3-2. クローンしたOSを同時に起動するとパーになりますよ?
「ドラゴンはどこカナー?」
ドラゴンを捕獲するために、月面に来てみたのですのジャガー。
居ませんねえ。有機物の欠片もありません。タンパク質の固まりであるドラゴンが石食べてるってことはないでしょ? 食べるものが無いのだから、そりゃ居ないよね。
私の暮らす惑星には月と似た衛星がひとつありましてー。名称不明なので、仮に月と呼んでおります。月まで宇宙空間を40万キロも飛んで、やって来たのです。そこにドラゴンが棲んでいると魔王に聞いたのですけども?
「もう滅んだんかねー?」
以前は、笹でも生えてたのかも知れませんが、食べ尽くして滅んじゃいましたかね? ジャイアントパンダみたいなドラゴンですね?
広大な宇宙空間に向かって独り言をいっておるのは、そこはかとなくコワイわー。帰るかー。あー40万キロは遠いなあ。加速をつけたら慣性で進んでいる間は寝ます。夜間作業でスクリプト仕掛けたら寝る感じデスね。寝ぼけて布団を蹴っ飛ばすノリでQTフィールドを解除しちゃったら即死なので、手作りの宇宙服と酸素ボンベを装備しています。この装備はダンボと呼んでいます。段ボール製なので。
私の住む惑星に向かってごー! ぐごごごー、ぐー。すやぁ。
「ニャア大佐、キミはどこに落ちたいタイ?」
惑星まで辿り着いたので、ひとりサイボーグ戦士ごっこをやりながら大気圏に突入ー、っと。6歳幼女のフレッシュな脳なのに、ダジャレ的な言い回しが垂れ流しになるのは、汚れた魂のせいですかね? あ、今のはですねー、落ち「たい」に、博多弁の語尾をですねー。ん? 説明は要らん? そうでしょうね。
「ただまー!帰ってきたデスバイ!バイバイじゃないバーイ」
「おかえりニャ」
「お?」
異世界の私が屋根裏部屋に居ますよ。中身は私なのに、ガワはラブリーエンジェルな猫耳魔獣。まじゅうさん、おまんじゅう食べる?
「なしたの?」
「異世界に亡命ニャー」
「ほっほう」
なんともワールドワイドな亡命デスね。楽器ケースはどこかしら?
「向こうで懲役が57億年を越えたニャー」
「そりゃもう、赤色巨星化した恒星に惑星が飲み込まれても釈放されませんねー」
懲役が神話レベルを突破。そりゃ亡命したくもなるでしょうよ。
「部下2頭も連れて来たニャ。面倒見ろニャ」
「それは、お姉様にお願いするとしてー。ご飯が食べたいなら働くのデスよ」
「わかったニャ」
これ以上、この定食屋にニートは増やせません。ニートなぞ私だけで十分です。
「じゃあ早速ですがー、働いてもらいますよ。ドラゴンを捕獲しに行きますよ。あ! そうだ。この前のコロコロコミック創刊号持って来た?」
「あー、あれニャー。中身は1979年6月号だったニャ」
「ほうー、それはそれで貴重ですねえ」
私が初めてドラえもんを読んだのが1979年のコロコロでした。何月号だったかは忘れましたが。多分、6月号。
「んー、もしかして自分で見たり触ったりしたこと無いものは召喚出来ないのかな?」
「それは、そうかもニャ? 私も、ガールズにゃんこクライの最終回の円盤を召喚出来なかったニャー」
「おや? カワサキの悪魔ミーナの最後をご存じない?」
「にゃんだ? おまえ知ってるのか? おまえは私じゃにゃいのか?」
どうやら、猫耳ニャア大佐と、幼女ニャア大佐の時空の旅は、どこかで分岐したようデスね?
私は、令和の日本に転生した時に、ガールズにゃんこクライは全話リアタイで見ましたが、猫耳大佐の方は、最終回を見ずに他所に転生したようですね。
なお、その令和の日本にも分岐した私が居ました。平成末期にコロッといったはずの私が令和でも生きていたのです。別の世界線の私というヤツですかね。その分岐した私の中に転生したのです。私という存在の可能性は、無限に存在するのです。深く考えると何だかコワイので考察はしません。
「よし。最終回の円盤を召喚しましょう! 私なら初回限定盤を召喚出来ますよ!」
「まーじニャー!? はよう! はようするニャー!」
むーんむーん。ちんからほいっ!
