4-13. チョコ食ってる場合じゃねえ!
よく晴れたある日の朝、私達は出陣しました。
「パンツを干すと一瞬で乾いて、元気に空を飛んで行きそうじゃー」
「紫外線に晒さぬ方が良いでござるよ? パンツは」
「そういう問題じゃないでしょ。なんでパンツが空を … 飛びそうよね? ニャア姉ちゃんのなら」
メンバーは、私とニートンとミーナです。全員ジャージ着用で、ねこバスに乗っているので、遠征試合に向かう卓球部に見えますのジャガー。行き先は、戦場なのです。スポーツも戦い、という比喩ではなくて、暴力の祭典である戦争です。
この世界には、スポーツで競い合う平和の祭典という概念がありません。魔法少女や異能力者にレギュレーションを守らせるのが無理だからね。
「あのー、正装で来るように言いましたよね? なんでジャージなんですか?」
「シスターはちゃんと巫女服着てるわよ?」
「あ、はい。シスターなのに巫女服? この国の教義が国王である僕にもよく分かりません」
従軍シスターとして、神社のシリアナさんも同行しています。シスターが何の役に? 敵は聖国というくらいだから宗教国家なのでしょう、聖職者は弾除けになるのかな?
「拙者達はニートなので、ジャージが正装でござる」
「えーっと? 王女と近衛騎士という設定だって言いましたよね? 外交上の建前は重要なんですけど」
「建前と言えば、開戦のきっかけは聖国の魔女が、帝国の弩級戦艦を強奪して第7艦隊を殲滅させた事になってるとかー? それってニャアちゃんの仕業よね?」
「ええ、まあ、向こうも皇太子が他国の定食屋でクダ撒いたのが原因では、格好が付かないのでしょうねえ。厄介な魔女が居るのも事実らしいですけど」
聖国は資源が豊富なので、元より侵略の対象だったそうです。なにしろー。
「チョコの原産国なのでござろう? 早く侵略するナリ」
「スイーツ脳に侵略される国家。無様ね。私もチョコ食べたいけど」
「ところでー。幼女を戦場に連れ出していいのじゃろかー?」
ミーナは見かけだけ幼女の私と違って、中身も正真正銘の6歳児なのですよ? 魔法少女としての才能が開花しちゃったので、大量殺戮兵器として扱われてますけど。
「私は戦場で産湯につかったのよ? 何を今更」
「本人が納得しているのなら、まあええか」
この世界、普段はのんびりのほほんとしてますけど。なかなかの修羅なんよねー。
「あの? 僕の話聞いてました? 和平交渉に行くんですよ?」
「あれ? そうなん? ほいじゃあチョコはあ?」
「帰りに、お土産で貰えますよ、ちゃんといい子にしてれば」
「ういっす」
なんでまた、こんな難儀な女児共を連れて行くのやら。いざとなったら、暴力で片付けるつもりなんでしょ?
「ちょっと、道の駅に寄りなさいよ。たこ焼き売ってるみたいよ」
「なんですと! それは食べねばでござる」
「いや、帰りにしましょうよ。国際的な交渉の場に遅れるわけにはいきません」
たこ焼きー、食べたいんじゃけどー。むう、たこ焼きのために和平交渉が破断になっては、後世で歴史を学ぶ小学生に、プークスされてしまうー。あ、たい焼きもある。たい焼きで戦争なら、是非もなしでしょ。
しかし、また戦いですよ。IT革命は何処行ったの? ずっと要求仕様書を改版している感じ。
んー、戦争にIT技術は必要なのかなー? フルリモートでドローンを操作して戦うとか? ほいじゃあ、オンライン対戦ゲームでいいじゃん? ゲームの方が魔法や異能でズルする余地無さそうだし? ふむーん? マイクロソフトじゃなくて任天堂を目指すべき? どっちしろ雲の上の話よねー。一介のシステムエンジニアにしてみれば。所詮は、私も小物ってことよ。
「お姉様から着信!?」
村で待機中、のお姉様から電話です。私達が離れている間に敵が村に侵攻する可能性があるので、携帯電話のネットワークを構築したのデス!
対地攻撃人工衛星のコントロールに使っているネットワークを利用する事で、惑星全土をカバーするスグレモノ。こうやって既存のものを組み合わせてものを作るのは得意なので。猫耳のニャア大佐が遊びに来たので一緒に作りました。ニャア大佐は、今頃村でアールくんの再セットアップをして遊んでいるはずです。
「何か緊急事態でしょうか?」
「モスモス? え? 帰りに牛乳と卵を買って来い? えー、遊びじゃないんじゃけどぉ」
ぐぅ。この世界ではトップクラスに最新のテクノロジーのハズなんですけど。おつかいに使われてしまいました。いえ? ちゃんと人の暮らしに役立っているということですよ? アレがヒトかどうかはともかく。
「あの、ソレ向こうで出さないで下さいよ? 携帯電話は、戦局を劇的に変えてしまう危険なテクノロジーなので」
「ほえ? 無線通信機はあるじゃろ? 航空機もあるのじゃし?」
「全二重通信ってだけでも画期的過ぎるんですよ。リアルタイムで暗号化通信しているのなんか致命的にまずい。傍受すら不可能ですから」
「あー、なるほどー。別に兵器を作る気はないんじゃけどもー」
私なら、こんなんなくても心の声でドラゴンと会話することも可能だけどね。そんなこと出来るのは、私だけなのだそうです。ふむー、魔法少女の知り合いなんか異世界にしかおらんし、知らんかったわー。
んー、IT革命の前に我が身の安全を確保するべきなのでは? こんな脅威が存在するなら、全力で排除する勢力もあるでしょ。
国王自ら運転する痛車で、聖国の首都までやって来ました。
立派な聖堂があるよ。ここが、この国の中枢らしいです。国会議事堂みたいなもんかな? もしくは、江戸城。
和平会談の様子は退屈極まりなかったので省略デス。というか寝てました私。テレビ中継が無くて良かったわ。この世界には、まだ銀塩カメラすらありません。ジェット戦闘機や、原子力潜水艦はあるのに。なぜー? 写真の技術も軍事的に有効だよね? 戦争ばかりしているなら発達しそうな技術ですけど。
この世界には、科学力で無双する余地が沢山あるようです。システムエンジニアのお仕事ではないので、私はやりませんが。めんどうなので。
和平会談の結果、対等の通商条約も結び、今後は植民地開拓でも協業していくそうです。国王は忙しくなりそうだね。奴隷である兄の代わりに、アールくんを従順なアンドロイドにしないと。重巡なアンドロイドもロマンですねー。
「生チョコって何が生なんでござろうか?」
「ちょっと、帰る前にお土産開けるの辞めなさいよ」
「生きちょるんじゃないの?」
「チョコが生きてる … わけないとは言い切れないのが恐ろしいね」
今後は、生チョコも生きたままで聖国から輸入して食べられるのです。そういえば、商人だった気もします私。チョコの輸入業でも始めましょうかね。これこそシステムエンジニアのお仕事ではありませんが、食べ物の事だけは別デス。別腹なのです。女の子なので、幼女なので。




