3-6. チキンの丸揚げで大炎上
定食屋のチキンフェアは中止になりました。
お姉様が解凍を省略して、冷凍のまま丸揚げにしようとしたところー。
飛んで行っちゃったのデスよ!?
ボウボウと燃え盛りながら、バッサバッサと羽ばたいて。失われたはハズのクビも生えちゃって。コレって、アレですわー。
「フェニックスでしょうね」
不死で炎耐性が高い生物、ってゆーか自身が燃えてた。
「クビを刎ねて丸焼きにしてマイナス60度で瞬間冷凍したんですよね?」
「ほうなのじゃ」
ファンタジー担当の魔王に相談しに来たんよ。答えは想定どおりでしたよ。
「コールドスリープ状態だったのでしょうね。じわじわゆっくり解凍すれば死ぬみたいですけど。耐性の高い高温に晒したのでは」
「生き返ってしもうたかあ」
まさにフェニックス、不死鳥デスわ。どえらいもん食わしてくれたのう、ニャア大佐はん。
「ニンゲンがフェ肉食べると、どうなるん?」
「不死になりますね。村人達が食べたのですよね? そいつらの心臓に杭を打ってみれば分かりますよ。クビを刎ねてもいいかも知れませんね」
ああ、なんてこと。村人達が、ドラ肉で若返り、フェ肉で不死になってしもうたわ。うちの村がエターナルー。えぇぇぇ、村長の私もエターナルだから、丁度いいかもね? いやいや、あいつら絶賛繁殖中だし!
「この惑星は、カワサキ村に占領されて、やがて自滅するでござるなー」
「いや、宇宙に進出するのでは? 不死ですからね。惑星からはみ出しても生きていけますよ。宇宙の膨張速度と勝負ですねー。ははっ。なんて事してくれたんですか? あなた、地球征服協議会の理事ですよね?」
あれじゃん、バインバインの栗まんじゅう状態じゃん。
地球征服協議会とは、地球を征服するための組織ではなく、誰かが地球征服するのを阻止するために存在しているからね。理事が組織の理念に真っ向から対抗しちゃダメじゃん。
「あのー、どうにかならんじゃろうか?」
「暗黒隕石魔法ブラックスターでござったか? ソレを落として村を滅ぼせばいいでござるよ」
「一瞬でチリにすれば、フェ肉接種者でも死ぬでしょうね。いいんじゃないですか?」
そんなんあり? サーバの余計なサービス停止するのが面倒になってミニマムインストールからやり直すようなものじゃん? ああ、そういう感じ? じゃあ、それでいっちゃう?
ちなみにニートニンニン、ニートンも一緒に来ていますよ。こいつ暇だなあ。私もだけどね。
「ええ? シスター的には困っちゃうんですけどぉ!? あ! でも、ブラックスターは食らってみたいわね。おしりに是非!」
しまったー。おいなりさんシスターも同行させてました。
遊びに行くんなら牛乳仕入れて来て頂戴って、お姉様かあちゃんが言うから、仕事ですけど? って建前のために連れてきたんだった。私の居る国は宗教国家なので、シスターは村の代官なんだよね。村の危機を解決するための相談に同行して当然なのです。こんなのでも。おしりにブラックスターねじ込むのはいいけどさ。むしろ、ねじ込みたいけどさ。
「よーし分かった。しり出せ」
「それは後にして下さい。村の危機なんですよ? 殲滅以外の対策を考えましょう」
巫女ちゃんの方は、まともだわー。ほんとに転生者なのー? あー、でも毒を食べたがってたし、意識がどっかフライハイしてんね、こいつも。
「村人達の不死能力を失くすかー、もしくは繁殖能力を止めるかー、でござろうか?」
倫理感は粉々のニートンだけど、知能は高いんだよね。王国の近衛騎士をやっていた前世があるとか。近衛騎士にならないと餓死するしか無かった、とか言ってた。それで近衛騎士予備校に入学して9年間必死で学んだのだと。こいつも非道な異世界転生してるわ。まじめに勉強したところが私と違うけどね。ぶひぃ。
「それは簡単よー? ドラゴン肉とフェニックスの卵で親子丼を作ればいいのよ! 他人丼というべきかしらね? それを食べれば不死能力は消えるわ!」
「なるほど。その手がありますね。よくご存知でしたね?」
「月刊シスターのバックナンバーで調べたわ」
「なんと、魔導書のような月刊誌ですね!? 私も定期購読したいのですけど」
「シスターか巫女になれば勝手に送られてくるわよ。購読料も勝手に給料から天引きされるし…高いんだよなぁ…おもしろいからいいけど…」
「魔王がシスターか巫女になるのは無理ですね。現在は、転生者枠しか空きがありませんので」
なんだよ。もっとブレストしようぜ? 何もう答え見つけてんだよ。無駄に会議して時給稼ごうぜ? なあ?
