6-4. 実証実験
「ここの巨大ロボは何体あるの?」
「魔界地下に格納された古代ロボは、全部で221体だよ」
川崎市にそっくりな魔界の地下には、古代文明の遺跡がありました。
ロボ軍団です。これがあれば世界征服出来そう。川崎市でいえば、地下駐車場と地下街がある辺りですね。入口はライブハウスの地下に隠してありました。
「これを発見した経緯は、ニャア殿の報告書で読んだでござるがぁ。よく分からないナリ」
「ひどい報告書だったわね。5W1Hを全て整えろとは言わないけど、てにおはすら怪しかったわ。時系列もグチャグチャだし。第3版まで改稿させて、やっと何とか分かったわ。5544文字もあったけど。あんた、本当にSEなの?小学校からやり直したら?」
「ぶひぃ」
あの報告書につては、異論も反論もない。私自身、読み返してもワケが分からないもの。
「魔王兄さんはコレ知っていたの?既に3体使っちゃったらしいけど」
「いや、今初めて知ってる。事後報告すら受けてない」
「えーっと、あれは魔界の侵略行為って事になるのかな?それとも帝国?」
「さあなあ?勝ってればまだしも、負けてるからなあ」
「国際首脳会議が臨時召集されてるんだけど、僕はどうすれば?」
「僕達の妹達が、こんなに武闘派なわけがない」
「新しいおもちゃを手に入れて遊んだだけじゃないかなぁ?」
おにーちゃんズが、頭を抱えてますね。ははっ。試運転と称して、ショーナンに攻め込ませたからね。由緒正しい巨大怪獣の如く海岸から上陸させてね。そして、あっさり、負けた。カマクラの古代ロボが倒された事でマナカナが回復し、今まで眠っていたご当地の魔法少女や魔女達が覚醒して、ショーナンの海岸に集まってウェイウェイとパーティしてたのです。なにその催し?私、呼ばれてないんだけど。呼ばれても行かないけど。魔女共を潰すつもりが、逆にフルボッコにされました。古代ロボを自爆させて何匹かは巻き込んだけどね。
「お兄様は墜落しました」
アンドロイドのミクルちゃんが兄と呼ぶのは、もちろんアールくんです。兄と言っても見た目は、美少女メイド人形だけどね。アンドロイドに性別があるのかは判断が難しいところ。
アールくんは文字通り墜落したのです。古代ロボに羽根が着いていたので飛ばしたものの、羽根は飾りだったらしくて。ショーナンの海岸にまっさかさま。あの質量のものが、薄っぺらい羽根で飛ぶはずもないかー、とは思ったけどね?あれはガーゴイル型では無かったかあ。墜落した古代ロボは、浜辺の魔女共の餌食です。
「ショーナンでの性能テストは失敗したから、仕切り直そう」
「そのテストに満足したら、ショーナンも何とかしてね?僕は、国際首脳会議に緊急招集されているから、行ってくるよ」
国王は国際首脳会議に行きました。魔王は、ニセ魔王のやらかしを片付けに行きました。ニセ魔王は、あちこちで無銭飲食してました。無銭飲食は、国によっては即射殺の大罪です。あれは、何をしたかったの?魔王の信用失墜が目的だったのなら、十分過ぎる成果だけど。
「お兄様、私と勝負しませう」
「いいよ。軽くひねってやらう」
実証実験のパイロットとして、アール兄妹が志願してくれました。
古代ロボに、二人のAIを直結。これで操作技術による差は出ません。同型の古代ロボ同士なので機体の性能の差も無し。これは、古代文明が作ったAIと、私とニャア大佐が育てたAIの対決とも言えますね。ミクルちゃんは以前のアールくんと違って汚染されていないので、再インストールはしていません。
魔界を中心とした半径1000キロメートルは荒野です。NASAが月面探査機のテストするのに使いそうな感じの。ここで、兄妹対決です。
「最初から、ここでテストすれば良かったでしょ?お姉ちゃん」
「ニャア殿は、ウェイ勢にムカついただけでござるよ」
「是非も無しね」
えー、いつも通り。戦闘シーンの描写はありません。兄と妹は互角でした。2台の古代ロボは、どちらも大破しました。
「アールくんに、格闘技術は学ばせてないでござるか?」
「うん。私もニャア大佐も格闘技とか興味ないから」
「もったいないわねー。あんたも全日や全女の全盛期に日本に居たのでしょう?」
「まったくね。あれはリアルタイムで見ないとね。今、動画見ても盛り上がらんわ」
初代タイガーマスクの空中殺法なんかは、今見えても、はえーすげー、って驚きだけども。当時の興奮には及ばないかなー。ランディ・ローズの凄さだって、当時じゃないと分からん、と、伊藤政則が言ってたけど、まさにそんな感じ?違うかな?
