能ですね。キナコに日本語辞書のインストールするの忘れてたわー。
キナコはチュウニ回路に焼き付いているのか、一人称わらわなのに、私達をお嬢様を呼ぶ、不思議なキャラに戻りました。おもしろいわー。
アールくん達と、ミーナちゃんはオタマ村で待機中です。ナースコール一発で駆け付ける手筈になっています。
「この世界は護送の手順が分かっておらぬ者ばかりでござるな?」
「そうよねー。拘束もなし、武装した兵士の同乗もなし。逃げていいのかしら?」
「まさかの高度な罠とか?」
サガミハラで捕まった時も、そうでしたし、最初に帝国陸軍に捕まった時もそうでしたね。6歳幼女の集団相手で、油断しているのかも知れないですけど。キナコはエッチなメイドにしか見えないし。んー、キナコは、ちょっと外装を変えた方がいいかなー?
「しかし、最初に乗った護送車は馬車でござったが」
「これ、まるでミニバンよね?7年でここまで進化するものなの?」
「この世界の技術進歩が凄まじいよね。もしかして異世界転生者が技術供与してんのかな?」
「だとしたら、敵にはしたくないでござる」
「んー?どうかなー?暴力装置としては、魔法の方が圧倒してるからねえ?」
幸いな事に、兵器に技術革新をもたらす転生者は、多分まだ居ない。VHSとベータみたいな家庭用ビデオの規格戦争なんて、たった半年で終わり、ブルーレイみたいな円盤が出て来たと思ったら、動画はネット配信で観る時代になった。それでも、兵器は未だに地球でいえば1950年くらいのもので止まっている。核兵器も原子力発電も実用化されていないし、研究開発すらされていない。
「おっ、何処かに着いたでござる」
「敵の本拠地かしらね?」
「あっ、降りてもらえますー?そこのビルの8階が私達の拠点なのでー」
私は怪獣のぬいぐるみ、タオルくんはギリースーツ、ニートンはジャージ、キナコはメイド服。身体検査も無く、雑居ビルの中に入っていく。妙に気の弱そうな女に先導されて。国王の暗殺に関わってそうには見えないなあ、このおさげメガネ。
言われるままに、エレベータに乗って8階まで行き、特定派遣業でもやってそうなオフィスに案内されました。ここが、国王の暗殺を企てた組織の拠点なの?
「こにゃにゃちわー!元気だった?」
「おまえかよ…」
そこに居たのは元女神のお姉さんでした。なんなの、こいつ。今度は、何を始めたの?
「あー、だいたい察しはついてると思うけどね?私は、ただの傀儡なのよ。というか被害者の一人だからね?」
「えー?さっぱり分からんのじゃー」
「答えは、未来のニャアちゃんに聞けばいいよ?」
あぁ、また意味不明な事件が勝手に始まっているよ。どういう事ー?
「なんだ、またでござるか」
「ニャアちゃん何したの?いや、何をしようとしているの?」
「さっぱり分からんちん」
犯人が私だとして?国王暗殺の動機が不明だよ。なんでー?おにーちゃんが勝手に冷蔵庫のプリン食べちゃったとかー?そんなバハマ。プリンなんて、ライブハウスに行けば、いくらでも食べられるじゃないの。
「もう、ほっといて帰ろうか?」
「事態が悪化する危険性もあるでしょ?次は、女将さんが狙われるかもよ?」
「あー、あれは不老不死だし。大丈夫じゃろ?」
「いや、一撃で脳を破壊された場合は、死ぬ場合があるでござる」
「それどうやって知ったの?いや、答えは聞いてない」
私は、多少脳に穴が開いても死なないけどね。実験するわけにもいかないから、詳細は不明。
さすがになあ、この世界の恩人までターゲットにされちゃあなあ。
「しかしー?これ、どうすれば?」
「お姉さんは、シナリオ通りに、ここで待ってただけ。マチダでイカれた幼女達を見つけたら捕まえろって言われて」
「誰に?」
「ニャアちゃんに」
その私は、何をしたいのっ!?ふんにゃあーーー!!
「珍しく取り乱してるわね?」
「自分自身にケンカ売られるとか、どんな気分でござろうか?」
まずは犯人の動機を推理よ!相手は私なのだから、きっと読めるはず。ニュータイプじゃなくても、自分の心くらいは読めるでしょ。未来探偵コンナアの気分で推理するのよ!
「えーっ、人という字はぁ、支え合っている様に見えますかぁ?あー、私にはそうは見えません。疲れたら一休みですよー?慌てるSEは給料が少ないのです。ふんにゃあああああああ!!分かるかっ!!」
私、ミステリは嫌いじゃなけいどね!?自分で推理するのは無理だよ!!
