6-1. デグレーション
「お姉ちゃん、何してるの?」
ありゃ?これはー?うっかり時をかけちゃいました?いつか、公園のベンチで聞いたセリフですよ?ということは、今私は異世界転生の直後なの!?
「というか、一体これは何が起きているの?ニャア姉ちゃん」
「ミーナちゃん?これは、きっと異世界転生だよ」
「異世界転生って事は、私達死んじゃったの?」
「うーん、そうなるんじゃろうかー?」
何がどうなったのか、ミーナちゃんと姉妹で異世界転生しています。私は、異世界転生を40回以上している、異世界転生のエキスパートなのです。日本に居た時は、IT派遣としていろんな職場で働きましたけど、それと同じ感覚でいろんな異世界を渡り歩きました。なので、異世界転生したからといって、ちっとも慌てる事はありませんのじゃがー。
でも、カワサキ帝国に転生してからは、不老不死の体に、女神級の魔法幼女という地上最強の暴力を手に入れたので、7年くらい転生することなく暮らしてました。兄は国王と魔王で、身分的にも安定していたのに。いやむしろそのせいで生命を狙われた可能性もありますかね?でもでも、何で死んじゃったの?
「サガミハラのロボット大戦は勝ったよね?」
「うん。その後で現地入りしようとして、国王兄さんに止められて、お前らはしばらく村から出るなって言われてー」
「そうじゃった。出るなと言われると出て行きたくなるのが女神の習性じゃからしてー、魔王兄ちゃんに魔界に連れて行ってもらってー」
「大怪獣大決戦ごっこをしていたところまでは記憶にあるよ」
「うーん?あれは怪獣ごっこじゃからして、死亡遊戯ではないのじゃがー?」
ミーナちゃんと二人で記憶を辿りましたが、死に至った理由がさっぱり分かりません。
まあ、いいや。
転生しちゃったものは、仕方が無いわ。最大の懸念は、ミーナちゃんとはぐれないようにする事かしら?今、ここではぐれると、もう二度と会えないかも。私は、ミーナちゃんの手をぎゅっと握って、辺りの散策を始めます。まずは食べ物の確保よね?
トラブルシュートの際は、まずループバックにpingをうつところからよ。うん、この知識は、今何の役にも立たないわね!
「およ?ここは私の知っちょるところ」
「え?ここどこなの?姉ちゃん」
「ここは孤児院だよ。私達、孤児院に収監された孤児の姉妹なんじゃないかなー?」
「収監って、孤児院だよね?刑務所じゃなくて」
「んー、それがー。前回ここに来た時は、カサカサに干からびて餓死しちゃったからねえ」
「え?私達また死んじゃうの?」
「死んでも、また転生するだけじゃよー。心配しなくても大丈夫い。ぶいぶいー」
転生したらミーナちゃんとはぐれるかも知れないから、全然大丈夫じゃないわ。姉として妹を全力で守るんよ。魔法も何も使えないみたいだけども。この世界に、魔法は無かった。ただ、女神は居た。私のような、なんちゃって女神とさほど変わらない6歳の幼女が。
「なんじゃ、お前ら。お腹空いておるのか?」
「おほっ!?女神様!」
「んー?お前は、前にもここで会ったかのう?」
今この世界は、どういう状況なのかしら?村の教会にあったラノベみたいな神話によると、この女神様は産まれて7日で世界を支配したとか?なんか、そんな荒唐無稽な物語だったけども、何しろ神話なのだから仕方ない。ここは、その神話が現実に繰り広げられた世界のはず。
「女神さまー。お腹空いたよー」
「分かったのじゃ。小さい子供が腹を空かせて泣いておるとは、この国はやはり許せぬ」
「滅ぼしますか?マスター?」
「いや、支配して飼い殺しじゃ。それが女神としてのわしの流儀じゃからして」
うーん。産まれて7日で世界を支配したってのは、やっぱり誇張かなあ。とゆうかですよ?
「ニートン!?あれ、違うか?でも、このメイド服の人、ニートンそっくりじゃない?腰に日本刀ぶら下げてるし、ポニーテールだし」
「もしかして、ニートンの姉かなあ?この人17歳くらいじゃない?」
「あー、なるほど?ニートンの前世の名前ってなんだっけ?」
「ヤキトリだかスズメだか、なんかそんな?」
「ん?貴殿達は、拙者の生き別れの妹を知っているでござるか?」
「あれ?おまえ妹なんかおったん?まあ、ええわ。こいつらを山に連れて帰るぞ」
「いえす!マスター!」
えーっと人攫いなのでは?でも、この孤児院は女神様が買い取ったそうなので、私達姉妹の命も、女神様のモノ?まあいいわー、お腹いっぱいに熊の丸焼きを食べさせてくれると言うので!
