5-14. ありゃっ!?女神様
ある朝ニャアとミーナが目覚めると、14歳チュウニになっている自分達を発見した。
「パンツが粉々よ」
「前にも、こんな事あったわね」
おかしいですね?我々魔法幼女は魔力袋の都合で、永遠に6歳幼女のはずでしたのジャガー?
「お嬢様方。まずは、こちらのパンツとジャージを。シルクで作った極上品です」
アールくんが用意してくれた、黄色と黒のシマパンと、黒のジャージを着ます。
「シルクのジャージって、貴族なのかニートなのか良く分からないわね?」
「今の私達は、ただの兵器なんよ。貴族でもニートでも無い」
「それはそうだけどね?」
「ちょっとあんた達。サイコロで勝負してみてよ」
あーん?魔法少女が運ゲーで勝負しても、どうにもならんよ?
ともかく、タオルくんに言われるまま、サイコロを2個振ってー。
「2個振ったサイコロの出目の合計が高い方の勝ちよ?いいわね」
「あ、うん。勝負にはならんと思うんじゃけど」
「…分かったわ。やってみよ、お姉ちゃん」
ミーナちゃんが何だか深刻なのは何故?これは久々に胸騒ぎの予感。
「ほいじゃー、ハイ!」
「はい」
「ニャアが3、ミーナが6ね」
「普通のサイコロ勝負になっているでござるな?」
「あれれー?」
えーっと?そういえば、最近魔法使ったのっていつだっけ?ヨコハマに来た時に、ねこバスを運転したっけ?
「もしかして。アルプスよりこっちって、マナとカナが薄いか無いんじゃないの?」
「あー通りで。ヨコハマにも、ヨコスカ、サガミハラにも魔法少女も魔女も居ないナリ。そういう事でござるか?」
「ヨコハマで暮らしているうちに、魔力袋が空になったのね?」
「僕にはマナもカナも観測不可能なので、推測になりますけど。おそらくはそうかと」
ああ。ドラゴンのアマテラスと、フェニックスのボンジリが体調を崩したので、村のお姉様の元に預けたのだけど。マナとカナが薄いか無いかしたせいだったの?
「アマテラスとボンジリは、オタマ村では以前通り元気だそうでござる」
「もしもしー?どうしたのー?緊急事態なら私もそっち行くわよ?」
お姉様と通話が繋がって、スピーカーモードになっています。
「あ、うん。どうしよう。お姉様は、そっちでアマテラスとボンジリの面倒をお願いするよ」
「そう?分かったわ。何かあったら、すぐに連絡しなさいよ」
「あ、うん。ほいじゃあ、またね」
私達は、この時お姉様に泣きつくか、スグに帰国すれば良かったのです。今まで、無双してきたから図に乗っていたのでしょうね。判断を誤りました。
魔法も使えない私達は、あっさりと敵の工作員に捕まりました。
「やっぱさあ、ラウドネスは第一期が神がかっていると思う」
「うん。他もいいんじゃけどね。第一期がすごすぎじゃろ」
「別のバンドとして、対バンして欲しいくらいだけどね。四期とかライブで観たいわ」
「お姉ちゃん達は、神経が図太いなあ」
昔々にも、こういった事がありました。護送車の中で、やる事もないので、ガールズトークをする私達。ガールズ?
