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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
6.要件定義書 ~もはや神話ですわー~

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6-3. デッドライン

2025/2/24 18:48 大幅に加筆修正。5544文字あるけど自信はありますん。どうか最後まで読んで下さい。

「ふっひぃ。おほわぁ。ぼじゅるあああぁ」

「お姉ちゃん、うるさい」


 私とミーナちゃんは、お風呂に入っています。お風呂もフリーだからね、この国は。やる事がない時はお風呂です。魂の丸洗いです。

 元女神のお姉さんは酒盛りをした後で、ライブハウスに収監されました。お金も無いのに、有料コンテンツのビール飲んじゃうから。

 どうあがいても明日は来るのです。ならば、どうにもならない時は、風呂に入って寝るだけよ。


「貴重な戦力が奪われてしまったのだけど、どうする?お姉ちゃん」

「ふふーん?お風呂で脳みそがほぐれて、いいこと思いついたもんねー」

「どうせ、ろくでもないんでしょ?」

「ぶひぃ」


 元女神のお姉さんよりも強力な戦力に心当たりがあります。全てを理解して、味方になるであろう、そして何よりも、魔法幼女の私達と、この時間軸では関わっていない、そんな唯一無二の存在が。


「R9821号を起こしましょう」

「ああ!ソレだ」


 ふふん、今の私は血の繋がったリアルお姉ちゃんなのです。ミーナちゃんが思いつかない事だって、思いつくのです。今までアールくんの妹を起こさなかったのは、この日のためだよ、きっと。知らんけど。


「たーのもー」

「どうするの?私達だと、この扉開けられないよ?生体認証だから」


 うーん。地下鉄に乗って、アールくんの秘密基地まで来たのですじゃがー。入口の生体認証を突破出来ません。魂認証にしておけばー。ぐぬう。一連のトラブルを解決したら改良しましょうか。


「ガガピー、ポピー!アイコトバ、ワ?」

「はれ?えーっと、合言葉?何かあったっけ?」


 入口脇のペッパーくんみたいなロボもどきが、急にこっちを向いてカッと目を光らせて、ロボ音声で聞いてきました。なんかコエーよ。


「僕達ノ大祖先R28号ガ、大好スキナご飯ワ?」

「ご飯。白米を炊いたご飯」

「ククッ、魂の繋がりを確認した。入るがいい」


 いやー?そんなん基礎中の基礎じゃん。誰もでも入れるのでは?セキュリティが、なっちょらん。


「やあ、待っていたよ。僕はR9821号。アンドロイドだよ、ロボットじゃないよ」

「あ、うん。知ってる」

「状況は把握しているよ。早速、魔界に乗り込もうか」


 基地の中に入っていくと、アールくんの妹、R9821号は既に起きていました。なんだ、さっきの入口の認証は、ただの茶番かあ。どういう理屈なのか、事情を全て察していますよ。

 彼女は、ぬいぐるみ型アンドロイドですね。それもママゴトサイズの。シルバニアファミリー?かわいいんだけど、これは戦力としては頼りにならんのでは?


「えーっと、なんと呼べばいい?あーるきゅうはちにいいちごう、は長いんじゃけど」

「うーん?熱々のおでんは好きかな?」

「うん。熱過ぎると無理じゃけど。猫舌なので」

「じゃあ、オデンちゃんとでも呼ぶ?お嬢様の好きな食べ物でいいよ、今名付けて」

「ほいじゃあ、オハギ、いやチョコレート?うーん」

「なんで、そこで悩むのよ。お姉ちゃん?」

「ミルクちゃんで!ミクルちゃんでもいいな」

「登録した。僕の呼称はミクルちゃんだよ」


 ミクルちゃんは、戦闘力高そうなサイボーグ戦士風にボディを換装すると、私達にもギリースーツと、怪獣のぬいぐるみを着せました。ククッ、コレで暴力的には、ニセ魔王とも対抗出来そう。


「これは、いつかの砂漠作戦で着たヤツ!これを着たアタイはガッチャピン!食べちゃうぞー」

「じゃあ、私はムックなの?これは巨大怪鳥だった頃のボンジリから抜けた羽で作っているのかしら?」

「そうだよ、スーパーレアアイテムで編んだギリースーツだよ。ガッチャピンは、アマテラスの抜け毛で作ってあるから。これだけでも加護はあるよ」

「うーん、なんかニートンくさいけど。まあ、いいか」


 サイボーグ戦士ミクルンルンを連れた私達は、ガッチャピンとムックになって、地下鉄に乗って魔界を目指します。ガッチャピンの魔界チャレンジ編!はっじまるよー!


「魔界に侵入出来るのかなあ?さっきは、ぬるぽっと入れたけども」

「がっ!と行けばいけるよ」


 ちゃんと根拠はありますん。

 さっきお姉さんが「今の私達には何の力も無い」と魔界で言ってました。魔界もマナとカナが枯渇しているんじゃないの?マナとカナが枯渇しているから、魔界の結界が動作していないのではー?