「あっふう。ごはあああ、うぼえぇぇえ」
「ニャア姉ちゃん、うるさいよ?」
「ほんまじゃ。こいつは天使か?」
「天使を何だと思ってんだ?失敬だな」
山奥に連れ去られた私達は、真っ黒なお湯の露天風呂につかっています。これも悪魔の湯というのだとか。効能はマジで不老不死。もっとも半年くらいは湯治が必要みたいだけども。あれ?ここでも不老不死の体を得てしまったら、ニートンやタオルくの居る世界に帰れないような?
「ははっ。また妙なのを拾ってきたね?こいつら魔女かなんかかい?」
「いんや。異世界転生者なんじゃと。わしらの記憶の中にある、日本から来たらしいよ」
「妹のミーナは違うけどね。私は平成末期の日本でシステムエンジニアをしてたんよ」
「マジでー?じゃあ、我ら堕天使の持つデータベースのオリジナル所有者だったり」
「あー?うん、そうかもね?ミラというお姉さんが、そう言ってたね」
「なんじゃとー!?おしっしょ様の知り合いなのー!?」
あれ?なんか、遠い所で、時の輪がメビウスというか知恵の輪のように、複雑に絡みあってる?
「うまー」
「おしいしいね、お姉ちゃん」
熊の丸焼きは、なんかぱさついてたけど。ジャガーのシチューはうまい。ジャガーといえば、ドラゴンのアマテラスを思い出すわね。さすがに、アレはよう食べんわー。
「ねえ、堕天使のセーラームーンちゃん。魔法の覚え方知らない?」
「我ら堕天使は名前には拘らないけどね?さすがに、その呼び方はどうかなー」
「はいはーい!巫女のワタシが知っていますよー!」
この世界の巫女ちゃんは、村の神社のと違って、アッパー系のやっべえ感じ。目とかイッちゃってるよ。まさに狂信者って感じ。
「知っているのか!?巫女ちゃん」
「おうよ!この世界に魔法はありませーん!」
「はあ?そんな答えは聞いちょらんわー。この、あほー!」
「なんですとー!あほですとー!そのとおりですよ、巫女は死ぬたびに左脳がパーになりますからね!」
「なんなの、この人?」
「お前は、黙っちょけ?ミーナちゃんが怯えておるわ」
「魔法は無いけどね?魔法みたいな事が出来る存在なら居るよ」
「おちっしょしゃんの事かの?」
「はいはーい!お姉さんの事呼んだ?」
あ、なんて都合よく出てくるの。まさに、デウス・エクス・マキナ。女神が出て来てしまった。初代の本物の力持ったヤツが。
「お姉さんも、もうニンゲンに帰化しちゃってるからねー。そんなに、たいしたことは出来ないよ?」
「カワサキ帝国のオタマ村に私達を転生させて下さい!おにゃしゃす!」
「うん?むーんむーん?ぽくぽくぽくチーン!ああ、未来のお姉さんと同期したところによるとー」
「よるとー?」
「無理ね」
「はいー?」
そんなあ、女神ならちょちょいっとやってよー。えー?ダメなのお?
「異世界に送るだけなら、出来なくもないんだけどね?転生は無理」
「ああ、そういう、そうかー」
「いや?それで十分よ、向こうに私達がまだ居るタイミングでなら、マージ魔法でコンフュージョンすればいいよ、お姉ちゃん!」
「ほげ?そげなことが出来るん?」
「お姉ちゃんは応用力が足りないね?」
「ぶひぃ」
なんだよー、結局デウス・エクス・マキナじゃんよー。私の日記は、システムエンジニアの業務日報のはずだったのに、どんどんラノベ的神話になっていきますわー。
「何か目印になるものあるかな?ドラゴンとかフェニックスでも居れば分かりやすいんだけど」
「まさに、そのドラゴンとフェニックスがうろついちょります。猫型ドラゴンと、インコ型フェニックスが」
「さすが、異世界の二代目女神ね。いい使い魔持ってるじゃないの。さあ、いっくよー」
ちんからほい!
え、そんな雑な呪文で、大丈夫なんですかー?あんた、ノヴィータさんですかー!銀河一のガンマンですかー!?
「向こうの世界の私によろしくね?」
「妹の事を頼むでござるよー」
「じゃあなあー、もう来るなよー」
あんたの方こそ、私達の世界へ来ないでよ、女神様。致命的に、ややこしくなるから。