私達のお家にサガミハラの工作員が突入して、なす術もなく捕獲されてしまいました。ニートンだけが、質量のある残像を残しつつ、逃げ切りはしたのですが。攻撃能力は雑魚だからね、あの騎士は。逃げるのが精一杯。アールくんは、メイド人形形態だったので、戦闘力は皆無。
私とミーナは魔力袋が空で魔法が使えない。タオルくんは元々戦闘能力は無い。そりゃ、捕まるしかありませんわ。その場で、殺されていれば、まだ異世界に転生して逃げることが出来たかもね。
「逃げたニートン様が、どういう行動をしているか次第でしょうか?」
「徒歩でアルプス越えは無理だし、携帯電話も全て破壊されたしなあ」
「ねえ?ソルだっけ?人工衛星を動かすヤツは?どこやったの?」
「お姉様に預けてきた」
「あれって、私達4人全員が2分以内にロック解除しないと、発動しないのよね?」
「そう。じゃからして、お姉様だけでは使えない」
今後こそ、これは詰んだかなー?ただの14歳女児が3人。メイドロボが1体かー。
「アールくんの通信機能は?使えないの?」
「メイド型の時は、携帯電話が無いとダメです。家事機能に全振りなので」
「後は、何かなー?何か見落としてない?私達」
タオルくんは、この状態でも冷静なのは、前世でフランス革命とか、いろいろあったからなんでしょうね。で、結局、何もねーわー、って結論に至り。ガールズトークをしている、というわけです。
「私、不思議に思っている事がひとつあるんだけど」
「なに?」
「ペーターってアレは何だったの?当て馬ですら無いわよね?」
ミーナちゃんも、ガールズトークに参加してきました。
「うーん。ハイジとクララの百合物語ではあるよね?」
「まあ、そうよね。そうかな?」
「なんでも掛け算を持ち込むのが間違いかな?」
「その点、ラナとコナンは、はっきりしてる」
「あー、気になるのはウマソウがどうなったかよね?」
「最終回でも、まだ食べてなかったでしょ?」
「はっきりしないといえば、ジャンとナディアでしょ」
「あれはー、まあねえ」
「そもそも、ナディアってクズじゃん」
「ジャンは優秀なエンジニアよね?クズとくっつく道理が無いわね」
「いやあ、クズと優秀って何故かツガイになりたがらない?」
「んー、あれか。シロウとユウコか?」
「あれは、どっちもクズなのでは?」
「大手新聞社に就職してなければ、何の能も無さそうな」
「いや?シロウは料理人にはなれるでしょ」
「性格に難があり過ぎるよ」
この会話を記録しておく価値あるかしら?もちろん、第三者が読む価値は無い、と思う。
「お姉さんは、ユウザン推しよ」
「は?まじか?」
「あ、ごめん言ってみただけ。うそうそ」
ありゃ?あんたどっから入ってきたの?
「ねえ?もしかしてピンチ?お姉さん、異世界から帰って来るのに、マナもカナも使い切っちゃったわよ?」
「なんで、ここに来たの」
「ニャアちゃんって魔力的に目立つのよ。この世界のランドマークとして転移する時にピンを設定したのよ」
「魔力的に目立つ?」
魔力袋が空っぽでも、そんな特徴が?あー、これはあれですぞー?
「ねえ?そろそろサガミハラの首都なんじゃない?」
護送車の鉄格子の嵌まった窓の向こうに、王宮っぽいものが見えます。あそこに護送されるのかな?
「あそこに、あのおもらし縦ロールが居るのでしょうね?」
「ほうじゃろうのう?ほいじゃあ、ちょっと試してみようか」
「え?何を?お姉ちゃん、思いつきで危険な事しないで?」
いでよーーー!!アマテラスーーーーー!!
狭い護送車の中で、手のひらを天に向けて叫びます。幻聴なのか、デンドンデンドンとティンパニを連打する音楽が聴こえますね。これは、やったか?
くえー!くえええーーーー!!にゃあん
「あ、そうかぁ。インコと猫かあ」
「なしたの?」
「召喚に失敗した」
以前のように巨大なニワトリであったらなら、背中にマテララスを乗せたボンジリが来たのに。声だけしたけど、巨大な影は現れず。
「えーっと。ボンジリとアマテラスなら、ここに居るけども?」
「お?」
肩に青いインコ、ボンジリを乗せたタオルくんが、颯爽と立ってます。何故か片目に黒い眼帯を付けて。それは今まで何処にしまってたの?
猫のアマテラスは、私の膝に乗ってきた。召喚には成功したのです。ただ、インコと猫じゃあねえ?
「もう何をやってもダメだという時。どうにもならない時は、ただ寝て待っていればいい」
ああ、タオルくんが、宇宙海賊ごっこを始めましたよ。敵地のど真ん中、護送車の車内だと言うのに。かつーん、かつーんと、ゆらゆらしながら車内を闊歩しています。ジャージで。肩にインコ乗せて。
「だが、ニャアちゃんは知っていた。負けると分かっている戦いでも、ずるっこして勝つ方法があることをー。ね?そうでしょ?」
ほじゃーね。とりあえず、久々に会ったアマテラスを吸いましょうか。猫吸いでエナジー補給です。