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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
17. テスト計画書 -私達ふつうの中二女児になります-

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17-9. 青春のCrash and Burn

 人はひとりでは生きられぬ。

 だからといって、友達100人必要だろうか?

 学校や職場で、求めるべきもの、成すべき事は、一体何だろうか?

 何度、人生を繰り返しても、自分と対峙するので精一杯だ。


「最近、学校はどうじゃ? 友達は出来た?」

 晩御飯の席で、長女を気取ったニャアが、スズメにそんな事を聞いた。

 その質問は、保護者であるスズメがする側じゃないかな?

「あー? 職場は友達作るとこじゃねーよ」

 今の回答で、だいたい察したのか、ニャアはそれ以上の追求はしない。

 そもそも、スズメの状況はだいたい把握しているのだ。

 教師と生徒という立場の違いこそあれ、同じ学校に通っているのだから。

 スズメが担当していると言い張る音楽の授業なんてありはしないし。

 軽音楽部は活動をしていない。

 スズメの要求が高過ぎるからなのか、部員が定着していないようだ。

 それで、スズメの人気が落ちたのかと云えば、むしろ逆。

 人は、理解出来ないものを、排除するか、もしくは崇拝するものだ。

 学校におけるスズメは後者だ。

 見た目がいい上に、男っぽさがある。女の園で人気が出るのは当然だろう。

 私にも、ファンクラブがあるらしい。ツラだけはいいから、私。

 それはミーナやアオイ、ニャアにまである。小さいというだけで可愛い扱いだからね。

 中身とのギャップも、いいらしいよ。

「そういうお前らは、どうなんだ? 友達出来た?(笑)」

 半笑いで、聞き返してくるスズメ。

「学校じゃって、友達を作る場所じゃろーか…?」

「戦場ってイメージだけどね」

 ニャアと私が、現役の学生だった頃、それは最初の人生での事だけど。

 団塊ジュニア世代である私達にとって、同級生は蹴落とすべき相手だった。

 受験にしても就職にしても、狭き門なのだ。就職する頃には、就職氷河期なんて言われてたし。

 それでも、学校に友達は居たけどね。子供にとって、学校はほぼ世界の全てだし。

 もちろん、今の学校で友達は居ません。いちいち聞くなそんな事。

「うーん。俺にとっては、学校は文字通り戦場だったなあ」

 騎士の養成学校だもんね。それも、異世界の。

「アオイは、どうなんじゃ? 最近、いまひとつ元気がないようじゃがー」

「ん-? あー、駄菓子屋の幼女は平和過ぎてネー」

 パン屋は激戦で大変だったけど、平和過ぎてもつまんないよね。

「だったら喜べ。コバトがアオイに校長を任せると言ってたぞ」

「まじデー!? おおぅ、喜ぶべきでショウかー?」

 コバトは王女だからね。学校の運営には、あまり関われないものね。

 学食の準備だって、進んでいない。

 アオイは元大統領だ。校長くらいやってのけるだろう。14歳女児だけどね。

 そのアオイは、今夜もそうだけど、毎晩家に来てご飯を食べてお風呂に入って、一緒にアニメを観る。

 ほぼ我が家の住人だけども、寝る時は、学校に帰る。

 やっぱり夜の学校は怖いそうだけど、学校に詰めておくのも用務員の役目なんだとか。14歳女児が居て、何の役に立つとも思えないけど。


「新校長のアオイだヨー。お前らに地獄を見せてヤろう! 蠟人形には、してやらナイ!」

 全校集会でモニターを通じて、宣言するアオイ。

「きゃーっ!」

 ウケてる。完全に学校のアイドル。

 幼女の駄菓子屋は閉店? 用務員室は、どうなるのだろうか? 私達の溜まり場が無くなってしまう。

「校内にフードコートを設置するヨ。出店するのはお前達ダ! 出店希望者は、説明会に来てネー。詳細は、学園の公式SNSを見てネー」

 教室がザワつく。この国の子供達は、自宅前でレモネードを売った経験なんかは無い。フリマアプリで、物を売った事くらいはあるだろうけど。出店というものが、イメージ出来ないのだろう。

「文化祭の出店みたいなものかな?」

「あー、そんな感じなら出来そう?」

「やってみるー?」

 へえ、意外と意欲的だわ。私も、説明会に参加してみようか?

「こいつらを食い物にするにはどうすればええのじゃー?」

「ニャア姉ちゃん、声に出しちゃダメだよ」

 魔力を失っても、本音がダダ漏れになる習性が消えていないニャアだった。

 魔女だった頃は、心の声が周囲にブロードキャストされてたんだよね。テレパシー的なやつで。

 

 フードコート説明会は、アオイからの説明よりは、生徒からの質疑応答の方が多かった。

 だって、何も決まっていなかったのだ。

 勢いだけで物事を進める、大陸出身のアオイらしい。

 とりあえず、やってみよう! って事になった。問題は都度対処! アジャイルだ!