「なんてこと。私のお姉ちゃんがこんなにカシコイわけがない…」

「まあ、これまでの言動を振り返ると、是非もなしね」

「そうか。私達、マナもカナも無い魔界で、怪獣ごっこしちゃったんだ」

「そりゃ、死ぬわ」


 私達が死んで異世界転生した謎も辻褄が合うね?マナもカナも無い魔界に居たので、魔力袋が空っぽになって、魔法の使えないただの頭のオカシイ幼女になっていたのですよ。

 大怪獣大決戦ごっこは、幼女の遊びとしては過激ですからね。魔法幼女にとってはママゴトだけども。


 というわけで。

 私達は、無事魔界に潜入出来ました。予想通りね。川崎市川崎区でいえば、クラブチッタがある辺りまで、のっしのしとやって来ましたよ。実際に、ライブハウスがあるわー。定食屋じゃない、本当のライブハウス。


「寄って行かない?シヴァサタンのアンセムーンだって、今日のヘッドライナー」

「そんな、パチモンみたいなの、今度でいいでしょ。きっと毎年来てるわよ、そのバンド」

「それよりも、僕達注目を集めてますよ?コレは計算通りなの?魔王の城を目指さないの?」


 そりゃそうでしょ。町中でギリースーツと怪獣のぬいぐるみが、フランソワーズみたいな戦闘サイボーグ連れて歩いているのだから。注目されるに決まってるじゃない。あと、魔王の城なんて無いし、魔王の住処については、一度も行った事ないから場所を知らない。確かこの辺りの、ワンルームマンションのはずじゃけどもー?


「僕はサイボーグじゃないよ。アンドロイドだよ」

「どっちでもいい。我が領土に何か用か?ガラクタが」

「あっさり釣れたわー、ニセ魔王が」


 ほら、来たわ。獲物が。はい、ミクルちゃんおにゃしゃす。暴力のお時間ですよ。アンドロイドの破壊力を、このバカに見せてやって。


 がっこん、ぼっこん、どっかん、ばきーん!

 どて、ぽき、ぐしゃ


「完全に沈黙ね?」

「魂のレベルまで物理で粉々に粉砕してやりました」


 ミクルちゃんは、おっぱいミサイルとか目からビームとか撃ちそうなのに、金属バットでボコボコにニセ魔王を物理で攻撃しました。粉々です。毎回戦闘シーンが、3行以下しかありませんね。戦記向いてないんですよ、私。


「これが最後の古代ロボなのかな?」

「最後じゃなくて、最初に倒された古代ロボだね」

「あ、そうか。カマクラ戦争はまだ先の話よね?」

「そう、ニヶ月も先だよ」


 こいつがニセ魔王になりすました経緯と目的は謎のままですが。魔界の危機は去りました。ただし、これが私達の復活コンフュージョンにどう繋がるのかは分からないわね?


「あっ!うえぃおおおお、げろーりーでいずっ」


 魔界の結界が発動したのでしょう。私達は、地下鉄のホームまで不思議な力で強制送還されました。まあ、これで間違いなく、魔界のマナカナは復活したってことよ。

 あれ?ニセ魔王を倒したのは早まったんじゃないの?魔界のマナカナが復活しちゃってたら、魔法幼女の私達は死んで異世界転生することがない?

 過去改変されたのだから、今の私達の存在は自然と、元のボディに還るのではー?あれー?まだ、これもシナリオ通りの範疇ってこと?


「ミクルちゃんは、まだ中に残っているけど?」

「あれはニンゲンじゃないから、一度入ってしまえば結界には弾かれないのね?」

「試しに、私達も戻ってみようか?」


 なんと、もう一度魔界に戻ると、またしてもヌルボのガッと侵入出来てしまいました。マナカナがまた消えている?


「あ、お嬢様。僕は見つけたよ」

「何を?」

「地下に未使用の古代ロボ軍団が眠ってた」


 おおう。試しに一台起動してみたと?ということはー?そいつをシャットダウンすると?

 うん、予想通りだね。地下鉄のホームに強制送還されたわ。


「あとは、コンフュージョンの実行手段かなあ?」

「うーん。とりあえずニヶ月先まで待つ?こっちの世界の私達は、異世界から来た幼女姉妹になんて会ってないものね?」

「つまり、魔法幼女の私達が、怪獣ごっこをやって死んだ直後を狙って、コンフュージョンをする?でも、どうやって?私達には魔法は使えない」

「ミクルちゃんの魔法の様な科学力を使うしかないね?」


 ミクルちゃん、なんか作れる?テーテッテレーっと。魔法の様な科学力で、同じ魂を持つ、ふたつのボディを一体化するような何かを?この際、座薬でも何でもいいよ。


「ナノマシン薬を作りましょう。あんたがあたいであたいがあんたになーるー、を」

「それは、入れ替わり薬なのでは?」

「ちょっと違いましたね?」


 はてさて、どうしたもんか?