「残念ながら、その他人丼は無理でござる」
「そうですか? 復活したフェニックスは捕獲に成功したのですよね? フェニックスは単体生殖するので、一羽だけでも確実に産卵しますよ」
「問題はそっちではござらん。ドラ肉の在庫でござる」
「今朝タオルくんが、ドラ肉はみてたって言ってたっけ?」
みてた。マリア様が、じゃなくて。山口弁で「残量がエンプティです」の意味です。タオルくんも私と同じ山口県生まれなのです。上京して川崎市に住んでたとこまで同じ。ニンニンも同じ。すっとんとんシスターズは川崎という絆で結ばれた、トゲトゲロックガールズなのです。いぇい。熊本と北海道と神戸出身だったら完璧にパクリでしたね! いえ、オマージュですよ?
「え? そこで寝てるドラゴンでいいでしょ?」
え?ヒヨコのアマちゃんのこと?
「これドラゴンなん? フェニックスじゃのうて?」
「おしりの上辺りに逆鱗無いですかね?」
お? 魔王がおもしろいこと言い出しましたよ? 私には、ドラゴンもフェニックスもニワトリにしか見えませんけど?
「おや? 尻尾の付け根になんかあるでござるよ?」
「多分、触るとマズイやつだから。触っちゃダメだよ」
あれ? でも私もう触っちゃったかも。お風呂で丸洗いした時に。
「マズイというか。最初に逆鱗にタッチした生物を親として登録しますね」
なにそのスマホの指紋認証みたいなの。私、アマちゃんの親ですか? 6歳幼女なのに? 自分がまだ飼育されてる最中なのに?
「いや、ちょっと待て待て。我が子の肉を食べるなんて無理無理、やーめーてー」
私にも母性本能がありました! うっそーん。こぼしたパン屑の数くらいのニンゲンを殺してきた私なのに!
「治癒魔法で治せば、ちょっとくらいはいいでござろう?」
「えー? あーん、うおー? 村人滅ぼした方がいい」
「さすがに、そこまでオニーちゃんなのは、いかがなものでござろうか」
「あ! そういえばドラゴンは単体生殖するの?」
殖えるならね? ちょっとくらいはね? 食べちゃってもね? オイシイからね?
「いえ。そもそもドラゴンは繁殖しません。寿命が尽きたら次の代に引き継ぎます」
「なんとー? そんな落語家みたいなシステムだったの?」
「ええ?落語家ー? んー、いやーそんなもんですかね?」
そうかー。殖えないかー。唯一無二の存在なんだねー。天上天下唯我独尊、まさにドラゴンですわー。私達が食べたドラゴンも、どこかで次世代機が生まれてんのかしら? あれはドラゴンといっても、ワイバーンだから違うのかな?
「ほいでドラゴンの寿命は如何ほど?」
「惑星と同じくらい、だと言われてます。惑星に比べれば我も若輩者です故、そこまでのスケールになると伝聞でしか知りません」
「んー? だとするとヒヨコから成体になるのも時間かかるんじゃあ?」
アマちゃんからお肉を採取する前に村が自滅しかねないのでは?
「さあ、どうでしょうか? ドラゴンのヒヨコなんて見たこともないので、分かりませんね。食べるならヒヨコの状態でも丸焼きにすれば」
「ころしあげるぞ! われえ!」
あら、わたくしとしたことがはしたない。これが母の気持ちなのね? んー、我ながら低能ね。母親は子育てに脳のリソースの大半を割くため、感情面がアッパーになるって研究があるらしいけど。それね、きっと。いやー、もともとこんなんでしたわー、私。
「あ、はい。すみません。失言でした。えーっと、ドラゴンの母親ともなると、平の理事というわけにはいきませんね」
「へ? 世界征服協議会の話? あと、そんなにビビらんでも、私6歳幼女よ?」
「確実に世界を滅ぼせる人相手なんだからビビりますよ、そりゃ。ニャア大佐には、世界征服協議会の理事四天王に入っていただきます。ちょうどヴァンパイヤ姉さんの枠が空いてますので」
「なんじゃそれ?」
そうかー。ドラゴンは人類を滅ぼせる最終兵器だもんなあ。それの親となれば、そりゃもう地上最強の一角ですわー。そろそろ、協議会から追放されて駆逐されちゃうのでは?
「明日、四天王の会合がありますので。ここに来て下さい」
「あ、はい」
なんで面倒なイベントまで起きてんのー? 私、どうなっちゃうのー?