6-5. ブラックボックス
国王にーちゃんが暗殺されました。
私とニーナちゃんが搭乗した古代ロボで、ショーナンの魔女を殲滅したというのに。マナカナ吸引回路で魔法を無効化させた海岸の魔女共を、赤ピクミンを水没されるが如く、あるいは青ピクミンを焼き払うが如く殲滅させて、ショーナン地方一帯を国王に献上してやろうと思った矢先。そんな戦勝ムードは一瞬で吹き飛びました。
妹達が、えげつない事しているから、兄である国王が代理で天罰を受けたのかしらね?
カワサキ帝国の首都までは地下鉄は通していないので、ガーゴイル型古代ロボに搭乗して首都まで飛んで向かいます。
実証実験というかブラックボックステストを更に重ねて、羽根のついた古代ロボはマナカナ吸引回路を動作させれば飛ぶ事が分かりました。ガーゴイルみたいな魔獣の形をしているので、ガーゴイル型と呼んでいます。
マナカナ吸引回路さえ動かせば、魔法的な力により、コクピットの乗員を保護出来る事も判明しました。古代ロボは、科学と魔法のハイブリッド兵器だったのです。
何に使うものなのか不明なシステムというのは、大きな会社だとひとつやふたつはあるものです。
私も、システムエンジニア時代に、そういう謎システムの解析をする業務をやった事があります。仮説を立て、コマンドを送り込み、返ってきたアウトプットを精査する。仮説と異なる出力だった場合は、辻褄の合う別の仮説を立て、またテストする。この繰り返し。そうやって三ヶ月かけて機能を調べたシステムは、テスト工程の人件費を10分の1に圧縮出来る自動化ツールでした。派遣三ヶ月分の費用で、それだけの成果が得られたのですから、ボーナスくらいくれてもいいのにね?派遣にボーナスはアリませぬ、ぐぬう。その代わり成果がたとえゼロだったとしても、ちゃんと働いた時間分のお時給は貰えます。
「あいつはサイコロの出目がいじれるだけの、ただのニンゲンなのよね?」
「うん。不老不死ですらないよ」
古代ロボには通信装置が非搭載なので、搭乗中は、魔法的ゆんゆん通信の出来る、私とミーナちゃんしか会話出来ません。なので、1台のガーゴイル型に2人搭乗してます。ガーゴイル型は複座機なのです。私とニートン、ミーナちゃんとタオルくんの組み合わせです。
ただしシートは6歳幼女サイズなので、タオルくんとニートンを魔法で6歳児にしてやりました。どんな副作用があるのかは知らぬ。草生えるわー。
アールくんとミクルちゃんも、おままごと人形サイズのボディで同乗しています。彼女達はロボの操作系統に直結出来るので、ロボの操作をAIで補完出来るのです。AI補完した時の性能は、実に5倍のエネルギーゲインです。エネルギーゲインって何なのか知らんけどさ。ま、そんな感じって事よ。
私の方にアールくん、ミーナちゃんの方にミクルちゃん。これはもうアレよ、あんまりストレートに言うとパクリじゃんって思われそうだけど、ファティマを載せたモーターヘッドですよ。モータヘッドと違って、古代ロボには一切の自我が無いけどね。古代ロボは、完全に純粋な作業機械なのです。
「首都上空だよー。何処に着地します?お嬢様」
「王宮の中庭に降りて。アールくん」
「ぼろんっ。承知しました」
王宮と言っても、まるでラゾーナ川崎なんだけど。中心の円形の広場に古代ロボを着地させます。魔法的エフェクトで、周囲へのダメージもありません。こんなものが敵対勢力の手に渡ったらマジ死ねる。もし他にもあるなら、早く探して独占するか、破壊しておかないと。あぁ、こんな時に、国王が暗殺されるなんて!
「なんか魔界とソックリね?首都カワサキ」
「名前の通りでござる」
この世界に創造主がもし居るのならば、それは私なんじゃないの?それくらいに、この世界は、私のよく知っているもので構成されています。まさかね?
「にーちゃーん?生きてるー?」
「ははっ。妹が見舞いに来てくれたから復活だよ。エネルギーゲイン5倍だよ」
「相変わらず、シスコンっぷりがきもいわねコイツ」
「ミーナちゃん、何でも素直に言ってはいかんでござるよ」
「え?ツンデレだよね?違うの?」
国王にいちゃんはアライブでした。余談を許さぬ状態だったそうだけど。文字通り妹が来たので復活です。だって、超絶技巧治癒魔法を行使したからね。脳死以外は救えます。人格変わっていいなら、脳死からでも復活できます。絶対にやらんけど。
「ショーナンは切り取ったから、統治とか事後作業はよろしく」
「事後作業って言うかな?ソレ」
「軍事的な制圧はまだでしょ?」
「そういう事かい?じゃあ魔王兄さんに頼んでヨコスカ海軍を出してもらおう」
そう言うと国王にいちゃんは、スマホで魔王にいちゃんにチャットで依頼しています。出前感覚で他国に軍事侵攻してるわー。にーちゃんズと私達が使っているスマホはミーナちゃんが構築したものなので、他国が盗聴などするのは非常に困難な上に、対地攻撃人工衛星のネットワークを利用しているので、惑星上の何処に居ても圏内という優れモノ。こんなもの敵対勢力には公開出来ませんね。以前、魔法の一種として公開していたネットワークとは完全に別モノです。
ショーナンなんて海岸以外は無価値なので、ヨコスカ海軍に海岸を焼かれてしまえば、それで終わりでしょうよ。ショーナンの事はもう片付いたと見ていいね。少なくとも、私達の手は離れました。
「しかし、国王を狙った暗殺って、誰が仕組んだのかしら?」
「んー、実行犯は捕まえたから、そのうち自白するとは思うけど」
「こんなんでも私達の兄さんよ?歯向かうおバカさんは許せないわね」
「拙者達で自白させるでござるかー?」
「え?任せていいのかな?どうやってもいいよー」
よっしゃ、国王の許可を得たよ。ミーナちゃんが言う通り、こんなんでも私達の兄です。血の繋がりだって異世界を通じてあるのかも知れません。私とミーナちゃんが、そうであるように。ミーナちゃん以外に、血族が居た記憶はないけどね。繋がりは時系列通りとは限らないので、何があるかは分かりませんよ。何しろ、「おととい来やがれ!」を慣用句じゃなくて、実現可能な存在が居るからね。私とか。
「さすがは、どこかの世界の王国の近衛騎士ね」
「完全に頭がパーになってたけど、全部吐いたんじゃないの?」
「僕のAIで検証しても、自供した内容は99.9パーセントは事実ですね」
「王女殿下を暗殺しようとする勢力が絶えませんでしたからな。拷問マニュアルが整備されていたでござる」
ニートンが「見ない方がいいでござる」と言うので、何を施したのか、私達は何も見てませんが。暗殺の実行犯は、知っている事を全てを自供しました。ただし、所詮は実行犯。何でも知っているわけがないし、知っている事が事実とは限りませんね。
「黒幕はマチダに居るのかー」
「マチダといえば、カワサキなのかヨコハマなのか、それともアハトプリンスなのかよく分からない町よね?」
「プリンスの複数形ってプリンシズでござろう?アハトプリンシズなのでは?」
「噛みそうじゃけ。アハトプリンでええかな?」
「アハトプリンは、敵対国家よねえ?マチダに手を出して黙っているかしら?」
都合よくマチダかアハトプリンに古代遺跡があったりしないかなー。




