3-13. お家をデプロイ
「え? 定食屋が無いと、村人はどこでご飯食べるの?」
おっと、大問題ですよ? お姉様は3日以内に再建しろって言いましけど。我が家は、この村唯一の台所である定食屋を経営しているのです。村のピンチじゃないですか。私達もピンチ。ご飯どうするの?
晩ご飯を食べに来たシスターに言われるまで失念してました。
「ライブハウスのお団子食べとけば?」
「毎食、甘味というのもどうなのよ?」
「まあ、そうでござるなあ」
「召喚魔法使って建てられないんですか? 焼ける前の建物を召喚すれば良いのでは?」
「ソレだ!?」
巫女ちゃん、エクセレントですよ。すっとんとんシスターズは、焼き芋でお腹一杯だったので、そんな単純な事を思いつきませんでしたよ。
「問題は代償でござるな、結構な質量が必要ナリ。教会の聖堂でも捧げるでござるか」
「そうねー? 神社の拝殿も捧げたら?」
「あんた達、教会と神社に何か恨みでもあるの?」
「んー? まあ、前世でちょっと、神社にはね」
「拙者も前世でちょっと教会に」
「この世界の教会と神社は関係ないでしょ?」
タオルくんは神社に、ニートンは教会に何か前世の因縁があるんだね。シスターの言う通り、この世界の教会と神社は関係ないでしょ? いんや、あるかな? あるかもなー。神、というか知ってる女神のカゲがちらほら見えるんだよね、この世界。
「何があったか知らんけど、この村の大事なスケープゴートを焼くワケにはいきません」
「その捉え方もどうかと思うのだけど」
「大量の木材が理想でござるかな?」
「無機物なら何でもいいと思うんだけどぉー、あ! あれだ」
6億キロ先から回収した小惑星がありますよ。アレを利用しましょう。
静止衛星軌道上に置いてあるのでー、まずは惑星の重力に引かせてー。
じゅぼわー
「おお、キレイな流星でござるな」
「ばえだねー。ねえスマホかデジカメ召喚出来ないの?」
「あー、それもついでに出そうか? アルプス一個分の質量だから、お家だけだと余るし」
表面をこんがり焼いた所でー、今だ! 召喚しますよ! 天空のアレを捧げるので、お家を出して下さい!
「元のお家を召喚してもつまらんでござるな?」
「そうね。何かカッコイイいいのがいいよ」
「それもそだねー。カッコイイ、屋根裏部屋付きの定食屋かー。むーん?」
「テナント型のビルにすればいいですよ。私にも部屋貸してください」
「巫女ちゃん、それいいね!」
よーし! クリエイト・ザ・ネクストセンチュリー!! いでよー、マイハウス!!
にょきにょっきー
ビルと言えばね、IT派遣の職場ですよ。一日の大半を過ごした場所だからね。出せましたよ。
ショーウィンドウ越しに眺めたフェンダーのヴィンテージギターは出せなくても、見て触って暮らしたモノなら出せるのです。ところで、フェンダーのギターって高くなり過ぎじゃないですか? 昭和の頃はフェンダージャパンのテレキャスが5万円台だったのに。
「うわあ、代償がでか過ぎたでござるか?」
「地上40階、地下2階かな? 浜松町か飯田橋にありそうなビルだね」
「トイレの窓から富士山見えそうだね」
「神社と教会もこの中に移転しようかしら? 6階辺りのテラス・デッキがいい感じじゃないのー」
「あのー、40階まで階段で昇降するんですか?」
「それなー。地下2階に発電設備を設置するスペースと配線まではイメージ出来たんだけど」
巨大で近代的なビルディングも電気がなければタダの箱だねー。このままだと、6階のデッキまでが実用出来る限界かなー。
「発電機をイメージ出来なかったのね?」
「燃料不要で、いい感じに動く発電機ってないの?」
「地熱か、太陽光、風力もイケるかしらね?」
「ここは温泉地なので、地熱が良いのではござらんか?」
「そうね。太陽光は消火活動の邪魔になるからね」
「シンプルなのは太陽光じゃない? 火事になった時は、その時考えよ?」
「そうでござるな。魔法で消火できそうナリ」
太陽光発電パネルなら召喚出来るよ。電卓についてるアレじゃん? あれのデカいのを屋上に設置っと。
ぺったん
「見えないでござるが、設置出来たナリ?」
「うん、ほらエスカレーターもエレベータも動いてるよ」
ビルの中に入ると、エスカレーターもエレベータも動いているし、お掃除ロボが巡回しています。
「太陽光だけだと、全フロアは無理かな?」
「うん。6階までかな?」
「それだけでも使い切れないでしょうし、いいんじゃないの? ね、神社と教会移転していいよね?」
「いいよー。家賃はお布施代わりでタダにしてよ。会計がメンドイ」
「私達の家も6階のデッキにペントハウス建てましょうよ」
「いいでござるな」
というわけで、すっとんとんシスターズとジンジャーズの6人で、6階のデッキに来たよ。
デッキだけでも神社と教会建てて、すっとんとん家も建てて、さらに野球とかサッカーが出来るくらいの広さが余るね。余ったスペースは公園にしようか。
「ほいじゃあ、教会と神社をここに召喚するよー」
「おにゃしゃす」
今ある教会と神社を代償にしてー、ついでに定食屋の燃えカスも足して、すっとんとん家も建ててしまおう。
ぽっこん
周辺の竹林なんかの緑地も合わせて召喚。赤い鳥居をくぐると石畳の境内があり、御手水と拝殿があってー、何故かその脇には教会の聖堂があってー、全体を竹林に囲まれた空間が出現しました。
竹林の中を抜ける小路を歩いて行くと、竹林が途切れたところに、すっとんとん家です。敷地面積60平米くらいの2階建てのお家です。メインは屋根裏部屋。
家具も一通り揃っています。スマホとデジカメもあるよ。さらにリビングにはオーディオセットや、ホームシアタールームなんかもあるのです。CDやブレーレイ、書籍なども記憶にある限り召喚しました。防音の地下スタジオもあります。私の欲望を全部乗せなのです! むっふー! インチキ魔法の異世界最高です。
定食屋は2階に10軒程用意してあります。厨房やテーブルなどの設備は既にあるので、居抜きで開業出来ますよ。業務用の大型冷凍庫もあるので、定食屋の地下にある倉庫から冷凍チキンを運ばないとですね。
「後は、温泉もあれば完璧でござるな?」
「それは、いずれ掘ってみようか」
村の北の外れに建てたので日照権の問題もありません。
ああ、なんてこと。何のトラブルも無く、こんな理想郷を建ててしまえるなんて!
その時は、まさかあんな事が起きるなんて … 。