ぽすんっ
「お! 出たにゃー? でもDVDじゃにゃいかー。ブレーレイがいいにゃー」
「ははっ。どのみちテレビもプレイヤーもないので観れませんよ!」
「にゃんとー!? この悪魔め! お前はオニか! おにーちゃんなのニャー!」
令和の日本に居た時に、「お、安っ!」ってフリマで全巻セット買ったらDVDだったんですよ。よく見て買えっつーの、私。しかも、肝心な特典CDを抜いた後の残骸だし! ぶひぃ。
だから、召喚出来たのもDVDなんでしょう。特典CDを抜かれた初回限定版が虚しく転がっています。
1954年製テレキャスターだと思ったのも安物コピー製品でしたし。テレキャスらしいパキッとした重くて硬い音がちっとも鳴らないので、メイド忍者にステージで破壊して燃やす用にされちゃいました。
「えー、最後どうにゃったんにゃー? ミーナは地球デビュー成功したんニャ?」
「あー、最後はみんな死にましたよ」
「はあ? そういう話じゃにゃいじゃろニャー。はあ、こいつ私だからろくなこと言わないにゃ」
さあ、いつまでも一人漫談してないで、ドラゴン狩りに行きますよー。
「居ませんねー、ドラゴン」
「ほんとに巨大なニワトリなんているのニャ?」
「私の田舎には化石の標本があります。絵のようなお餅なのです」
「ひいばあちゃんが狩ったことあるって父ちゃんがゆってた。3年前のチーズ蒸しパンなのです」
相変わらず、部下の二頭の言っている慣用句が謎です。それはいいのですジャガー。ドラゴンが見つかりません。まさか、アレが最後の一羽だった?
ねこバスで超低空飛行しながら、もう惑星を半周は回ったでしょうか。へたにうろつくと壮大な迷子になってしまうので、このまま直進して一周してしまいましょう。
ねこバスにはカーナビがあるんですけどね? この惑星は、岩だらけの渓谷か砂漠が延々広がる地帯が大半なので、目印になるランドマークが無いんですよ。1万2千年前の人類は一体どんな滅び方をしたのやら。
うーん。
「異世界に行って狩る?」
「そうまでする価値はあるのかニャ? 異世界転位魔法は不安定だからニャ。死ぬよりはマシだにゃーって状況以外での使用はオススメしないニャ」
「あー、そういうことなら、本能寺で焼かれた時とか、そんくらいですかねー? 異世界転位魔法に賭けるのは」
「もしくは懲役57億年くらった時くらいニャ」
不安定ってどういう感じなんでしょうか。猫耳娘がたぬぽん娘になったりするの? まさか、ムシと混ざって怪人フンコロガシ女とかになるの? こわー。無理ですわー。
うーん。
そうだ! 普通のニワトリでもいいんじゃないですかね?
ヤキトリと言って売れば、食べるほうが勝手に勘違いしてくれるでしょ。うちの村では、これまで半年も、ヤキトリと言えばドラゴン肉だったので、今ではヤキトリと言えばドラゴン肉のことです。函館でヤキトリと言えばブタの串焼きじゃないですかー? あれと一緒デス。仙台の牛タンだって仙台牛じゃなくてUSA牛でしょ? 観光地の名物として売れりゃあソレでいいんですよ。
よし! それで行こう。じゃあ、ニワトリを探索するのデス!
「あそこに普通のニワトリが群れで居るニャ」
「よっし! 何羽かツガイで捕まえましょう!」
私たち、同期リンクが繋がったままなので、会話しなくてもコミュニケーション可能ですわー。やべー、迂闊に変な妄想出来ないじゃない。
「そういうのはフィルタリングでDenyしてるにゃ。私だって、おいなりさんを見られたくないにゃー」
そうでしたか。さすが、私です。
さあ、待ってろニワトリー。