6-6. 不明資産
「ここの古代ロボッ娘は何体あるの?」
「2001台でございます」
デジャビュかしら?
マチダの家電量販店の地下倉庫に謎の不良在庫として、多数の古代ロボがありました。サイズはニンゲンと同じ。もしかしたらAI搭載のRシリーズなのでは?
「僕の兄妹ではないですね」
「私のデータベースにも、兄さん以外の姉妹機は記録にありませんよ」
アールくんも、ミクルちゃんも知らないと言っています。こいつらの号機はハッタリかしら?型番みたいなものかな。しかし、知らないからと言って、存在しないわけでもないよね。
リプレイス案件で、謎のシステムを発見した感じ。資産台帳にも載っていないサーバ群って、リプレイスの必要あるの?判断出来なかったので、顧客の担当者と共謀、いや合意の上で見なかった事にしました。あのサーバ群は、今でも人知れず稼働しているのかしら?
「破壊するのが確実かしらねえ」
「魔界の地下にあるやつは、一切の自立行動はしないようでござるが。こいつらは分からないナリ」
「特定周波数の大音響を聞かせると、一斉に蜂起して暴れ出すとかありそうで、こわー」
「うーん、ここの立体駐車場とか如何にも方舟って感じじゃもんなあ」
しかしですよ。システムエンジニアというのは機械に感情移入してしまうのです。AI搭載となれば、尚更破壊するのは躊躇します。その一方で生きた魔女をダース単位で始末してますけどね。我ながら、自分の情緒が理解出来ませんわ。
「問題は、ここが見事にサガミハラとアハトプリンの国境だって事でしょ?」
「なんで、国境の上に店舗建てちゃうかなー」
「固定資産税とか、どっちに払ってんのかしら?」
「表玄関がある方とかじゃないの?」
「固定資産税は面積の広い方、法人税は登記次第、とかじゃなかった?」
「んー、国境の真上じゃもんなあ。ここで破壊活動はダメでしょ」
古代兵器を不良在庫として抱えてるだけあって、この家電量販店タダモノじゃないよ。敷地のど真ん中が、サガミハラとアハトプリンの国境なのです。固定資産税も法人税もサガミハラに払っていると言うので、一応はサガミハラにはなるけどね?私達と商談中の店長もサガミハラの住人です。
「それ全部買い取ってくれるなら、ポイント10倍お付けしますよ」
「ポイント10倍って実質タダでござらんか?」
「倉庫の維持にもお金がかかるんです。でも、無料配送とかはしませんので、全部持ち帰って下さいね」
さすがサガミハラの商人。ここも今では24時間働いて死ぬヨコハマの領地なので、金になるなら命だって売りかねないのです。家電量販店の店長の即断即決と裁量が優秀過ぎるわー。私達は、ヨコハマの通貨を1000兆円も持っているしね、コレ買っちゃうー?
「こういうお店って、ポイント分以上、買い物しちゃうのよね、きっと。まんまと乗ってあげるわよ。コレ頂戴な」
「ありがとうございます!ポイントカードお作りしますねー」
10兆円が全部、ポイントに変わりました。店の在庫買い占めできちゃんじゃないのー?え?インフレが加速したから、そこまでじゃないの?あ、そう。道理で投資に回してる分が、倍プッシュで増えているわけだわ。
購入したロボッ娘達は、私の圧縮魔法で、ZIPファイルかTARボールの如く、一個にまとめてー。
「なんじゃこりゃ。重くて運べない。これは魔力的な質量が高いっぽい」
「ここに地下鉄通しちゃいますー?お嬢様」
「そんな気軽に?そうしようか」
「いっそ、電源入れて自前で移動させてみたら?」
「ほじゃーの?いずれはやる事じゃけ」
ぶいーん、ぶいーん、カリカリカリ。ごーごー、がーがー、びよんびよんびよん。
魔暦前のPCとアナログモデムの組み合わせみたいな起動音してる。さて、どうなるのかなー。
「わらわを起こすのは誰じゃ」
「ニャアちゃんじゃ」
「そうか、お主をわらわの主と認定した。ご命令を、お嬢様」
なんだコレ?チュウニ回路搭載してないかい?やっべー、おもしろすぎる。従者なのに一人称がわらわって、どういう身分の設定なの?敵国に捕まってメイドにされた王女とか?ありゃー、それは滾るわー。
「ねえ?もしかしてあなた、この軍団のリーダー役なの?」
「如何にも。自律行動可能なアンドロイドはわらわだけ。他は、ロボットである」
「なるほどー?何が出来るのでござるか?」
「お給仕および家事全般、破壊活動、侵入工作、足軽、なんでも可能である」
「おい、すげーなこれ」
「器用貧乏だよ、きっと。アンドロイドはアールシリーズこそ最高峰」
「ふむ?アールシリーズであるか?アンドロイドはそなたらが最高峰なのであるな?学習した」
「あ、やばい。こいつまっさらじゃ」
わらわロボを緊急シャットダウンしました。手順間違ってたら、もう壊れたなコレ。しかし、妙な事を学習させるわけにもいかぬ。人類滅ぼしてー、って言ったらやっちゃうかも知れない。
「なんていうか、あれよね?エッチな目的で使う人形みたいな質感よね、こいつら」
「なんでも可能と言っておりましたが、エッチな機能もあるのでござろうか?」
