5-15. 遠く時のあんドーナツが接する場所
「よっしゃああああああ!!エネルギー充填120パーセントおおおおお!!」
うそです。1パーセントくらいですかね。ドラゴンのアマテラスも、ここでは放出しているマナとカナの量が、ほんのちょっとしか無いんだね。
足りない分は、元女神のお姉さんから吸いましょう。
「え?ちょっと、私達、同じボディなのよ?近親相姦どころじゃないわよ?」
「ちょっと、おとなしくして。ウブな生娘でもあるまいに」
「お姉さんは、ウブな生娘なのよー」
このお姉さんのマナとカナもすっかすかでした。ついでに、ミーナちゃんとタオルくんからも吸いましたけど、暴れてる間に消費する量の方が多かったかも。ボンジリは吸うと飲み込んじゃいそうだし、アールくんはアンドロイドだしね。なんか、アールくんが、自分だけ吸われなかった事で、ちょっとすねてますね?
「そんなに大きな事は出来ないし、魔法1回が限度かな」
「慎重に選ばないと、いけないけど。残されている時間もないね」
さあ、どうしようか。もう王宮は目の前ですよ。
「ボンジリを食べちゃえば?フェニックスだから復活するでしょ?きっと」
「くえー!」
「ほら、良いって」
「ほいじゃー、ミーナちゃんと半分づつ」
アールくんが、ボンジリを、じゅーっと丸揚げにしました。メイド型アンドロイドはスチームオーブン内蔵なのです。
ミーナちゃんと二人で、もしゃあっとボンジリの丸揚げを半分づつ頂きます。マナとカナが、ぐいっと回復しました。そういえば、これでミーナちゃんも不死確定だね。
「ミーナちゃんはQTフィールド全開にして、私達を守って」
「のじゃー!お姉ちゃんは攻撃すんの?どこをなにでどうやって?」
「大質量を王宮にぶつける」
静止衛星軌道上に係留中の宇宙戦艦ヤマトナデシコを、ぐいっーっと。
「すまない!ヤマトナデシコ!」
「あああ、キレイに燃えているー、我らの青春と共にあった艦がー」
まあ、確かに一万二千年も乗っていたけどね?体感は30分だったでしょ?
大気圏突入したヤマトナデシコが、大気との摩擦で真っ赤に燃えています。王宮に到達する頃には、じゃがいも程度の大きさでしょうけど、それで十分。
「死力を尽くして共に戦った道具の最後に涙を流せるのなら、大人になったってことよ、お姉ちゃん」
どっかで聞いたセリフじゃがー。今は、心にぶっ刺さるわー。
そしてー。
サガミハラの王宮に赤い火の玉が、ぶっ刺さった。
「勝ったー、のじゃがー」
どうやって帰ろうか。マナもカナも使い果たしてしまったわ。ヤマトナデシコが王宮を破壊した時の衝撃波で、お腹の仮想風車をギュインギュインと回してはみたのだけど、マナもカナも吸収出来なかった。
私達は、巨大なクレーターの縁に立ち尽くし、地平線まで見渡す限り何も無い大地を呆然と見回した。
「にゃあちゃーん」
あ、お姉様!?
夕陽に照らされて、ねこバスに乗ったお姉様がこちらにやって来ますよ?
「ミーナちゃんも、タオルくんも、アールくんも、ボンジリも、アマテラスも無事ね?」
「お姉さんも無事だよー」
「あれ?あんた何で居るの?まあ、いいわ。お家に帰りましょう」
ボンジリは、もう復活していました。さすがフェニックス。
「お姉様は、どうやってここに?」
「地下鉄に、ねこバス乗せて来たのよ?この近くに駅があったわ」
「あー?あ、そういう?」
「だって電話で様子がおかしかたじゃない?それでスグにね。ねこバスがあって良かったわ」
アマテラスとボンジリを預けに帰った時に、ねこバスは村に置いて、私達は地下鉄でヨコハマに帰ったのでした。忘れてたわ。
「あー、何か忘れてると思ったら、地下鉄かー」
「ねこバスが無かったら、あの爆発で私も吹き飛んでたけどね」
「ねこバスの防御力ってそんな!?」
「うん。宇宙空間も旅出来るように改造してあるけえね」
そうかー。あの微量なマナとカナで、アマテラスとボンジリを召喚出来たのは、お姉様が地下鉄で近くまで一緒に来てたからかあ。何でも、やってみるもんだねー。
「大人しく待ってれば、ソルのコントローラーを持って来てたのに」
「んー、あれ?ニートンが居ないから無理じゃん、それ」
「そういえばニートン何処行った?ヨコハマにまだ居るのかな?」
「あれもアホじゃないし、どっか安全な場所には居るでしょ」
「ほじゃーねー。ほいじゃあ、帰ろうか」
私達は、ねこバスで地下鉄の駅まで向かったのジャガー。
「完全に埋まっているわね?」
「まあ、ヨコハマまでねこバスで行けばいいでしょ」
ここまでサガミハラの護送車で陸送してきたのだから、ねこバスで行けぬ道理はない。地上には何も無いけど、ナビがあればどうにかなるでしょ。
やがて。
ヨコハマまで辿り着いたところで、ねこバスも完全に停止した。
「ああ、あの爆発じゃあねえ」
「ここまで走ったのが不思議じゃね」
私達は、再び死力を尽くした道具に涙を流した。
ヨコハマまでは、あの爆発の破壊力も及ばず、私達が整備した公共交通機関で、ヨコハマのお家まで帰ったのでした。
「ニートン!おにーちゃんまで」
ヨコハマのお家は、全焼して無くなってました。むう、あいつら、ここまでやるかー。
廃墟にニートンと、魔王にーちゃんが待ってました。
「おにーちゃんは、どうしてここに?」
「多分、拙者が呼んだでござる」
「あー、うん。良く分からないんだけど」
「魔王に何か特殊な能力がー?」
「こいつ重度のシスコンだからね」
「じゃったら、妹の危機を察知してサガミハラに来て欲しかったのじゃがー」
「いや、僕はタワシを召喚出来る程度の魔王なんだよ?無理言わないでよ」
「来た所で、何の役にも立ってないわよ」
「うぐ、僕の妹達は、鬼だね?」
ほいじゃあ、一体何があったのかと言うと?
「死んで転生する手段も考えたでござるがー。ここに戻れる保証が無いのでー」
「どうしたのよ?」
「明日か明後日頑張ると決めて、寝てたでござる。ここで」
「また無防備な事を、逃げ足が早いだけなのに」
「まさか、また此処に戻ってきて寝てるとは敵も思わないでござろう」
話が見えてこない。うーん?もしかして?
「ああ、あれかー。明日か明後日のニートンが魔王を呼びに行ったと?」
「おそらくは、そうでござる。ただですなあ、何でこんな役立たずを呼ぶナリ?」
「それは、明日か明後日のあんたにしか分からないわよ」
「僕は、手紙が届いて、それを読んでここに来たんだよ」
「手紙ー?よけいに分からん」
「あの、ともかく、ここの拠点も潰れたし、また魔界に行って骨休めしたら?これ以上僕を痛めつけないで欲しい」
「そじゃーのー」
私達は地下鉄で魔界に行って、再び湯治をしたのでした。めでたし、めでたし。