3-9. リリース作業に失敗したので、今日が村の滅亡記念日デス
「うっわ、さっむぅ。てかっ、カサカサー」
私達のカラダは和風なので乾燥には弱いのデス。
「ぱっちぱちー! いったー! スマホ壊れないでござるか?」
静電気でフェニックスの羽毛がぱっちぱちのぞわぞわデス。近付くだけで、火花飛びそう。対地攻撃人工衛星のスマホ型コントローラーが静電気で誤動作したら、人類滅亡です。ふひっ。
スマホが壊れても、おっかない事になりそうだよね。管理者の不在を検知したノデ、これヨリ自律行動を開始しマス! デイジーデイジー! ジンルイホロブベシ。
「山が一個無くなっただけで、こんなに気候が変わるもの?」
「日本もアルプスが無ければ砂漠化するという説もあるでござるよ」
ほーん。気候が変わったのも厳しいけど。白銀の山脈が背景から無くなっちゃうと、ハイジの村感が無いわー。これじゃあペーターもヤギを飼えないわ。ペーターは私の妄想なので、実在はしないんだけどね。ヤギ役の私としては困るなあ。
「フェニックスを山の代わりに置いとけば?」
「くくっ、フェニックスは我の使い魔 … 、ほげな事は許されんのじゃ」
「あ、うん。ごめん」
私も、ドラゴンをドラ柱にしろと言われたら、認められぬわ。ほいじゃあ、どうしたもんですかねー?
「よし! この村を破棄しよう!」
「え? それでいいんですかね?ここは約束の地なのでは?」
「ちょっとちょっと、ニャア大佐ちゃん。それはシスター的には責任問題なのよ!」
「巫女は下っ端なので、どうでもいいですけど。中間管理職は大変ですね。ざまぁ」
歪んだ人間模様が、ちらっと垣間見えたけども。責任者なら、責任とればいいじゃん。私は知らん。
「ふむんー。拙者達ここで生まれ育ったわけでもござらんし?」
「それもそうだね? 定食屋の女将さんだけ拾って引っ越そうか?」
「あのババアも別にいらんのじゃけど」
「へえ? おもしろいこと言うわね? あんた。ババアって誰?」
「ババアとか形而上の概念であって、実在はしませんので。お気になさらず」
「あっ、そう。でも、ここの温泉は勿体ないわよ?」
あ、うーん。それな。黒い湯の源泉かけ流しに入り放題じゃもんなあ。
「さっき魔王が言ったようにだね。ここは約束の地なんだよ?」
「そうよ! なんか知らんけど、それよ! あとあれよー? ここは王様に下賜された土地でしょ? 破棄したら王家が敵に回るわよ?」
地球最強の生物である私が、王家如き気にするワケないでしょ? ただー? 約束の地とはー? なぁにそれ?
「僕が観測している限り、転生者が出現するのは、この村だけなんだよ。教会? 神社だっけ? に転生者採用枠があるのも、この村だけだよ」
「私も、同じ意見です。この村は特殊です。滅ぼすのは危険です」
「私は、なんも知らんよ? ただのマッドサイエンティストだからね」
マッドサイエンティストは来た意味なさそうだけど。アンドロイドのR9801号と魔王が、おもしろい事言い出したよ? よく分かんないけど、この村が何某かの特異点であるならば、温泉のためにも、なんとかしましょうかね?
「ほいじゃあ! 緊急パッチリリースだよ!」
「いえっさー! ナリー! にんにん」
「やったるでー」
「クエー!」
「ぴよ」
何の策も思い付いてないんだけど。すっとんとんシスターズとニワトリーズの士気を高めてしまいました。どうしよう。
「あ!? ちょっと姉さん!? その魔法瓶はお茶じゃありませんよ!?」
「は? なによー? カサカサで喉が乾いてんのよー。ナニコレー? 空っぽじゃなーい」
「あ … 私ワクチン持ってないのに、ってゆうかワクチンはまだ開発してない …」
その魔法瓶、有機生命体が漏れなく感染して死んじゃうヴァイラスが入ってるんじゃなかった?
「QTフィールド全開!!」
防御魔法全開で、えーとどこを囲めばー? ヴァイラス目に見えないじゃん。どこまで拡散したの?
「ヴァイラスは人の体温でしか活動しないよ。まだ、そのお姉さんしか感染してない」
「よっしゃー!!しねばばあー!!」
「ちょっと、なにすん…」
やったりましたわ! お姉様をマイナス60度で瞬間冷凍したりました! フェニックスがコールドスリープするくらいだから、解凍なしで丸揚げにすれば復活するハズ!
「ヤッターメーン! ズボっと解決ー!!」
「いや、村の気候変動の問題がまだですよ」
「あ、そうか」
ついテンションが上がっちゃったね。ここは、こうあれよ。システムエンジニアらしいアプローチで何とかしたいところよね? 思えば、ITの知識が異世界で役に立ったことあった? ただ、愚痴をぶち撒けてたいただけなのでは?
「アクシズよ。ニャア。アクシズを落とすのよ。空をおとすのよ」
「なるほど! 消えた山と同規模の小惑星を持って来て置けばいいナリ!」
「小惑星って土星と木星の間ら辺だっけ?」
いや? それは地球というか太陽系の話かー。ここにも似たようなもんあるのかしら? 月をちょっとくらいなら砕いてもいいかしら?
「土星とか木星は分からないけど。消えた山と同等の岩塊なら、6億キロくらい先の宇宙空間にゴロゴロあるんだよ」
「ろくおくきろー? そこまでは酸素が保たないなー」
遠いなあ。移動だけなら何とかなりそうだけども。酸素がなあ。
「酸素さえ供給出来れば、6億キロ往復可能なんですか?」
「あー、うん。まあ何年かかるのか分かんないけど。あーいや、それは時間超越魔法を使えばいいのかなー?」
「フェニックスは二酸化炭素を吸って酸素を吐きますよ。そうでもしないと燃え続けてられないですから」
「それはそれで危険なのでは?」
「ドラゴンも居るじゃないですか。フェニックスは自身の炎で自滅する事がありますが、群れにドラゴンが一羽居るだけで中和されるのです」
「ほーん? フェニックスの群れの中に一羽だけドラゴンが居たのは、その習性が原因ってこと?」
「因果が逆ですね。ドラゴンが居たからフェニックスが群れになる程殖えたのですよ」
そんな設定があったんだね!?
「よーし、ほいじゃあ、フェニックス貸してタオルくん」
「貸さないよ。私も一緒に行くよ」
「拙者も行くでござるよ! メートルどの!」
誰が黒帽子の魔女か。行くわよ、すっとんとん共。宇宙の彼方まで。