「そういう視点を持ち込むのはやめようよ」
マヌケな感じのじゃなくて、割とリアルな造形のやつね。むかし川崎のウェアハウスの1階に展示してた感じの、って言っても知らんだろうけど。
ちらっ、ぺろんっ。スカートを捲って、パンツを下ろしてみたよ。
「ひどい絵面でござる。6歳幼女が何をしているのか」
「ほんとねー。おいなりさんよねー」
「おりなりさんって何?」
おりなりさんとは大変な変態さんの事じゃ。私のことを言っているのならば、否定は出来ぬな。
「大丈夫じゃ。何が大丈夫なのか知らんけど。そういうパーツは無い」
念のため、他のも数体検査してみたけど、エッチな機能は無かったよ。考えてみれば、そんな機能があるなら、とっくに売れてるよね。家電量販店で販売していいのかは、ともかく。
「地下鉄の駅を、この下のフロアに設置したよー。店長も喜んでますよー、ポイント沢山もらいました」
「仕事はやー」
アールくん配下のロボコン軍団に頑張ってもらって、2000体のエッチな雰囲気のロボット達は、地下鉄の客車に乗せて、オタマ村のすっとんとんビル地下倉庫まで運び込みました。
「エッチな気分じゃないので、しばらく封印しよう」
「そういう気分で整備するつもりなの?」
「あ、そうか。そういう問題じゃなかったわ」
でもなあ。絵本の読み聞かせから始めて、100年もかかるんよ?ディープラーニングは気合と根性なので。時をかける魔法を使うから、第三者の観測では一瞬だけどね?
「アールくんのAIで学習データ作ればいいいんじゃないの?」
「ソレだ」
アールくんとは違うキャラづけをして、数時間でわらわロボは、ずんだ餅の妖精さんに生まれ変わりました。
「著作権とか大丈夫なの?」
「それなあ」
ちょっと考え直そうか。個人利用の範疇なのかといえば、そもそも異世界じゃからして?でも、ライセンスのタダ乗りはいけません。どこの現場でも平然と大なり小なりやらかしてるけどね。
「ガガピー。アタイの名前をつけるナリよ?」
「拙者のナリは禁止されるでござるか?」
「そういう事で」
キャラ付けは、稼働させながら調整していくよ。分かりやすいのが、コレというだけでね。自分でも勝手に学習するでしょ。チュウニ回路内蔵しているし。
「名前考えてあるの?お姉ちゃんは名前に拘りがあるみたいだけど」
それなー。この世界の住人であるミーナちゃんは固有名詞に拘る習慣が未だに無いけど。日本のシステムエンジニアは、命名には拘りますよ。
「ネルネルネルネ、うーん、これじゃないー。あー、どうしよー」
「考えてないじゃん」
「キナコよ。あんたはキナコ」
「はい、アタイの名はキナコです。お嬢様」
「はい決まり。キナコ餅食べに行きましょ」
タオルくんも商人の娘なので、即断即決なのです。今食べたいもので命名しちゃいました。
「おやつを食べ終わったら、マチダの家電量販店に行ってみましょうよ」
「んー?何か欲しいものであるの?」
「もう縦ロールに飽きちゃったから」
「んー?縦ロールになーるの対抗薬探すの?無いんじゃないの?」
「行ってみれば分かるでござる」
タオルくんを生涯不変の縦ロールにした薬は、古代文明都市の家電量販店で入手したのだ。今の家電量販店にあるかなあ?タオルくんの縦ロールは、魔法の力でも、科学の力でも解けないのです。どうなってんのかしらね?
キナコも連れて、地下鉄でマチダの家電量販店まで来ました。店長自ら案内してくれています。コレは何も買わずに帰るのは厳しいよ。
アールくんとミクルちゃんには、キナコ以外のロボの検品作業をしてもらっています。
「ツインテールになーる?これはアタイのデーベースにも無いナリー?」
「おふぅ、なんであるの、こややし製薬の薬品が」
「あ、ニャア様。こちらも謎の在庫でしてー。手に取る方は居られても、まったく売れません。どうですかね?ポイント12倍で」
それもう、価格よりもポイントの方が上じゃん。客で人体実験する気なのー?まあ、この街をこんなにお金至上主義にした責任は私にもあるかなあ?
「ツインテールは要らぬでござる。それは悪魔の象徴」
「そうねー。無難なストレートヘアになーるは無いのねー」
「あ、コレは?アフロになーる」
「いいでござるな?」
「洗うの大変じゃないの?いや?泡立ちが良さそう?」
「拷問に使える気がするから、全部一個づつ頂戴」
「ありがとうございます!」
こややし製薬の髪型改造薬、一通り買いました。ちょんまげになーる、とか案外需要あるかもよ?
タオルくんは、アホ毛はえーる、の服用を始めました。彼女のヘヴィメタルメンタルには私も叶わない。縦ロールとアホ毛がセットになるんじゃないの?ん?以前に飲んだ薬の効果は永遠に失われます?ほほう、こややし製薬なかなかやりおる。
そして、家電量販店のポイントは30兆円分に増えました。ナニコレ、どういう事?
「あ!」
「なしたの?」
マチダに行った目的忘れてる!国王の暗殺を企てた組織の内偵だったじゃん?




