3-10. 宇宙海賊すっとんとん
無限の海を我は進む。
「宇宙は無限じゃないよ」
「そうなん?」
「観測可能な範囲で200億光年くらい」
「へえ」
実質無限の大宇宙を我は進む。
以前、海の藻屑にしてやった弩級戦艦をサルベージして宇宙空間を航行可能な艦に魔改造してみました。
この宇宙戦艦ヤマトナデシコに乗り、6億キロの彼方にある小惑星を持って帰って、滅亡寸前の村を救うのです!
「ドクロの旗を掲げているので海賊船でござるな。滾るでござる! にんにん」
「ニャアは知っていたー。負けると分かっている戦いにもずる勝ちできるのだとー」
「そじゃーな」
システムエンジニアの敵は分からんちんの顧客だと思われがちですが。最大の敵はマヌケな味方です。どの業界でもそうだよね? マヌケな味方を駆逐したい時は、顧客に頼めば一撃デス。私は、本社の課長を泣かせました。顧客にクレームを入れてもらってパワハラする派遣。ひでえな私。
「おやじ! ミルクだ! みくるちゃんでもいいぞ!」
「お茶どぞー」
ワープ航法で一瞬で6億キロ進んじゃうので、お茶飲んでる暇も無いけどね。宇宙戦艦ヤマトナデシコは、あーるくんに貰った時空転位装置を搭載しているのでワープが可能なのです。
今回は魔法はなし! 魔法みたいな科学で勝負ですよ。時空転移装置はウラシマ効果キャンセラーの機能もあるので、光速を越えて移動しても、帰ったら1万2千年後だった、なんて事にはなりません。日帰りです。オカエリナトではありません。
甲板にはフェニックスを酸素タンク代わりに載せてます。宇宙空間でメラメラと燃えて映えー。写真とりてぇ。くう。酸素こそ魔法みたいな科学でどうにもなるのでは? いい加減ですね。
「よっし、着きましたね。どの小惑星がいいかな?」
「ちょうどいい大きさ、といっても結構難しいでござるな?」
「大きめのヤツ持って帰って削ればいいんじゃないの?」
「大気圏でじゅぼわーっと燃やせばいいかな?」
「そうだね。表面は宇宙放射線に被爆しているだろうし。2~3割は削る感じかな? 大吟醸に使うお米みたいな感じだね」
「いっそ、そのまま落としても愉快でござるな」
「いや、それは人型汎用決戦兵器とか出て来ちゃいそうだからダメでしょ」
「これ以上ヘンテコなのは出て来て欲しくないよね」
なんかフラグ立てた気もするけどね?
「ほいじゃあ、タオルくん。フェニックスに頼んでもらえる?」
「はいよー」
「そういえばフェニックスに名前はないでござるか?」
「んー? 考えてなかったな。ボンジリにしよう」
「それはまたウマソウでござるな」
「ボンジリー。よさげな小惑星をとってきてー」
「くえー」
ボンジリが、山っぽい形のいい感じのサイズの小惑星を選んでくれた。知能高いなぁフェニックス。
どうやって運ぼうか? ああ、私の魔法で圧縮すればいいのか。みょんみょんっと直径5メートルくらいに圧縮して甲板に載せます。
「ほいじゃあ、帰ろうかー」
ぷっすん
「あれ? 機関停止したでござるよ?」
「なんで? 電池切れた?」
「貰い物の、よく分からないものを使ってるからねー。修理は無理だと思うよ?」
「まあ、帰るだけなら、魔法で帰れるのじゃけどぉ」
「ウラシマ効果で、すっごい時間経っちゃうんじゃないの?」
「お姉様! もう会えない!」
「いや? あれは不死なのでまだ生きてるでしょ? 何万年経つのか分からんでござるが」
「まあ、私の魔法でも時を越えられるからね。時をかける幼女なので」
「何かリスクがあるでござるか?」
「いやあ、分からない。でも、今まで何とも無かったでしょ? 時間旅行はニートンも一緒だったけど」
「まあ、成長が止まったことくらいでござるが」
「あー、関係あるのかなあ? タオルくんは成長止まってもいい?」
「んー? まあ死ぬよりマシじゃないの?」
「そじゃねー」
最悪、死ぬよりひどい目に会う可能性もあるけどね。事象の地平面を越えちゃう的な? どうなるのか、さっぱり分かんないけど。
「ほいじゃー! いっくよー!」
じゅぼわー、ぐごぉぉおおおお、と飛行魔法で光速を越えて進みます。6億キロ進むのに、30分くらいかな? その30分の間に、地上は何万年が経過するのでしょうか? うっかり過去に進みそうな気もすりゅ … いや、これはフラグだね。きっと大丈夫、地上でも30分しか経過してないよ! 根拠は無い。エンジニアらしくないわー。
「地球か、何もかも懐かしい…」
「地球じゃないし、旅立ってから1時間くらいしか経ってないでござるが」
「そのセリフを言いたい気持ちはすごくよく分かる」
「ですな。にんにん」
見た感じは、1時間前と別に変化ないね?
「ほいじゃー、降りますかねー」
「はいよー」
「いいよー」
我々が地上で見たものは!?
まあ、フラグ建てちゃった通りですよ。フェニックスが巨大化する前日に帰って来ました。また過去改変ですわ。巨大フェニックスが、まだ小さいフェニックスをぱくっと食べちゃって、アルプスは消えず、しかし巨大フェニックスは残り、世はなべて事もなし。こんなんアリ?
「明日になると、我々が世界征服協議会の事務所から帰って来るんでござるか?」
「んー? 分からん」
「その前に、定食屋の中に、もう一人の私が居るはずなんだけど」
こわいけどー、定食屋に入ってみましょう。一体どうなっているのか? どうなるのか?
「おかえり。おやつあるわよ」
お姉様しか居ません。お姉様様はカチンコチンに凍っていたりもしてません。コールドスリーピングビューティーなお姉様は明日のお姉様なので、今ここには居ません。
で、タオルくんの同位体は?
「タオルくんは?」
「そこに居るじゃないの」
「いや、まあそうなんだけども」
「さっき、あんたらを迎えに行くって言って、店から出てって今そこに居るわね」
んー? 何がどうなってんの?
世界征服協議会の事務所に行ってみると、私達は帰った後でした。
再び家に帰ってみても、私達は私達しか居ません。まあ、いいか。世はなべて事もなしよ!




