3-16. 楽園のお仕事は結局システムエンジニアでしたわー
「なんでまたパンイチで転がっているでござるか?」
「え? いや、なんか気持ちよくて」
お家の前のお庭で、パンイチで日向ぼっこをしてました。
真冬でも気温が10度以上あるからね。お昼ぐらいの日向だと、ぽかぽかしてぬくいのよ。
「お昼を食べに行くでござる」
「あ、うん。お腹空いたねー」
お風呂屋さんのおばちゃんに貰った園児服を着ます。何の因果か、娘さんのお下がりは、またしても園児服でした。ワンピース型なので、すとんっと着れて楽でいいよ。お下がりばっかり着てSDGsだよ。カーボンがニュートラルでいいんじゃないの? 知らんけど。
「お茶どぞー」
お昼を食べるのは、すっとんとんビルの2階にあるシン定食屋だよ。タオルくんが始めたのです。お客さんは身内しか居ません。お姉様のやっている元祖定食屋であるライブハウスの方に村人は流れているので。
「客が少なくて楽でいいよー。私も一緒に食べよう」
この村では必死に働いてお金を稼がなくても暮らしていけるからね。少しくらい商売がうまくいかなかても平気だよ。
フェニックス肉の冷凍チキンはお姉様に全部ぶんどられてしまったので、ここで出せるのはドラゴン肉のヤキトリ丼。
なんとドラゴン肉は代償も無しに召喚出来てしまったのです。今、元祖定食屋ではドラゴン肉とフェニックスのボンジリが産んだ巨大な卵の他人丼を村人に提供中です。
これで、やっと村人全員が不老不死という変態的な状態を脱出ですわー。
私達すっとんとんシスターズは食べてません。まだまだ永遠のすっとんとん14歳と6歳です。お姉様も血に飢えた生活に嫌気が差していたらしく食べていません。
ドラゴン肉が代償もなし召喚できた理由には諸説ありますのジャガー。タオルくんによるとドラゴン肉は、2割くらいが倉庫から消えていたそうです。私が召喚したのも、ちょうど2割くらい。
私が召喚魔法で過去から盗んだのでしょうね? 何やってんの? 私。
「こーにゃにゃちわーんわーん!」
「その独特の挨拶はニャア!? ニャアが二人居る!?」
おや? 猫耳のニャア大佐がやって来ましたよ? お供の猫頭魔獣、ホッケとアジも一緒です。天日干しすると美味しそうなですね。
「おいっすー。元気だったかにゃ? わたしは」
「うん。二ヶ月ぶりかな? そんな変わんないよ」
「そうかにゃ? こんな摩天楼をこさえてるから、二千年くらい経ってるかと思ったにゃ」
前会ったのがー? クリスマスのチキンフェアの時よね? つい先日バレンタインデーだったから、二ヶ月しか経ってないよ。
「私達の主観だと、1万2千年経っているのです。ノノがリリーなのですよ」
「なのです。お姉様と禁断の宇宙の旅だったのです」
「いちまんにせんねん!?」
数字がでかりゃいいと思ってないかなー? 時空のインフレがひどいわよ?
「ははっ、拙者など160億年生きて、1万回死んだでござるよー」
ニートンは1984年の日本で14歳を108回繰り返したり、どこかの王国でも人生まるごと108回繰り返した、とか言ってたけど。さすがに宇宙よりも年上ってことはー? まあ、うそでもほんとでもどっちでもいいかー。そんなに巨大な数がニートンにカウント出来るわけないでしょ。きっといつのものダボラだね。
「オヤジ! ミルクだ! みくるちゃんでもいいぞー」
「はい、ドラゴンのヤキトリ丼どぞー」
タオルくんは、猫耳の戯言をスルーして、ヤキトリ丼を供します。今日は、ヤキトリ丼しかありません。ワンオペで回せる料理しか、このシン居酒屋にはないのです。そりゃまあ、客も来ないわよね。
「みくるちゃーん。お姉さんのヤキトリ丼には生卵載せてねー」
「フェニックスの卵と、ニワトリの卵どっちがいい?」
「お姉さんは太く短く生きたいから、フェニックスの卵でー」
「巫女の私も、このヘンタイと同じものを」
シスターと巫女ちゃんが来ました。ということは、もう14時くらいですね? ちょっと昼寝が長過ぎたかしら? 別に、誰も困らないからいいよね?
「クラウドの設定を教えてくれる約束はどうなったでござるか?」
「そうだよー、巫女は今日からお休みを貰ったので、動画配信サーバー作るんだよ」
「あ、そうか? 忘れてましたわー」
そういえば、そんな話になってたわね。自分がシステムエンジニアだって事さえ忘れてたわ。この世界に来てから、魔法でぶいぶい無双してたからねー。私は、もっとハードボイルドに生きるつもりだったのにね。どうしてこうなったんだかねー? 楽しい方がいいに決まってるから、何も悔いも反省もしていないよ。
「んー? クラウドにゃー? むしり取った絹豆腐にゃー」
「隊長が、アジの干物みたいな事を言い出しましたよ」
「きのことたけのこで戦争なのです」
「え? ああ、そうか。ご飯食べたらスグ次の世界行っちゃう?」
「いえ、ここの温泉につかってますので、隊長はご自由に」
「なのです。重力に引かれた魂なのです」
相変わらず、猫耳のスケサンカクサンの言っている事は、言葉としては分かるけど、意味が分からないね? 猫耳ニャア大佐は分かっているようだけども。
猫耳ニャア大佐は、私と同じ魂のはずなのですジャガー。
猫耳魔獣のボディなので、脳もニンゲンよりも圧倒的に高性能なようだねー。ニートンと巫女ちゃんと、見物に来たタオルくん達に、分かりやすく説明しながらも、1時間で動画配信サーバーと音楽配信サーバ-を建ててしまいました。まあ、オープンソースを仮想マシンにインストールしただけですけどね?
基礎知識も無い人に分かりやすく説明するのは、とても難しいので私には無理デス。
「ほいじゃあー、まったねー。ひらけーごまー」
「じゃあねえ、もうひとりの隊長」
「遠く時の輪のあんドーナツでー」
猫耳ニャア大佐は1万2千年も生きてるから、転移魔法の習熟度が超絶上がって、呪文が雑ね。あれで、いいんだ? 去り際に同期していってくれたので、私もあの軽いノリで出来るのよね? 無限の大宇宙よりも、無限の異世界に行こうと思えば行けるのよね? さあ、どこへ行こうかしら?
「きっと事故るから転移魔法はやめておくでござるよ」
「まあ、そうだよね」
必要なアプリがあれば、誰でも同じ事が出来るのかと言えば、そうではないもんねー。私がやったら、きっとろくなことにならないわね。ぶひぃ。
またひとつ、上流の工程に上がった気がします。上昇しているのはニート気質だけのような気もしますけど。