「拙者のDNAからコンフュージョンを可能にする因子が採取出来ると思うナリ」

「へ?ニートン?」


 オタマ村のお風呂で、アイデアを練りながら、お湯につかっていると、ニートンがやって来て、オモシロイことを言い出しましたよ?


「貴殿らが、ニャア殿とミーナ殿であることは、異世界の姉上からお告げがあったでござる」

「ほっほう?」

「拙者と姉上は一体化していた時期があるナリ」


 あー、それでー?なんか、こいつ自分の事と姉の事の区別ついてない事多いなーって思ったら。ああ、そう?一体化してた事あんの?へー?こいつ不思議現象の宝庫ね?どうして自我が保てているのか、それが一番不思議。


 ミクルちゃんの魔法の様な科学力で、ニートンのDNAから一体化因子を抽出し、いつも通りに座薬を作って貰ったので、おしりのあなにぷちゅーっとインストールしました。


「これで、ニヶ月後に魔法幼女達が怪獣ごっこで死んだ瞬間に、コンフュージョンすればいいのね?」

「それが、最後の奇跡だね。一発勝負だわー」


 私達が行使出来るのはコンフュージョンだけ。失敗したら、時をかけることも出来ないので、やり直しは出来ません。最悪、もう一度死ぬ?いやあ、ないない。どこに転生するか分からないもの。また全裸で奴隷にされるような世界だと、もう自我が保たない。一度、楽園を体験しちゃうとね?

 やり直しも切り戻しも無し。リカバリープランも、コンティンジェンシー・プランも無しの、本番リリース作業に望むよ。手順書を作って、入念なリハーサルを重ねましょう。具体的には、毎日お風呂につかってイメージトレーンングです。要するに、ニート。ぶひぃ。


 さて、ついに約束の日が訪れましたよ。


 魔界村のマナカナが枯渇してないとタイムパラドックスが生じるので、マナカナ吸引機を、こっそり魔界に設置してあります。古代ロボを起動させると別の問題が生じかねないので、古代ロボをリバースエンジニアリングして作りました。

 振り返ってみれば、いきなりニセ魔王をボコボコにしたのは、後先を考えて無さ過ぎでした。結果的には、やつを倒したから地下の古代ロボ軍団が発見出来たのだけどね?こういう結果的にうまくいった成果を、成功体験にしてしまうと、ロクでもないシステムエンジニアになりますよ。私ですね。図に乗って、やらかします。


 ここで失敗したら、もう引き返せません。今回だけは、慎重にかつ大胆に、己を過信せずに遂行せねば。完全にコンティンジェンシー・ポイントは越えました。切り戻し不可、突っ切るだけです。元からそんなものは用意されてませんけど。後は、デッドラインしか残ってません。そこだけは越えてはいけません。一度越えたけどね。デッドそのもの的な意味で。


「うわー、露天風呂であんな技を。魔法幼女でもない普通の幼女なら、そりゃあどっちも死ぬわー」


 4メートルの高さの岩の上から、ギロチンドロップ!とんでもない大技を繰り出しました。あほですわー、ミーナちゃんは!ガクブル中野様ですか?まったく肉体を鍛えていない17歳じぇーけーが、6歳の貧弱ロリボディ相手になんてことを!?姉のあほなところだけ似てしもうたわ。ごっすうう!!うわー、見てるだけでも痛いわー。


「よし!今よ!」

「うん!お姉ちゃん!」


 私とミーナちゃんは、隠れていた岩陰から飛び出しますよ!


 そしてー。


「あっはあ、ふひいいい、うげろおおお」

「うるさいけど、まあいいよ。お姉ちゃん。生きてる証拠だわ」


 私達がコンフュージョンしたと同時に、ミクルちゃんがマナカナ吸引機を逆回転。悪魔の湯に沈んでいた私達は、温泉の効能と大量のマナカナの吸引とで、この世界に無事、魔法幼女として帰って来ました。

 ああ、温泉が久しぶりの魔法幼女ボディに沁みるわー。一度死んだボディだから、余計に沁みるわー。うむー?これは蘇生になるの?一体化したことで何とかなったの?謎は残るわね。ミクルちゃんが既に起きていた事も謎のまま、ニセ魔王の存在も謎のまま。ああ、まだ何か足りていない気がする。


 でも、まあ、最後の奇跡、一体化は成功しました。綱渡りとしか言いようのないプロジェクトだったね。よく、やりきったわ。


 今回の件で、ミーナちゃんとの絆が深まりました。血の繋がりも出来たけど、共にデッドラインを越えたからね。もう手戻りはコリゴリよ。

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