6-2. 手戻り
2025/2/24 17:43 なんかいろいろ分かりづらかったので加筆習性しました。
「お姉ちゃん、何してるの?」
私達は無事、カワサキ帝国のオタマ村に転移した。転生じゃなくて転移。
お家の庭で遊んでいたボンジリとアマテラスのもとに出現したのだ。しかし、インコと猫が遊んでる様って、見ててドキドキするね。パクっと食べちゃっても、インコのボンジリはフェニックスだから、大丈夫だとは思うけど。猫もドラゴンだし、フェニックスが口の中で炎上しても大丈夫だとは思うのじゃけどー。
今の私達は、魔法幼女ではないから、事故が起きても助ける事も出来ないんだよね。
「あ、いや。あまりにもするっと異世界編が終わったからね、呆けてしもうた」
「そうねー。私達の人生って、起承転結の起と結しか無い感じだもんねえ。もしくは、序破急の破だけ」
「そじゃあねー」
まずは、今何時?それを確認しないと。そうね、だいたいねー?
「ニュースで、おもらし王女の宣戦布告やってる」
ということは、異世界転生の2ヶ月以上前だっけ?私達が拉致される前日かな?
よし、まず第一の奇跡は起こしたよ。
「どうする?ここでコンフュージョンすると過去改変になるよね?」
「そうなんよねー。そもそも、どこでコンフュージョンしても、そうなるわー」
第二の奇跡はハードルが高い。私達と魔法幼女の私達が、コンフュージョンすることでしか、この世界に戻る事は出来ないのに、今コンフュージョンしても、いずれまた異世界転生してしまう。そもそも、私達には異世界から来た私達とコンフュージョンした記憶が無い。
「ややこしいわー」
「無理にコンフュージョンしなくてもこのまま別の個体として、この世界で生きていくのもアリかも知れないけど」
「とりあえず、お姉様に会いに行こうか?」
もし、この世界でただの幼女姉妹として生きて行くのであれば、神社のシスターかライブハウスのお姉様を頼ることになる。一度会っておくのは悪くないでしょうよ。
地下鉄はフリーパスで乗れるので、地下鉄でライブハウスまで移動します。といっても、村の人や観光客には解放していないのだけどね、この地下鉄は。
「地下鉄に乗れるから、魔界にも行けるね」
「お姉様は、今はただの不老不死のニンゲンだけど。魔王にいちゃんなら何か力になるかも?」
「あれこそ、ただのニンゲンでしょ?タワシが召喚出来るだけの」
「そうかー、そうじゃったー。なんでアレが魔王なのか不思議じゃわー」
先代魔王の養子になったから、とは聞いたけどね?そんなもんでいいのかなー?
ライブハウスにやって来た私達は、さっそくお姉様とコンタクトをとります。向こうから、話しかけてきたけどね。お姉様は、見知らぬ幼女を見つけると面倒をみてしまう習性があるのです。まあ、普通そうか。現代日本だと、見知らぬ幼女に声をかけると事案扱いだけどね。
「あら?あんた達、初めて見る顔ね?行く宛はあんの?」
「ういっす。魔界に父が居るので」
「へえ?あの子に子供なんて居たかしら?」
「いえ、おじいちゃん魔王の方です」
「あら?先代魔王はもう滅んだわよ。今の魔王は私の弟なんだけど」
知ってる。ちょっと余計な嘘をついてしまったかしら?まあ、いいや。うまくいけば、なんか変な子居たわね?で済むし。変な子なのは事実だしね。
「お腹空いてる?おやつ食べていく?」
「あざます。ほいじゃあ、おはぎをください」
「いいよ。ちょっと待ってね」
ミーナちゃんと、おはぎを食べながら作戦会議です。とりあえず、この世界に居れば、こうやって無条件で食料にはありつける事が分かったので、ひと安心ですけど。
「やっぱり、お姉様にも私達が分からないかー」
「タワシ男なら、分かるかもね?」
「あー、タワシと幼女ではまるで違うけどね?」
魔王に召喚魔法が使えるのは事実。その異能力をもってすれば、私達の事が分かるかも知れない。重度のシスコだし。
次は、魔界村に行きましょうか。確か、最近は魔界村で何か研究をしていたはず。研究なあ?何かの伏線にしか思えないわね?
「この魔王なんかおかしくない?」
「ん?なんだい?失敬なガキだね。しかし、何故ここに入れた?ニンゲンには入れぬはずだが」
あー、確かにー?私達、すんなりと地下鉄の駅で降りて、JR川崎駅みたいなとこまで出て来ちゃったけど。ニンゲンは入れないはずだし、魔法幼女でも魔王のアテンドがないと入れなかったはず。
駅前で、なんだかおかしな魔王に遭遇しました。何がおかしいって、まあそれは良く分からないのだけど。重度のシスコンの魔王兄さんが、私達に気付かないなんて。ちょっとガワが違うだけよ?
