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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
5.要求仕様書 ~この世界に要求するもの~

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5-2. 魔法少女のライブ配信

 満員電車にイラついた。


 ただそれだけの理由で猫耳ニャア大佐は地球を真っ二つにしてしまったけれど。

 この理想郷のような世界を経験してしまうと、その気持はよく分かる。

 狭い檻の中にぎゅうぎゅうに押し込められて、理不尽な事ばかり。今、思い起こすと、とても不思議な気持ちになる。あれこそ、異世界ファンタジーではなかったのか? と。ヒトが耐えられる現実の世界だとは、到底思えない。


 この世界には、無駄に威張り散らすヤツもいなし、能も無いのに妬み嫉みを垂れ流す事に忙しいヤツも居ない。たまに、おバカさんが現れるけどね。


 いつもの様に、定食屋に行くと、入り口で妙なオーラを放つ美少女と擦れ違った。

 今日は、何かイベントでもあるのかな。ここは、すっかり定食屋として安定しているけれど、ステージのあるライブハウスなのだから。アイドルでも来たのかしら。何も聞いてないのは、私がヒキニートだからね?


「女将を呼べって言ってんじゃん? 私、王女よ? 分かってんのこの雑魚。私、この国の王様の事もよく知ってんのよ?」


 あれは、いつか見た青い空のようなおバカさん。

 にーちゃん、アレ知っちょるげ? ほう? 知らんと。携帯電話で写真を撮って、兄である国王に念の為確認してみたよ。こういう不思議な言動をする輩は、本当に現実に居る。私も、日本で雇われ店長をやっていた時に出会った。「俺は、この店の店長とも仲が良いんだ。お前なんかクビにしてやるからな?」はあ、私がその店長デスけど?


「はあ、どこの田舎王女様が知りませんけど。うちのような大都会の定食屋には似合いませんので、出てって貰えます?」


 ありゃ。お姉様が一年前よりも攻撃的ですよ?

 店員が全員、女騎士という暴力装置になったので強気なのでしょうか。ああ、これは良くない。良くないですよ。

 この世界で、一度はレッド・ノーティスにされた私には分かります。暴力は、より強力な暴力しか生まないのです。この一年、私は魔法を行使していません。アニメを観るのに忙しかったからじゃありますん。暴力にものを言わせた過去を反省したからなのです。


「野郎! ぶっ殺してやる!」


 おやー。何やら懐かしいセリフですよー?


 ぽんっ


 おバカな王女の両肩と頭の上に、3人分の左手がぽんっと置かれました。

 7歳のミーナちゃんと、14歳のミーナちゃんと、17歳のミーナちゃんが、王女を取り囲んでいます。さっき見た美少女はアイドルではなく、魔法少女でしたかー。それも私の妹だとは。


「おい、表へ出ろ」


 7歳のミーナちゃんが代表してそう言うと、立てた親指を後ろにぐいっと向けて、更にクビの前をきゅっと横に切る素振りをし、最後に下に向けました。挑発マックスです。

 どこで覚えたの?私と一緒に見たハリウッド映画ですね。英才教育が行き届いています。


「今、ここで臓物をぶち撒けて死ぬか、大空で粒子となって散るか選ばせてあげる」

「ミーナちゃーん? お店を汚さないでね」

「ういっす」


 王女が、正統派ぐりぐり縦ロールの頭をひっつかまれて、店の外に連行されますよ。アレは、王女というよりも悪役令嬢ですねえ。


「完全に、去年のニャア殿のコピーでござるな?」

「独自のアレンジも効いているね? 7年後と10年後にちゃんと忘れずに今日のイベントをやれるのかな?」


 去年の聖国の魔女を駆逐した時の様子は、アールくんが録画していたので、家族のみんなはソレを見たのです。私が、おしりからナノマシーンをぷりっとするシーンはカットさせましたよ、もちろん。


「おいカワサキー? こういうヤツをどうすればいいー?」

「ころせー!」


 むう、コールアンドレスポンスまで取り入れてますよ?

 この一年、ライブハウスのステージに立ったミーナちゃんが仕込みましたからね。


「このアホな王女の処刑を提案シます」

「可決」

「可決」

「可決」

「よーし、お前は処刑だー!」


 東方の三賢者的な芸まで用意して、撮影係のアールくんも絵コンテを見ながらカメラ向けてますね。まさか、あの王女は仕込みですか?


「お前を蝋人形にして、やらない」

「ちょ、と待ち、なさい? あれ? 処刑はー?」


 姉として止めに入ろうとしたら、その前に処刑は中止されました。


「こいつ、おもらししちゃってるから。全世界生中継で醜態さらせば、もう十分でしょ?」

「あ、うん。そうじゃね。あんたの暴力も生中継されちゃったけどね」


 この村にはラジオも無いし、テレビも無いし、車は一台しか走ってませんけどね。都会では、テレビもあれば、ネット配信動画だってあるのです。地方と都会の格差が異次元レベルなのです、この世界は。


 今回は一年前の私の時と違って、14歳のミーナと17歳のミーナにもセリフと役どころがあったので、イベントが終わっても消える事がありません。


「はぁ、同じイベント三回もやると飽きるわねえ」

「私は、二回目だけど。それでも退屈だった」

「あー、そういう問題があるかあ。私が、7年後と10年後にやるのよねえ」

「忘れないでね? じゃあね」

「じゃあねー」


 未来のミーナ達は、ひゅんひゅんっと帰って行きました。無詠唱で時間跳躍。私には無理なんですけど。弟子が強過ぎて、暗黒面に落ちないか心配です。師匠の私は、既に暗黒面のどん底ですけど。


「反面教師をずっと見て育ったから。心配ないよ」

「あ、はい。それは良かったです」


 ほいでー、股間びしょびしょで失神しているコレはどうすんの?

 本当に王女だったら、また国際問題になるんじゃあ?

 汚いので、全裸に剥いてからお風呂で丸洗いして、家の前で天日干しておいたら、翌朝には居なくなってました。


 本当に王女だったので、翌朝の正午過ぎには帝国とどこかの国が開戦しましたけど。今回は、敵国に魔法戦力が居ないので、私達は不参加です。開戦のきっかけを証拠付きで作ったニーナちゃんは7歳児なので無罪放免。帝国は戦争に勝利し、植民地が増えました。なべて世は事もなし。

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