妹のミクルちゃんも、格闘技術は学んでないようだね。ニセ魔王を破壊した時も、ただひたすら金属バットでボコっただけだし。
「僕達は、メイドロボだからね。お給仕が得意だよ」
「理系だからね。自分達のボディをメンテナンスするために、科学技術だけはあるよ」
どっちも戦闘向きではない、と。それは、よく分かった。
「ショーナンの魔女共には、魔法幼女を直接ぶつけるしか無いでござる?」
「もしくは、古代ロボのマナカナ吸引回路だっけ?それを全開にしていけば?」
「あー、それなあ?私とミーナちゃんも無力になる両刃の剣だからねえ」
「ここの古代ロボは遠隔操縦が無理で、中に搭乗する必要があるものね。私かニートンが乗ると、振動でグチャグチャになるから、魔法幼女でもないと乗れないのにね」
「僕と妹が、古代ロボを架装して行くしか無いかな?」
なんとも中途半端な仕様なのだ。魔界の地下で発見した古代ロボ軍団は。んー、何か見落としがあるのではー?魔法の事は、魔法幼女自身にも不明な事が多いのです。
ミーナちゃんと異世界転生した時だってそう。死んで異世界転生する場合、体は別物になるのだけど、それまでに習得したスキルは引き継げるはずのなのに、あの時は二人とも魔法が一切使えなくなってた。何故なのか?あの世界にはマナもカナも無かったから?でも、こっちの世界に転移してからも、魔法は使えなかった。
マナとかカナって何なの?それを最初に言い出したのは誰だっけ?だいたい、マナはともかくカナって何よ?そいつが駄ボラこいてる前提で考えるとー?
「よし。分からん時は、実証実験だよ。マナカナ吸引回路を全開にして再テストだ」
まずは、この荒野で実験です。私とミーナちゃんとで、模擬戦をしましょう。
アールくんとミクルちゃんに補助で同乗してもらいます。ぬいぐるみとか、オママゴト人形サイズなら、コクピットの隙間にも入ります。万が一の時は脱出装置を起動しもらうのです。
「このロボのコクピット狭いのよねえ」
「6歳幼女の私にピッタリフィットじゃけね」
「あ、そうか。私も6歳幼女になればいいのか。ほいっと」
え?そんな自由にトランスフォーム出来るの?まるで魔法少女じゃん?いや、魔法少女そのものか。ミーナちゃんも6歳幼女の姿になりました。ジャージとパンツがブカブカなので着替えました。
「考えてみれば、マナカナ吸引装置は逆転も出来たのよね」
「ほじゃーね、見落としてたわ」
マナカナ吸引回路を作動させると、外気から吸引したマナカナをコクピットに充満させる事が可能だったのです。これって、対魔女兵器の究極なんじゃないの?敵の魔法は無効化して、こっちの魔法は最大化できる。やっべー、敵対勢力の手に渡ってたら、死んでた。
「ねえ。別にフラグ立てるわけじゃないけど。他にも同じようなロボが眠った遺跡があるんじゃないの?」
ありえるわー。トレジャーハンター編に突入ですわー。




