3-7. 奴は支店の中では最弱スペック
お姉様が逃げ出しちゃうような会なんですよ?
ろくなことになるわけないじゃないの。と思ってたんですのジャガー?
「くくっ、奴は四天王中では最強…。この幼女が身代わりなの? 魔王ちゃん」
「ヴァンパイヤ姉さんの身代わりと言いますか。現時点の地上最強ですよ。ニャア大佐は」
「えー… 、私もう辞めたいのだけどもぉ … 最弱じゃん私 …」
なんか思ってたんと違う。ここに居るの世界最強生物のトップ4じゃないの? もっとオラオラかと思っていたのだけど? 落ち着いているというか、おとなしいというか。最強感をまったく押し出して来ないね?
「ハイパワーなスポーツカーに乗っていると、煽られても気にならんでござるよ。こんなクソ雑魚その気になれば一瞬で抜きされるんだぞ、っていう余裕があるからでござろうなあ。実際には抜きませんけど。拙者は安全運転でござる。にんにん」
「四天王もそういう感じー? 私、ちっとも余裕ないんじゃけども」
ニートンは日本時代は引きこもりだったのではー? なんでスポーツカーをデス・アーリー・ドライブする感覚を知ってんの? そういえば、圧迫面接ごっこして経歴暴くの忘れてたわ。すっとんとんシスターズは、お互いの経歴を知っているようで知りません。トラウマと黒歴史だらけだからかな? 自分からはあまり語らないんだよね。
ニートンの言う通り、真の強者であれば、心に余裕があるのでしょうよ。
でも、私はハラハラドキドキで落ち着きません。今もポケットの中には、5秒で惑星を丸焦げに出来る兵器のコントローラーがあります。スマホ型なので、うっかり誤操作しちゃったら、上司にエロチャット送る程度の事故じゃ済まないんよ? 普段ならともかく、世界の最強トップ3に囲まれてると妙に意識しちゃう。挨拶代わりにポチっとしそう。
ストレスでお腹痛いわ。よし、ニートンを巻き込んでしまおう。
「あー、実はですねー。このニートンも四天王に入るべきなんですよ」
「はあ? 何を言い出すでござるか? 拙者も並の武闘家には負けませぬが。1万人以上相手するのは無理でござるよ?」
1万人までなら相手出来るんだ。十分すげーよ。でもね、そういう事じゃあないんだなあ。
「ここに、ポチっとなってするだけで5秒後に惑星が丸焦げになるマッシーンがあります」
「えっ? レーザー砲を搭載している人工衛星のコントローラーですね? それが何か?」
魔王が余計な想像してビビったのかビクってしたよ。魔王が案外小物なのがウケるんだけど。これが上司では困るなあ。あー、でもパワハラクズ野郎よりずっといいね?
「これのアドミン権限を持っているのは私だけではありません。このニートンもそうなのです」
「え? ちょっと!? そんなの貰った記憶ないでござるよ!?」
「ははっ。寝てる間に指紋を登録したんよ。タオルくんとお姉様のもね! 登録出来るのが4人までだから、私達すっとんとんシスターズこそがシン四天王なのデスよ! はっはっはー!」
あれー? これ悪の組織が言うセリフじゃなーい?また、やらかしたかしら?
「なるほど。そういうことなら4人全員が操作しないと発動しないように設定変更できませんか?」
「あ、それなー。それそれ、もちろんそうなっていまうよ?」
ソレですよ! 魔王様エクセレント! 上司として認めてあげる。ぽちぽち、すいーっと。よっし、これで誤操作しても発動せんわ。ははっ。はあ、良かったー。今までと違って転生して逃げる、が出来ないからねー。不老不死のエターナル幼女なので。
「なんで噛んだんでござるかー? ヴァンパイヤのおしおきが待っているでござるなー?これはー」
「あ? え? ちょっと? あのババア、どうせお前死なないんだろ? とか言ってクビ刎ねたりするから! やめて、告げ口は絶対らめぇ」
「ははっ! すっとんとんシスターズの皆さんを管理するには、ヴァンパイヤ姉さんにお願いすればいいようですね! あの人の好物の乙女をグロスで用意しましょうか」
さすが魔王。倫理観が1ビットもないわー。乙女を1グロスって。魔界の通販で買えるの? ってゆーか魔界ってあんのかな?
「あー … 、新入りがどんな奴かはよく分かったから、私達の自己紹介をしておこうか」
「あ、はい。おにゃしゃす! ぱいせん!」
「π線? どんな電波なのソレ? 僕はアンドロイドのR9801号だよ。R9821号っていう妹も居るけど、今日はお家でお留守番だよ。君が過去改変して破壊した都市に居たポンコツと違って、ちゃんと三原則ってやつ? あれより高度で矛盾のないものがROMに焼き付けてあるから。この惑星の敵に回ることは無いよ。よろしくね」
この惑星、と来たか。人類が惑星の害になると判断したら人類滅ぼしちゃんじゃないの? スイカネットだっけ? あれみたいに。デデンデンデン。まあ、同じ様な立場かな? 私も、もうニンゲンとは言えないもんなー。
「よろしくでござる。そちらの病弱そうな御仁も、四天王でござるか?」
「私は、何処にでも居る普通のマッドサイエンティストよ。四天王はコレよ」
マッドな時点で何処にでも居ないし、普通でもないんだけど。コレって? 魔法瓶?
「この魔法瓶の中に、あらゆる有機生命体にとって致死性のヴァイラスが入ってる」
意識たけーのかな? この病人。ウイルスでいいじゃんよ。もしくはチュウニなのか。私の周り罹患率高いなあ。まあ、なんでもいいけど、おっかないの居るなあ。
「ほー。超絶技巧治癒魔法とどっちが勝つでござるかな?」
「んー? 私の魔法は傷んだ細胞を修復するものだからねー、ウイルスを殺せるワケじゃないし?」
「だとすると痛み分けってとこかな? 勝負はつかないね」
「無効化出来る存在が居るだけで十分ですよ。お互いに牽制し合うのが、この協議会の目的なので」
相互破壊確証よりも穏やかでいいね。やるだけ無駄だよ、ってのは平和寄りだわ。
「そのヴァイラス、弱点は無いでござるか? 一定温度以下だと活動停止するとかー?」
「初対面なのにグイグイ来るね。いいね、そういうの嫌いじゃないよ。36度前後の温度でしか活動しないんだよ」
「ニンゲンの体温と一緒でござるな?」
「うん。人体の中で爆発的に増殖するよ。空気感染はしないけど、手を握っただけでも感染するね」
「人類を滅ぼすには十分でござるなー」
ほーん。アンドロイドの方はどんな能力があるん?
「僕は特に何も無いよ。演算能力も人並。すごいでしょ?」
確かにね。人を越えるAIは作れるけど、人並みを再現するのは難しいっていうからね。ランダムに間違えればいいってもんでもないらしいよ。人の揺らぎはロジカルじゃないんだね。
「Rさんも代理人ですからね。本当の四天王はRさんの製作者です」
「もう、この世に肉体は残ってないけどね。脳の電気信号をデータ化して仮想マシンになったんだけど、ずっとスリープ状態なんだよ」
それは、ある日突然目覚めて何かやらかすフラグですねー。