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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
1.RFI情報提供依頼書 ~システムエンジニアが剣と魔法の世界に転生して詰みましたわー~
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1-3. 皿洗いから学べること

 皿洗いから学べることもある。


 日本でシステムエンジニアをやっていた頃、入社初日の研修のひとつにそんな講義があったよ。

 講義というか、総務部長の説法みたいなの。そこでは私は契約社員でした。首都東京で正規雇用だぜやったー!と思ったら違った。IT奴隷商人に騙されてた。求人サイトには年収500万円以上って書いてたよね?月給14万円って何?川崎の家賃10万円なんですけど。


 客の多い時間帯はいつか、12月に沢山売れる料理は何か、月末の売上は、期末はどうなの?

 洗うお皿の枚数や種類だけでも、いろいろと知る事は出来るし、そこから学ぶ事もある。たかが皿洗いと侮ってはいけません、君たちは皿洗いから学べる人になりなさい…。


 それを聞いた時は「ほほーん。確かにー」って思ったけどさ。

 うちは皿洗いしかやらせねーから!それより上目指すんじゃねーぞ!って意味でした。

 そこでは2年間に及ぶバトルの末、月給29万円までのし上がったけどさ。2年やってこれですかー?はあー?てっぺんは遠いですわー、って気づいて辞めた。会社起こしたるわー、搾取されるより搾取する側じゃー、って。翌月リーマンショックに殺されました。


 で、今私は本当に皿洗いをしています。この世界にはシステムエンジニアのお仕事はないので。


 はあ。日本時代を思い出すのは、横浜の潮風を浴びたせいかしらね。


 ハマのジャズシンガー気取りの、いきりシスターに会いに行ってみるか。お店は休憩時間だからね。この世界のことについても聞きたいこともある。


「哀れな、迷える子豚の私めに、この世の真理をお教えください。ぶひぃ」


 また懺悔室に通されたわ。同郷を罪人扱いとは、許せぬ。ぐうう。でも、今の私はお腹いっぱいの聖女なので許してあげるわ。お姉様がケーキを焼いてくれたので。大天使お姉様に感謝しなさい、俗物シスターめ。


「そこは普通に迷える子羊でいいですよ。あなた、一体どんな世界を渡り歩いて来たんですか?」

「ぶひぃ。この世界に季節はありますか?」

「この世界、といいますか、この国はずっと秋か冬です。おまえには一生涯、春は来ません」

「あ、はい。そうですかぁ」


 なんか罵倒されている気がするわね? でも把握した。この世界の仕様のひとつを。ちょっと寒いけど、そこはお風呂とオフトンパワーで乗り切れる。暑いよりも余程いいじゃないの。よし、もはや勝利。


「では、お代は、いつも通り引き出しへ」


 お代ゆったよ、こいつ。ここは懺悔室で異世界QAに対応してくれるのだけど有料。教会へのお布施が必要なのです。


「どぞー」

「…足りませんよ。前にも言いましたよね? 大きい銀色のコインを寄越しなさない」


 かつあげじゃないの。この世界も宗教家は暴力を行使してきます。人類最大の暴力、お金の請求。ぐう、小さい茶色いのでは誤魔化せませんか。ぬうう、大きい銀色は、私の1日分のお給料。


 よし。もう俗物シスターは切ろう。この世界の仕様は、お姉様や店の常連に聞きましょう。みんな子供には甘いので、お金なんか払う必要もありません。


 といっても、この世界に来てからお金をまったく使っていない。お風呂はフリーだし、ご飯は住み込みでお勤めしている定食屋の賄い。定食屋の屋根裏部屋で、ぬくぬくオフトン。お金には困ってないんですんよね。この世界、まじ天国? 定食屋のご飯は、賄いじゃなくてもタダ。無料お試し期間ってことないわよね? やめられなくなってから、大金を課金されない?


「お前SEなんだろ? スマホ作ってくれよ」


 こういうあほはどこの世界にでもいます。お前日本人なんだろ? 日本酒作ってくれよ、って言ってるようなものよ? 日本酒を醸してから、そのセリフ言いなさいよ。


「あたし、造り酒屋の娘だったんだぜー」


 だから何? 日本酒を作ってたのは杜氏であって、あんたじゃないでしょ。こいつも日本からの転生者。教会で私の事を聞いてやって来た。こいつは使えるかも知れないわね。あほそうだけど。見た目だけは美少女だから、目の保養にはなる。


「あら、お友達できたのねー。ケーキのおかわりいる?」

「あざます」

「ありがとうございます」


 定食屋の娘さんである女神様は、私に沢山お菓子を食べさせようとする。


「おい、さっき俺がおはぎやったぜ」

「ケーキは別腹よ」


 定食屋のおっちゃんとお姉様が「俺が餌やったぜ」みたいな会話をしてる。私はお猫様? そんな上等なもんじゃないわね。この定食屋のおっちゃん、というおじいちゃんは、若い頃に奥さんと死別して子供が居ない。その不足を埋めたいのか、私みたいな孤児を甘やかしてくれる。お姉様も元は孤児だ。お姉様も、妹が欲しかったの、とか言って私を甘やかしてくる。

 お姉様は嫁に行くつもりがなく、ずっとここに居て跡を継ぐらしい。嫁に行く気が起きないように、何か手を打てないものかしら? お姉様が、私の乙女をアレしてナニしたいのなら、どんと来い。


 ただ、テレビどころかラジオもないこの世界では娯楽が少ない。書店だってない。

 どこの異世界でも無料で読める聖書は貴重な娯楽なのですが。それすらも見かけてません。

 教会に行けばあるかなー? シスターんは会いたくないけど、聖書は読みたいなあ。


 教会には本棚がありました。もちろんお布施という名のお代は必要だけども、閲覧は可能です。貸出はやっていない。ここみたいに、紙やインクが高価な世界は、よくある。書店なんて大都会にしかないし、私のお肉よりも高い。


「どーれどれー?聖書はどれかなー?お、これか? え? これラノベ?」


 なんとこの世界の聖書はラノベです。


「女神になった俺様は魔王を倒して、この世界の人類を滅ぼそうとしたけど、何故か悪魔認定されてしまって異世界に逃亡することになった」


 タイトル長っ!

 星をひとつでもいいからクリックしてねー。

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