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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
5.要求仕様書 ~この世界に要求するもの~
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5-6. 情報格差という深刻な病

 この村にインターネットを普及させるプロジェクトは実現可否の検討段階で中止となりました。


 ぶっちゃけ、めんどいわー、ダルーってのもありますよ?そりゃあ。


 導入するだけなら、まだいいのです。アールくんに「ヘイ!アールくん、この村に携帯の基地局を建てて!」って言えば、やってくれます。でも、維持が大変なのですよ。

 この世界が自前で到達出来た技術的な最高到達点は、固定電話とラジオ、アナログ無線通信辺りまで。以前、原子力潜水艦がありましたけど、あれは古代文明からサルベージしたものなので、私が沈めてからは二度と出て来ていません。私が帝国の第七艦隊を殲滅させた事件はマクロな視点で見れば正義だったのです。核はこの世界の人類にはまだまだ早過ぎます。地球にだって、どうなんだかね?

 トランジスタはかろうじてありますけど、ナノメートルレベルの高度な集積回路はありません。

 地球でリレーを組み合わせた原初のコンピュータが発明されてから、初のマクロプロセッサまで30年近くかかっています。そこから、スマホに搭載するチップに至るまでに更に30年。最短でも60年くらい先まで、この世界の人類が自前でスマホを製造する技術に辿り着くまで待つ事にしました。村にインターネットを導入するのは、それからです。

 ミーナの導入した現行のインターネットは、魔法の一種だと思われて居ます。接続するデバイスについても魔道具の扱い。人類にはリバースエンジニアリングするのも無理なのです。高度に発達した科学は魔法と区別がつかない、まさにそういう事。


 もっとも恐れている事は、情報格差が生じる事。

 この村はまだ戦後の傷も癒えていない状況です。ここに情報格差を持ち込んで、淘汰選別の種にしてもですね、誰も幸せにはなりませんよ。この村の人達はドラゴンの恩恵で一度は不老不死になりましたけど、それも私がキャンセルしたので、ごく普通に老いていきやがて死ぬのです。子供達に未来を託してね。並のニンゲンよりは、丈夫で長生きでしょうけど。そこに100年分以上の進化を持ち込むなんてね?


 まあ、一番の理由は最初に述べた通り。だるいわー、ですけどね。


 ただまあ、村の中の何箇所かに、街頭テレビならぬ、街頭インターネットを設置しました。一切の操作は出来ずに、管理しているホスト側で適当に選んだ配信動画を流すだけの液晶ディスプレイですけど。魔道具の一種として受け入れられて、人気になっています。この村の動画は人気コンテンツなので、自分たちも出ていますからね。先日のパンツでデートとか。デジカメやスマホで撮影している観光客が居ると、テレビカメラを見つけた昭和の子供のように、うぇいうぇい騒ぎそうなものですけど、この村の若者達は一度は枯れた老人になっているからなのか、そういう事はしないですね。

 

 この村は帝国の植民地として、のんびりやっていくのです。

 成り上がりたい人達は、自力で出て行って都会へ行くので。何も問題はありません。


「まあ、そうは言ってもね?システムエンジニア以外のスキルなんて…、これが意外といろいろあるのかあ。ニャア姉ちゃんは謎だなあ」


 私は、飛び込みの営業だって、商人みたいな事だって、いろいろ出来るのです。

 それにね。システムエンジニアのスキルがITの技術的な事だけなのかと言うと、そんな事はありません。

 そうでも無ければ20代を営業職で過ごした私が、30代後半からいきなりシステムエンジニアになんてなれないでしょ?どこかで教育を受けたわけでもなく、横須賀リサーチプリズンで実戦を通して覚えただけなんですよ?

 プロジェクトの管理をするプロジェクトマネージャーとかリーダーとか呼ばれる役割があります。これは、別に技術的に詳しいことは分からなくても出来るのです。むしろ、技術的には詳し過ぎない位で丁度いいかもね。

 ITプロジェクトを遂行する上で、最も重要なのは顧客とのパートナーシップです。次が、社内政治かな?必要なのは、営業職と同じで、気合と根性なのです。どれだけ器用に時間とモノとお金の管理が出来ても、キーパーソンが「嫌じゃ」と言い出せばそれまでですからね。その辺を、うまく宥め賺して回すのも、システムエンジニアの仕事なのです。気合と根性があればこそだと思いますよ?少なくとも、私はコミュ障なので、そうでした。


「そういうワケじゃからね。技術的な事は封印しても、システムエンジニアとして、この世界に革命を起こす方法は、きっといくらでもあるんよ」

「うーん、しばらく遊んでいたい言い訳にしか聞こえないなあ」


 うぐっ。私の妹は鋭いですね。まあ、いいじゃないの。必死こいて働くだけが、人生ではないんよ。必死こいて働きたい人や、そういう時期もあるでしょうけどね。今の私は、のんびりしたい期なんですー。


「24時間働いて死ね、って文化じゃないの?昭和の日本って」

「うん、まあ。そういう世界を生き抜いたからこそなんよ」


 24時間云々のCMに代表されるように、1990年代の文化も昭和とひとくくりにされる傾向がありますけど。あれは、平成初期ですよ?先日村でやったパンツでデートこそ昭和のバラエティの姿です。あれが平成になると、もっと欲望に忠実なモラル破壊の進んだ感じになっていきます。いやまあ、曖昧な記憶でものを言ってますので、細かい指摘はあると思いますけどね?

 区切るなら、昭和か平成かではなく、魔暦前か後ですよ。日本は魔暦を正式に採用すべき。魔暦元年は1999年なので、区切りとして割といいポイントだと思います。


 というわけで、悪魔教の布教活動をして、今日の日記は終わりです。私、この世界の女神だった気がするけどな?

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