「壊れちゃったナリ」
「お嬢様?時をかける能力で見て来ては如何か?」
「ソレだ!」
一番理解出来ないのは自分自身の事なのよ。推理しても分かるワケ無かったわ。こうなったら、魔法を使って力技で解決してやる。真実はいつも70億くらい!
むーん?最初のイベントはどこだ?どこまでが一連の流れになるのー?まずは、ニセ魔王が発生した当時の、魔界に行ってみようかね?いつ頃なんだー?あれは。
ひとつ、ふたつ、みっつ、今何時だい?9時でやんす。じゅう、じゅういち。何だか違う気もするけど、座布団下さい。
「魔王様をお呼びしたのはご相談がありましてー」
「何かな?悪事の相談ならいくらでも乗るよ。僕は魔王だからね」
魔王にーちゃんの存在にピンを打って飛んできたら、居酒屋に来たよ。怪獣酒場なので、私の存在が店の飾りに紛れてますね。これは好都合。
「ヨコハマの統治をなさっているとか?」
「ああ、そうね。妹に押し付けられてね。でも、地元民の自治だからね、これといって何もしてないよ」
「これはー、私のひとりごとなんですがー、ヨコハマの廻船問屋の株をですねー、大量に買いましてー」
「あ?そう。偶然だね。僕も大口株主になったよ」
このバカ兄貴、インサイダー取引してたの?
廻船問屋を優遇する条例が急に出来てたけども。こういうこと?
なんて小さいの、これが魔王のやる事なのー?こいつを先に暗殺しておこうかしら?
「はっはっはっ。お前らの悪事は、ぬるぽっとお見通しだー!」
「がっ!?ぬいぐるみが喋った!?」
あ、しまった。こんな小物を相手にしてる場合じゃないのに、ワロス回路が発動してしまった。
「はあ、ちょっとにいちゃん」
「なんだ、ニャアちゃんか」
ぬいぐるみを脱いで、にーちゃんの隣に座ります。
「あ、おまえは失せろ。つまらんことに兄を巻き込みやがって。ころすぞぼけ」
「あ、はい。すみません」
魔界でも私の最強伝説は知れ渡っているので、市長は大人しく帰りました。今夜は、アイツのツケで飲み食いしていいそうです。
「ニャアちゃん?言葉遣いがひどいよ?」
「おねえさーん!おにいさんでもいいけど、ビールじゃんじゃん持って来てー!」
「あの未成年なんだから、ね?中身はどうだか知らないけど。ビールはね?」
「あ?おまえが飲むんだよ」
「ええー!?」
私は、ヨコハマ名物のシウマイをもしゃもしゃと食べながら、魔王にいちゃんにガバガバと酒を飲ませます。こいつ、魔王というだけあって強いな、ちっとも酔わないよ。
「にいちゃん?ヨコハマの廻船問屋はね?」
「なんだい?」
ダメだ。未来を教えたら、それこそインサイダー取引だわ。ヨコハマの廻船問屋は、下請けイジメ、検査記録の改竄、幹部の横領、それらが全部バレバレになった挙げ句、派閥争いに躍起になって何も対策をしなかったから、株価暴落どころか、潰れるんだけど。ああ、このバカ、まさか国庫の金に手をつけちゃったんじゃあ?ハイパーインフレの原因はこいつか?
「はあ、まあいいわ。酔わないんなら、それでもいいからライブハウスに行くよ」
「え?僕の家に来てくれるの?」
「はあ?違うよ。お前の家なら燃やしに行くよ」
「ええー?何なの?冷蔵庫のプリンを勝手に食べちゃったから怒ってるの?」
「いつの話よ、それ。プリンなんかどうでもいいわよ。ほら、早く行く」
「僕の妹がこんなに鬼なワケ、はあるなあ」
ライブハウスに来てみると、ここが自分の家なのだという。ワンルームマンションは家賃滞納で追い出されたそうな。それが、魔王のやることー?
「今は、ここの控室に寝泊まりしてるんだよ。ほとんどヨコハマの領事館に居るしね。魔界の自宅は無くても困らない」
「ほんと、自宅に居着かない人だね。村の方にもまったく帰って来ないし」
魔王は、クラブチッタみたいなライブハウスに棲み着いているそうです。こんなとこに居るから、ニセモノに乗っ取られるんだよ。
「何か研究してるって聞いたけど?なんなの?一応聞いてあげるよ」
「そんな事言ったっけ?えーっと、この箱なんだけど」
「箱?」
魔王兄が研究していたものが諸悪の根源じゃないかと疑っているのだけど。
バカ兄貴は、ゲーム機みたいな箱をせっせとセッティングしてますね。ナニソレ?