 とりあえず、アオイのパン屋と駄菓子屋は有志が引き継ぐことになった。

 コバトが手配中だった、製麺所も使えるみたい。

 資金は学園が融資する。売上からも何割かは学園が徴収する。

「いいデスかー? 売上に応じて徴収しますヨ。利益からではありまセン」

 と、アオイが強調していたけど、多分みんなよく分かっていない。


 フードコート初日、大勢の生徒達が集まった。

 うどん屋が配布した無料クーポンを持った生徒達が行列を作っている。

「なんじゃ、こいつら邪魔くさいのう。炊き出しに並ぶホームレスか!」

 ニャアは、本音がダダ漏れだ。ほんとはもっとひどい事を言ってたけど、ここには書けない。

「ニャア姉ちゃん、こいつらの時給は一杯の素うどんなの?」

「底辺じゃのー」

「きっと並ぶのが趣味な特殊性癖なのよ。何でも金額に換算しないの」

「ふむー? 生産性皆無の行列はプライスレスなんじゃなー」

「これが青春の想い出として、一生涯に渡って脳に刻まれるんだね!」

 うどん屋の行列が崩れ始めた。そこまで言うのなら、こいつら何食べるんだろうか? と注目を集めている。

「ワシ、おはぎー!」

「おいどんもー! こしあんだといいなー」

「ははっ! つぶあんに決まっておる」

 ニャアとミーナは、おはぎの屋台に向かった。

 フードコートは、多目的ホールに並んだ、屋台の群れ。

 多目的ホールとは、バブル期に建った校舎にある、謎空間だ。

 ベビーブーム世代が通っていた頃は、何かとイベントに使われていたのだろう。

 最近は、雨天時に一部の運動部が使用する程度で、空いていた。

 水回りは貧弱だし、ガスは無し、電気はPA用途なのか容量があるので、そこそこ使える。

 そういう環境なので、屋台で調理しているものは少なめ。

 調理済みのものを販売しているのがほとんど。

 昼休みしか営業時間が無いので、手の込んだものは出来ないしね。

 準備と片付けも含めて、昼休みの中に納めないといけないから、なかなか厳しい。

 時間割を大学みたいにしようかしら? とコバトは言っていた。

「ニャア様は、おはぎか。好みがばあちゃんみたいだ」

「いや、おはぎこそ最新トレンドなのでは? 昭和レトロブームだし」

「私達も、おはぎにしよう! うどんなんか食ってる場合じゃねー!」

 ニャアの影響もあって、行列は解散していった。

 並んでる間に昼休み終わっちゃうしね。

 屋台はいくつかあるので、パンの争奪戦も起きていなかった。

 ニャアの影響力をマネタイズ出来ないかしら? などと私は思ったけど、やめておいた。

 青春の、クラッシュ・アンド・バーンに水を差してはいけない。


「学校が活気づいてきたのー。青春爆発って感じで、ワシ落ち着かん…」

 放課後、いつも通り集まった用務員室でニャアがこぼす。

 用務員室は、軽音楽部の部室となった。部員が定着しなかったので、視聴覚室を追い出されたのだ。

 廃部になりそうだったので、私達が入部した。

 用務員室は私達の溜まり場のままとなった。アオイだけが居ない。忙しいからね。

「軽音楽部は音楽性の違いから活動休止だ! 他の部活やろうぜ!」

 音楽性の違いも何も、最初から何の活動もしてないけどね。

 顧問のスズメがそう言うならば、解散だ。

「川崎はガールズバンドの聖地なので、ガールズバンド部にしまショウ!」

「何も変わってないわよ」

 いつの間にか、アオイが居た。あれ? 校長の仕事は?

「トップは、責任を取るのが仕事デス。せかせか働きまセン!」

 何でも自分でやっちゃうニャアが、うらやましそうにアオイを見つめている。

「だからってここで遊んでていいのか?」

「遊んでるのはお前デス! 明日からは、体育か何か受け持ってもらいマス!」

「あ、やっぱりそうなる? 仕事は自分で探せってコバトには言われたんだけど」

「ワタシも言われたヨ。あいつ、手抜きダヨナ」

 ブラックなのは、コバトだったかー。

 信頼して任せるのと、丸投げは違うんだけど。

 コバトは、自分で抱え込むものと、人に任せるもののバランスがまだ取れてないようだ。

 たまには、元子分をいじりに行こうか。

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