「はーい?それはね、お姉さんがこの世界の因果律を、ちょいっとイジったからよ偽物の魔王さん」
「また、出たよ」
「お姉ちゃん、この人はきっと、味方よ。ヒトかどうかはともかく」
「そうよー、異世界のお姉さんから同期通信があってね。未来から救助に来ましたー」
元女神までややこしい事を始めた。でも、助かる。こんなのでも女神だし。
「とりあえず、逃げるわよ。今の私達には力が何も無いからね」
「のじゃー!」
お姉さんと一緒に、地下鉄に取って返し、今度はヨコハマに行きます。
「ねえ?もうちょっと早く来てくれれば、ニセ魔王にも絡まれなくて済んだんじゃない?」
「因果律を操作したなんてハッタリよ。これはすべてシナリオ通りなの。知らんけど」
「知らんけどって、まあ無理もないわよね。何が起きているのかサッパリだわ」
ヨコハマに着いて、私達が訪れたのは郵便局です。何をするのかと言えばですよ。
「魔王ちゃんに手紙を書くのよ。魔界村に本物の魔王ちゃんが行っちゃうと、ニセ魔王と対消滅しちゃうからね。知らんけど」
「ういっす。おにーちゃん、今スグ、ヨコハマに来て。急がず慌てずゆっくりと、でも確実に来て、私達を助けて。こんな感じ?」
「いいんじゃない?完コピではないかも知れないけど」
「何の話?完コピって」
「ボスケテの呪文よ」
「また、わけのわからないことを」
そうか、何か見えて来たよ。これがシナリオって意味。なんであの時、魔王にいちゃんがヨコハマに来たのか、その因果も今分かった。しかし、この手紙の宛先はどこにすればー?とりあえず、ヨコハマの私達の拠点に来てみました。キレイすっかり全焼してますねー。私達の記憶にある通り。シナリオ通りなのね?これは。
「さあ、残念ながら、この戦いにはこれ以上の味方は居ないし、ヒントも無いのよ」
「えー、そんなあ」
「まあまあ、これでも僕は当代の魔王なんだよ?妹のピンチなら命だってかけちゃうよ」
「早っ!もう来たよ。手紙が届くより早っ!そもそも手紙出してもいないし。そして、妹への愛が重っ!!」
「ははっ、なんとでも言うがいいさ。タワシ召喚するかい?」
「いらんわー、あほー」
「ははっ。僕の妹は転生してもツンデレだね」
マジで残念。こんなのしか味方居ないんですかー?ああ、でもちょっとだけ安心している自分がくやしい。私、本当にツンデレ妹なのかしら?そんな、バハマ。
「ほんと応用力が足りないね?お姉ちゃんは」
「え?タワシ召喚するだけでニセ魔王に勝てるの?」
「どうとでもなるわよ」
「マジでー?私の妹がこんなに優秀なわけがない」
「血が繋がってないのだから、知能に差があるのは当然でしょ。あれ?でも今は繋がってるリアル姉妹?」
えー、そろそろー、私の脳では理解が出来ないんですけどー。
「システムエンジニアにも分かるように説明するとね。こんなのは、よくある手戻りってやつよ。受け入れ試験工程まで行って、機種選定からやり直す程度の」
「あのー、それは前代未聞の手戻りなんじゃけども」
「でも、現実にあったんでしょ?お姉ちゃんの過去ログにあったじゃないの」
「あ、まー、そうなんじゃけどもね?かなりフェイク入ってるんよ?何しろ、まともに覚えてはいないのじゃからしてー」
余計に分かりますん。どういう事?
「そろそろニートンが昼寝しに戻って来るわよ。早く移動しましょう」
「のじゃー!」
「え?僕は?一緒に行ってもいいのかい?」
「ニートンが魔王に会っちゃうと、開き直って昼寝しないでしょ」
「ええー?まったく何も分からないよ」
ほいじゃあ、どこに行くのかと言うとー。振り出しに戻ってお姉様のライブハウスです。
「ただまー!」
「ただいま姉さん。えーっと、この子達を頼むよ。僕は急いでヨコハマに戻らないと」
「いや、私も急いでヨコハマに行かないとなのよ。ニャアちゃん達がピンチなのだから」
「はいはい、そうね。彼女達の大ピンチなのよ。ここはお姉さんに任せて。お姉様はヨコハマじゃなくて、サガミハラに向かって下さい」
「え?分かったわ?あんた元女神なんだものね。戻ったら説明、…はいいわ。私はライブハウスの女将なんだから、妙な事件の真相には触れない」
「えーっと、じゃあヨコハマに行くのは僕だけでいいんだね?」
「そうじゃよー、何か知らんけど、いってらっしゃーい。達者でなー」
この事件の真相を知っている存在なんて居るの?私には、さっぱり分からないのだけども。
「タワシ関係なかったじゃんね?」
「そりゃそうでしょ。タワシ召喚しても何にもならないわよ」
「ぶひぃ」
ちょっとー?私の妹が説明もせずに強引にプロジェクトを進行するプロマネみたいなんですけどー?まるで、私じゃない。血が繋がってしまったのだから、是非もなし。
序破急の破壊工程しか無いけど、疲れたのでちょっと休憩よ。
「おねえさーん!ビール!!」
「はーい、よろこんでー!」
元女神のお姉さんも酒盛り始めちゃったし、これ以上は動く時じゃないんよね?きっと。知らんけど。