3-14. 理想郷をデプロイ
好き勝手にやった反動があるかと思ったですのジャガー?
あんな事も、そんな事も起きませんでした。
この世界は、シン・ヴァルハラなのかも知れません。で、あるならば。もっと好き放題してやるしかありませんよ。
長年IT派遣でいろんな職場を渡り歩き、更にはいろんな異世界を転生して渡り歩き。何処に行っても、どんな組織に所属していても、我を抑えて我慢しても良い事など何もありませんでした。他人にいいように使われるだけなのです。
好き勝手にすると、何らかの反動はありますのジャガー。所詮は夢幻の如しデスよ、ニンゲン50億年デス!
「ほえ? なんでライブハウスにフェニ丼がー?」
定食屋のテナントを居抜きで用意してやったので入居しやがれ、とお姉様に伝えに来たところー。ライブハウスを実効支配されてました。しまったー、定食屋再建までライブハウスでお茶でも淹れてろ、なんて言うこと聞くババアじゃありませんでしたよ。ライブハウスは、お姉様の定食屋にされてました。
「私は。こっちに住まいも移したから。あんたら3人は好きにしなさい。おやつが欲しければ、ここに来るといいわ」
ぬう。まあ、いっか。私達、ガワは未成年ですけど、中身はババアなので、保護者が居なくてもいいですね。面倒事が起きた時は、しりあなシスターを盾にしましょう。他にも、空軍の大将と、世界征服協議会の理事長である魔王が、私の上司なので、いざという時は責任をとってもらいましょう。
なんだ、世はなべて事もなし、ですよ。
「お茶どぞー」
タオルくんは、ちゃっかりとライブハウスでメイドのアルバイトをやってます。フットワーク軽い上に、強者に取り入るのがうまいなあ。私は、敵を打ちのめすのは得意ですけど。根が陰のモノなので、タオルくんのように器用には立ち回れません。
「システムエンジニアという職業は修羅でござるなあ?」
「え? いや、私が修羅なんじゃないかな?」
「そんな修羅なエンジニアに、お仕事の依頼だよ」
「なあに? タオルくん。私はもうシステムエンジニアは隠居したいのじゃけども」
別に好きでシステムエンジニアやってたワケでもないのですよ。遊んで暮らせるなら、それでいいんだよ。
「ライブハウスに大型の業務用冷凍庫と冷蔵庫を設置してよ」
「それは、電気屋さんのお仕事ですけど」
「まあ、いいでござらんか。村長のお仕事ではありますぞ?」
「あー、そういえばそんな役職もあったっけね」
ふむー。この国の王様も私の上司じゃないですか。責任取らせ放題デスよ。私、無敵なのでは?
「設置はともかく、まずは電力の確保だよねえ」
「すっとんとんビルから配電すればいいよ」
「ほじゃーのー」
ほいじゃあ、おやつも頂いた事だし、たまには働きましょうかねー。
「まずは、すっとんとんビルに行くでござるか?」
「そじゃーね」
すっとんとんビルは村の北の外れです。日照権に配慮したとはいえ、ちょっと遠いですかね。EVカーでも作りましょうか。でかいミニ四駆みたいなもんでしょ?イケる気がします。ミニ四駆世代じゃないので、ちっとも知りませんけど。いや、EVならねこバスが既にありますね。幼女の私には運転出来ませんけど。
「うはっ!これは、やばいでござるよ!」
「うーーわあああーー」
ビル風が凄まじいデス。風速が毎秒40メートルはあるのではー? 時速なら88マイル! 未来にバックしちゃうー!
「飛行魔法で制御するでござるよ!」
ニートンは辛うじて耐えましたが、6歳幼女の私は、風に乗って飛んでしまいました。
「パンツが無ければ即死だった」
服がコントのように飛ばされて行きました。パンイチになったところを、アールくんに助けられました。
「やあ、あーるヤマモト五十六だよ」
「そんな名前だったっけ? ガワも全然違うんだけど」
アールくんは美少女メイド型のアンドロイドに換装されてます。前回会った時は、ロボ根性な感じだったのに。いいなー、ガワを替えられるの。
「変身魔法とか無いでござるか? 拙者も変身したいでござる」
「お? いいね? それらしい魔法をダウンロードしとくよ。まずは、電力問題を解決してからね」
「ん? 電力ならアンドロイドの僕にお任せ。僕は、ご飯も炊けるんだよ」
その前に、ビル風問題を解決する方が先だね。どうせ7階から上は使ってないし、カットするか。カットしてぽいっと。ゴミ箱の中身を素材に戻してー。金塊にでもしておこうか? レアメタルの方がいいかな? んー、容積の小さいのがいいね。圧縮魔法を使うと見た目と重さが違って、運ぶ時に腰がぐきってなるからね。最初から小さいヤツ、比重の大きい金がいいね。万が一の時に資産になりそうだし。
「金塊にすると、たったこんだけでござるか?」
「12.5キロの延べ棒が9個だね」
「112.5キロの金? 日本だと1億円くらいでござるか?」
「いや、令和初期だと10億円くらい」
「そんなに違うでござるか? んー、質量ではなく経済価値で還元されたナリ?」
「そうみたいだね。なんか交換手数料も高いような気がするよ」
「溶かして女神の像でも作るでござるか?」
「岐阜県の信長像みたいなの? んー、いらんなあ」
元は拾ってきた小惑星だからね。遊び半分で妙なもの作るのもいいかもね。
今は、それよりもー。電力ですよ。
「山の中腹にいい感じの滝があったから、水力発電所を建てておいたよ」
「アールくん、仕事はやっ!」
「すっとんとんビルの地下に変電所も置いたよ」
「じゃあライブハウスまで三相交流200ボルトあたりを、ちゃちゃっとおにゃしゃす」
「何に使うのかな?」
「業務用の冷蔵庫と冷凍庫とー、あとマーシャルのアンプを30台くらい動かしちゃう?」
「30台も要らんでござるが。マーシャル召喚出来るナリ?」
「あー、うん無理。グヤトーンかローランドなら、あとVOXの10ワットならイケる」
マーシャルなんて見た事もないわ。あんなの賃貸住宅に置けないでしょ。ライブハウスとかで演奏した経験もないし。
「まあ、なんかそんな程度で?」
「そんなに要らないよ。高効率インバーターの冷蔵庫と冷凍庫も用意するから。100Aもあれば余裕だよ」
「丸っとお任せでおにゃしゃす」
システムエンジニアも電力計算くらいは出来るんだけどね。出来るはずなんだけどね。サーバの消費電力とか熱効率の計算は、データセンターのサーバラックの搭載設計に必要だからね。だいたい過剰な電力を確保しがち。
ついに、村に電力インフラが整ってしまった。
「電気があるなら、データセンターも作ったらどうかな? 僕のデータセンターとリンクして冗長化に協力して欲しい」
うーん。休日に自宅でサーバ建てるエンジニアみたいなもんだねー。異世界まで来てサーバ構築ですか。